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平成26年度全日本選手権大会速報

 これで平成26年度全日本選手権の速報を終わります。今大会の結果は、来月21日発売の卓球王国4月号に掲載。男女シングルスの熱戦の模様とその舞台裏、恒例の優勝者インタビューをはじめ、スタッフが会場を駆けずり回って集めた情報と感動を余すところなくお伝えします。ご期待ください!

★平成26年度全日本選手権大会・メダリスト一覧

●男子シングルス
優勝:水谷隼(beacon. LAB)

準優勝:神巧也(明治大)

3位:岸川聖也(ファースト)、丹羽孝希(明治大)

●女子シングルス

優勝:石川佳純(全農)

準優勝:森薗美咲(日立化成)

3位:前田美優(希望が丘高)、石垣優香(日本生命)

●男子ダブルス

優勝:森薗政崇/三部航平(明治大/青森山田高)

準優勝:岸川聖也/水谷隼(ファースト/beacon.LAB)

3位:張一博/高木和卓(東京アート)、吉村和弘/平野晃生(野田学園高)

●女子ダブルス

優勝:平野早矢香/石川佳純(ミキハウス/全農)

準優勝:阿部愛莉/森薗美月(四天王寺高)

3位:田代早紀/藤井優子(日本生命)、中村薫子/市川梓(日立化成)

●混合ダブルス

優勝:吉村真晴/石川佳純(愛知工業大/全農)

準優勝:松平賢二/若宮三紗子(協和発酵キリン/日本生命)

3位:田添健汰/前田美優(専修大/希望が丘高)、時吉佑一/山梨有理(ZEOS/ミズノ)

●ジュニア男子

優勝:及川瑞基(青森山田高)

準優勝:三部航平(青森山田高)

3位:伊丹雄飛(野田学園高)、青山昇太(野田学園高)

●ジュニア女子

優勝:伊藤美誠(スターツSC)

準優勝:早田ひな(石田卓球クラブ)

3位:平野美宇(JOCエリートアカデミー)、木村香純(ミキハウスJSC)
 「3冠を達成できて、本当にうれしいです。思った以上に苦しい戦いになりましたが、陳コーチや支えてくれた人たちに感謝したいです」と優勝会見で語った石川佳純。
 最も苦しかったのはやはり準決勝。「最終ゲーム8-8で強打されて、8-9になった時に『うわあ、キツいな』と思ったけど、負けることは最後まで考えなかった。ゲームカウント1ー3になった時も、ここからが勝負だと気持ちを切り替えることができた」(石川)。去年は世界団体準優勝、アジア競技大会・団体準優勝、ワールドツアー・グランドファイナル優勝など、好成績を連発した石川。「去年は大きな大会で良いプレーができて、その良いプレーを重ねることで、少しずつ自信がついたり、自分の中での引き出しができてきた」と語った。

 福原愛(ANA)の欠場により、誰もが優勝候補の筆頭と認める中での全日本。そして、21歳の石川が年上の選手と一度も当たらないほど、若手の成長は著しいものだった。「本当に『ここまで向かってこられるの?』と何度も思いました。それはプレッシャーだったけど、実力を認められているということだし、光栄です」(石川)。

 女子では1960(昭和35)年度大会の山泉(現姓:伊藤)和子さん以来となる、実に54大会ぶりの3冠(男子では1982・83年の齋藤清のみ)。昨年は混合ダブルス準優勝で2冠止まりだったが、今年は逃した大魚をがっちり釣り上げた。4月の世界選手権個人戦でも活躍が楽しみだ。
 表彰式後、優勝会見に臨んだ男子チャンピオン・水谷隼。「今日の準決勝・決勝はどちらも4-0で勝つことができて、自分自身、非常にビックリしています。ぼくのほうが思い切って攻めることができたので、相手はかなりのプレッシャーだったと思う」と今日の2試合を振り返った。
 
 普段の練習での意識として、「自分の攻めは遅いと言われ続けてきたので、松平健太選手や丹羽選手に負けないよう、普段の練習から攻めの速さを意識してきた。攻めの速さは中国選手の特長でもあるし、さらに彼らは速くて威力のあるボールが打てる。少しでもそこに近づいていきたい。」と語った水谷。以前はラリー戦では台から距離を取り、相手の攻撃をしのいで攻める「攻守一体」のプレーが持ち味だったが、今大会で見せたプレーはより攻撃的で、そして速かった。フォアハンドで1本強打した後、バックハンドでコースを突くのではなく、フォアの連続攻撃で得点を重ねた。決勝の神戦で見せた驚異的なカウンターは、攻撃への非常に高い意識がなければ打てないものだ。

 「去年は全日本で優勝できて、そこからとても良い一年になったので、今年も良い一年にしたい。リオデジャネイロ五輪では、過去2回の五輪で納得できる成績を残していないので、良い色のメダルが獲りたい」(水谷)。会見の最後、天皇杯を掲げて会心の笑顔を見せたチャンピオン。今大会もやはり、この男は強かった。
● 男子シングルス決勝
水谷隼(beacon. LAB) 8、9、7、8 神巧也(明治大)

水谷が神をストレートで下し、2年連続7回目の優勝!

1ゲーム目に8ー4、2ゲーム目に6ー4とリードを奪った神。時折見せる、高い打球点のバックドライブやチキータ、そしてフォア前の台上フォアドライブで会場をどよめかせた。
しかし、「自分のほうが格下だから、先に攻撃しようと思って、1・2ゲーム目はリードできたけど、徐々に水谷さんの緊張が取れて、そこを落としてしまったのが痛かった」と神。水谷は第1ゲームに4ー8から7点連取、第2ゲームも4ー6から連続得点を見せ、ゲームカウント2ー0とリード。ロビングからの逆襲、神のコースを見切った驚異のカウンタードライブを見せた。まさに卓球王、さすがの水谷の強さだった。

「普段から練習する機会も多いし、慣れているけど、やっぱり本番の水谷さんは全然違う。強かったです。ただ、2位で満足するかなと思ったけど、本気で優勝を狙って、悔しいという気持ちが今わいてきている。来年、社会人でも活躍できるように、練習に励みたい」(神)。
●女子シングルス決勝
石川佳純(全農) 7、-2、8、5、7 森薗美咲(日立化成)

石川佳純が森薗美咲を4-1で破り、2連覇、3回目の優勝を決めた。
女子ダブルス、混合ダブルス、そして女子シングルスの三冠となった石川。全日本選手権では昭和35年の山泉(伊藤)和子以来となる、女子での三冠王に輝いた。

1ゲーム目、フォア前と両サイドへのロングサービスを使い、森薗を4ー2、6ー4、9ー4と中盤で離した石川。森薗のレシーブが単調で、ストップから石川がツッツキで返球してきたボールもフォアで狙えない。森薗は試合後、「私が格下だから、もっと思い切っていけば良いのに、ちょっと力を出し切れなかった」と悔やんだ。

しかし、2ゲーム目に森薗は会心のプレー。0ー0から威力あるフォアドライブをバッククロスに連発すると、バック前への変化サービスからチャンスを作り、6ー0
10ー1と大量リード。11ー2でゲームを奪い返す。

石川はこれで気合いが入った。3ゲーム目の出足から声を出し、バック深くへのロングサービスを有効に使う。両者とも「ここが勝負」と見て、森薗に2本、石川に1本サービスミスが出たこのゲーム、11ー8で石川が奪う。

ここからは、硬さが取れてきた石川が回転量のあるドライブで攻勢。屈指の威力を誇る森薗のフォアハンドだが、石川のドライブを抑えきれない。石川が3ー1とリードした5ゲーム目、出足で3ー0とリードした石川は、7ー3、9ー6とリードを広げ、マッチポイント。11ー7で勝利した瞬間、嗚咽(おえつ)がもれた石川、涙の3冠王達成となった。
●男子シングルス準決勝
神巧也(明治大) 5、-4、-4、10、-5、7、8 丹羽孝希(明治大) 

神巧也、明治の後輩・丹羽孝希を破って決勝進出!

試合後に丹羽が「流れが変わってしまった一番の要因」と語ったように、勝負のポイントは4ゲーム目。丹羽は10ー8とゲームポイントを握り、ここを取れば3ー1で勝利に王手というところで、フォアストレートへの強打をオーバーミス。10ー10に追いつかれ、10ー12でこのゲームを落とした。
また、中盤ではフォア前のレシーブを長くツッツキで返し、丹羽の3球目強打を浴びていた神が、思い切ってフォア前もチキータで狙っていった。「普段は神さんはチキータがあまり得意じゃなくて、使ってこないのに、ガラッと変えてきた」(丹羽)。準決勝という大舞台で、開き直ったプレーを見せた。中陣から振り抜くバックドライブ、バックストレートへの電光石火のカウンタードライブと、まさに大当たりだった。

「神さんとは青森山田でも明治でも同部屋。今回は神さんは左の坪井(青森山田高)の対策として、明治でずっとぼくと練習していた。だからぼくのボールは取り慣れていた。あと、昨日の準々決勝で試合がなくて、休みになってしまって、体力的には問題はなかったけど、試合感覚がちょっとくるってしまったかもしれません」(丹羽)。
  • 後輩・丹羽を振り切り神巧也、決勝へ

  • 神、勝利の瞬間

  • 試合後に先輩・神とガッチリ握手する丹羽

 男子シングルスの準決勝、水谷対岸川の4ゲーム目。後のない岸川だが、9−9で水谷の打ったボールがオーバーミスに見えた。審判は岸川のポイントで10−9.しかし、水谷がアピールする前に岸川はエッジで入った、とアピールして、相手の得点にした。
 岸川のトップ選手としての矜持、フェアプレーを見た。
●男子シングルス準決勝
水谷隼(beacon.LAB) 3、6、3、9 岸川聖也(ファースト)

男子シングルス準決勝の第1試合は7度目の優勝を狙う水谷隼(beacon.LAB)が岸川聖也(ファースト)に完勝し、9年連続の決勝進出を決めた。
「実力的には向こうのほうが上なのに、自分がスタートダッシュをかけられず、0ー3までズルズルいってしまった」と試合後の岸川。1ゲーム目に5ー1、2ゲーム目に4ー0と水谷が完璧な出足を見せた。水谷はより攻撃力を増したバックハンドだけでなく、常に岸川より一本先に回り込み、フォアハンドで連続攻撃を仕掛けた。「フォア前の逆横回転系のサービスを出されて、レシーブがよくなかった。ラリーにならなかった。いろいろ戦術は考えていたけど、それを出す前に試合が終わってしまった」(岸川)。
  • 9年連続の決勝進出を決めた水谷

  • 水谷にストレートで敗戦の岸川

直近の国内大会では石垣優香(日本生命)に対して2連勝している森薗美咲(日立化成)。もともとカット打ちのうまい選手だ。
 1ゲーム目から森薗が完璧なカット打ちを見せる。石垣のカットに対してミスがない。石垣は2ゲーム目から攻撃を多く取り入れるなど、森薗を崩そうとするが、攻撃が入る時には得点できるが、それ以外での森薗のミスがなく、苦しい展開になっていく。
 結局、最後まで森薗に対して後手に回り、リードを奪えないままストレートで森薗が勝利。決勝は同級生対決、石川との対決となった。

●女子シングルス準決勝
森薗美咲(日立化成) 7、5、8、4 石垣優香(日本生命)
  • 完璧なカット打ちを見せた森薗

  • 「もう少し良い試合がしたかった」(石垣)

● 女子シングルス準決勝
石川佳純(全農) 9、-8、-7、-11、3、6、9  前田美優(希望が丘高)

女子シングルス準決勝の第1試合。石川と前田のサウスポー対決は石川が前田に1-3とリードされるも逆転で勝利。3冠まであと1勝と王手をかけた。

お互いに前陣を譲らない対決となり、石川は積極的に回り込みフォアで攻めて行く。しかし、前田のブロックは固く、回り込みを意識しすぎてオープニングのフォアを攻められてしまい、ゲームカウント1−3と追い詰められてしまう。

第5ゲームから石川が戦術を変更。
バック側の回り込みを捨てて、バック側はすべてバックドライブで返球。バック対バックで変化を付けていく石川。緩いボールと速いボールで前田のバックミドルを攻め立てた。
石川が台の中央にいることで、なおさら前田はフォアへ攻めにくくなる。結局はバック対バックの我慢比べに持ち込まざるを得なくなり、ゲームを取り返されて勝負は最終ゲームへ。

前田は石川のフォアを攻めるしかないと果敢な攻めを見せたが、徐々に石川がバック対バックへ引き込んでいく。9−9となり、石川がここで強気のロングサービスを2本。
前田はここでクロスにつないでしまい、石川の攻めを受けてしまった。
一本も打っていないストレートへ打てていれば変わっていたかもしれないが、非常に惜しかった前田。華麗な前陣速攻、そして表ソフトはプラボールでもまだまだいけることを証明した。
  • 逆転勝利で決勝進出を決めた石川

  • 前田は勝利まであと1歩