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2018世界卓球ハルムスタッド大会速報

●女子団体準々決勝
〈中国 3−0 オーストリア〉
○劉詩ウェン 1、3、4 ポルカノバ
○陳夢 8、8、6 A.ゾルヤ
○王曼昱 1、9、5 ミスチェク

統一コリア結成で大混乱するミックスゾーン。その頃、メインアリーナのフロアでは女子団体準々決勝のもうひと試合、中国対オーストリアが行われていた。
しかし、こちらの試合進行はミックスゾーンとは裏腹に、あまりに静かなものだった。

エース格のリュウ・ジャを下げたオーストリア。2番のA.ゾルヤは懸命にバックアンチのショートで陳夢のドライブを受け止め、好ゲームを展開したが、トップのポルカノバは見るからに戦意喪失。試合中のベンチでも笑顔がのぞいていた。王曼昱のパワードライブを浴び続けた3番の左腕ミスチェクは、あまりにも技術のレベルが違いすぎた。試合後、韓国と北朝鮮の統一チームよろしく、両チームの選手が仲良く記念撮影。中国は労せずして準決勝へ勝ち進んだ。
  • 3番で勝利した王曼昱。準決勝・決勝の出番はないか

  • オーストリアの4番手・ミスチェク

  • 中国女子のベンチに緊迫感は全くなかった

 10時に韓国と北朝鮮の選手たちがコートに入ってくる。しかし、様子がおかしい。その前から両チームの選手が笑顔で言葉を交わし、韓国の応援団が北朝鮮の選手に拍手を送る。
 そして場内アナウンスが流れる。「お互いが戦うことを望んでいない。試合をやらずに統一チームを作り、準決勝に進む。名前は『コリア』である」
 昨晩、南北朝鮮の代表者がITTF(国際卓球連盟)に申し出をして、認められたとのこと。

 ITTFのプレスリリースによれば、ITTFと南北朝鮮チームの代表者が話し合いをしてこの結論に至ったという。バイカート会長は「ITTFの執行委員に今朝の会議で伝えた時に、この歴史的な動きはスタンディングオベーションで受け入れられた」とコメントした。
 これは先週の南北朝鮮の首脳会談の『継続的な平和』をフォローした形だ。北朝鮮の卓球協会会長のチョ・ジュンチョル氏は「この結果はITTFとIOC(国際オリンピック委員会)の強いサポートの結果だ。南北チームの努力によってよりよい成果を出していきたい」と語っている。
 韓国卓球協会の副会長であり、IOCメンバーの柳承敏氏(04年五輪金メダリスト)は「これは両国にとって歴史的な決定であり、とてもうれしい。このことは卓球を通して両国の平和を導くことになるだろう」とコメントを発表した。

 卓球においての南北朝鮮の統一チームは1991年の世界選手権千葉大会以来。しかし、その時には大会前に統一チームを作り、大会で戦ったが、大会期間中にお互いが対戦する時に試合をせずにいきなり統一チームを作り、次の試合を戦うことは全く次元の違う決定である。両チームは戦わずしてメダルを獲得した。ことになる。

 これが平和的な快挙と言えるのか。
 大会に参加している選手や関係者からすれば、ただただ驚くばかりだ。世界最高峰の選手権が政治利用されたことにはならないのか。競技ルールが簡単に変更できるのか。という見方もあるのだ。下記は両国の関係者および日本卓球協会の星野一朗専務理事のコメント。

●チョ・ヒョンハ(北朝鮮)
「チームが一緒にとてもハッピーです。昨日の夜にこの話を聞きました。準決勝では一緒のチームで勝ちたい」

●キム・ソンイ(北朝鮮)
「信じられない気持ちです。統一されたチームで、さらに上のレベルに上がっていきたい」

●梁夏銀(韓国)
「『コリア』の話を聞いて、とても驚いた。とてもうれしい。昨日の夜に統一チームの話を聞いたけど、不確かだったので、今朝も練習した。次日本と対戦するかもしれない。しっかり練習して、備えたい」

●安宰亨女子監督(韓国)
「とても感動しています。統一チームのことは今朝、ITTFと韓国協会から言われました。昨日の夜まで、もちろん今日の試合のために準備をして、練習しています。もちろんこうなるとは予想はしていませんでした。このケースではお互いが、そして次の相手が同意してくれないとできない。我々は1991年の千葉大会で(統一チームを)経験しているのが役に立った」

●星野一朗・日本卓球協会専務理事
「韓国側と北朝鮮側とがお互いの申し出で、ITTFに統一チームにしたいという申し出があった。ITTFが発表した時に我々も知った。卓球は今までも大きな役割を果たしてきた。スポーツを通して世界平和を求めてきたので歓迎をしたい。日本はまだウクライナ戦があるのでそこに集中する。日本選手は別にまだ動揺していない。今後の国際大会でも統一チームはあり得る話でしょう」
  • ミックスゾーンで取材を受ける徐孝元(韓国/手前)とキム・ソンイ(北朝鮮)

朝10時開始の女子団体準々決勝。韓国対北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)の「南北対決」に注目が集まったが、コートに入った両チームの選手たちはコートで記念撮影を行った後、コートを去った。会場では「韓国と北朝鮮は試合を行わず、統一チームを結成して準決勝を戦う」ことがアナウンスされた。

ITTF(国際卓球連盟)からは、同様の内容について即座にプレスリリースが流され、今日の午後3時から会見を行う予定だ。日本女子チームは準々決勝でウクライナに勝利すると、準決勝でこの「コリア」チームと対戦することになる。
  • 試合前の握手の後、コートに整列した韓国と北朝鮮の選手たち

  • 観客席の応援団に手を振る両国の選手

 男子のグループリーグ終了後、決勝トーナメントのドローが5月2日夜(日本時間5月3日早朝)に行われ、日本は1回戦で香港と対戦することとなった。
 香港は黃鎮廷、何鈞傑、林兆恒というメンバーで、グループリーグではドイツ、スウェーデンに敗れ3位通過。勝った方がグループ3位という、昨日のグループリーグ最終戦・ルーマニアとの試合の5番で何鈞傑がスッチにフルゲームの末に勝利し、ギリギリのところで決勝トーナメント進出を決めている。
 男子の日本対香港戦は、5月3日13時〜(日本時間5月3日20時〜)。なお、同時刻には日本女子の準々決勝・ウクライナ戦も行われる。
 男子のグループリーグの全試合が終了。最終のリーグ戦結果は以下のとおり。
男子予選グループのルーマニア対香港戦がゲームカウント2−2の最終ゲームまでもつれ、予定時刻の22時にスタートしなかった男子決勝トーナメントのドロー。香港のラスト何鈞傑がゲームオール9点で勝利し、H.スッチに勝利したことで、ようやく決勝トーナメントのドローを行う環境が整った。

その結果、日本は決勝トーナメント1回戦で香港、準々決勝で韓国と当たる組み合わせ。そして第1シードのドイツのブロック、つまり中国と反対のブロックに入った。

黄鎮廷のいる香港に対しては、オーダーで3番に誰を起用するかが重要になる。勝ち上がって韓国と当たることになれば、2008年の男子団体準決勝以来の対戦。李尚洙・鄭栄植・張禹珍を揃える韓国は強い。戦力的にはほぼ互角、激戦必至だ。下写真は会場で行われたドローで表示された、男子決勝トーナメントの組み合わせ。
●女子決勝トーナメント1回戦
〈北朝鮮 3−0 ロシア〉
○キム・ソンイ 9、3、5 ノスコワ
○キム・ナムヘ 3、3、4 ミハイロワ
○チャ・ヒョシム 7、3、4 タイラコワ

〈オーストリア 3−2 ドイツ〉
○ポルカノバ 7、6、−3、−7、4 ヴィンター
 リュウ・ジャ −5、−8、−3 P.ゾルヤ○
 A.ゾルヤ −9、8、−8、7、−6 ミッテルハム○
○ポルカノバ −5、−9、9、3、6 P.ゾルヤ
○リュウ・ジャ 5、9、−6、−9、5 ヴィンター

女子決勝トーナメント1回戦の残り2試合は、北朝鮮とオーストリアが勝ち上がった。
北朝鮮は昨日のルーマニア戦で2敗を喫したキム・ソンイが、トップでノスコワに勝利。2番でパワフルなフォアドライブを連発し、ミハイロワをノックアウトしたキム・ナムヘは侮れない実力の持ち主だ。北朝鮮は準々決勝で韓国と激突する。

オーストリアとドイツは大激戦。3番ミッテルハムが時に粘り強く、時にパワフルにA.ゾルヤを攻略したドイツが2−1でリードし、3番P.ゾルヤもゲームカウント2−0として勝利は目前だったが、ここからまさかの逆転負け。ラストのヴィンターも、ゲームカウント0−2から2−2まで挽回したが、トップに続いてまたも接戦に敗れた。オーストリアのアメリーとドイツのペトリサ、ゾルヤ姉妹はくっきりと明暗を分けた。
  • キム・ナムヘは小柄ながら高い身体能力の持ち主

  • ドイツから2点を奪ったポルカノバ

  • A.ゾルヤに競り勝ったミッテルハム。フォアドライブのスピードはピカイチ

●女子決勝トーナメント1回戦
〈ウクライナ 3−2 シンガポール〉
 ビレンコ −7、−9、−2 馮天薇○
○ガポノワ 6、−5、9、−8、8 ユ・モンユ
○ペソツカ 9、7、−9、6 リン・イエ
 ガポノワ −4、−8、−3 馮天薇○
○ビレンコ 10、9、8 ユ・モンユ

〈香港 3−1 チャイニーズタイペイ〉
 蘇慧音 8、7、−6、−4、−7 鄭怡静○
○杜凱琹 11、8、14 劉昱昕
○李皓晴 8、4、8 陳思羽
○杜凱琹 6、12、9 鄭怡静

波乱! 日本女子の準々決勝の対戦相手を決める、女子決勝トーナメント1回戦で、ウクライナがシンガポールに3−2で勝利。日本女子は準々決勝で、予選グループ第1戦に続いてウクライナと相まみえることになった。

トップ馮天薇がカットのビレンコにストレートで勝った時点で、シンガポールの準々決勝進出は確実かと思われたこの一戦。しかし、2番ユ・モンユがガポノワのカットを打ち切れず、さらに3番でリン・イエがペソツカの堅い守りに敗れた。フォアの一発の強打はものすごいリン・イエだが、負けられないというプレッシャーゆえかプレーが単調になり、ペソツカのブロックにつかまった。
シンガポールは4番馮天薇がトップに続いてストレート勝ちしたが、ラストのユ・モンユはラケットをクルクル回すビレンコの反転カットに、勝負所でイージーなミスが出た。ベスト8入りに歓喜の輪ができたウクライナと、まさかの敗戦に沈むシンガポール。

予選リーグの日本戦では、ビレンコとペソツカが欠場していたウクライナ。準々決勝も油断は大敵だが、百戦錬磨の馮天薇を擁するシンガポールより戦いやすい相手であることは間違いない。日本女子は継続してカット対策を積んできており、石川と伊藤はすでにカット打ちの達人。早田も持ち前のパワーで、対カットには非常に強い。日本女子のメダル獲得の可能性は、限りなく高くなっている。

女子決勝トーナメント1回戦のもうひと試合は、香港がチャイニーズタイペイに勝利。バックハンドが鉄壁といえる安定感を誇る杜凱琹が、チームに2勝をもたらした。チャイニーズタイペイは重要な3番で、陳思羽が故障の影響でプレーに精細を欠き、意気消沈した。
  • シンガポール戦ラストでユ・モンユに完勝したビレンコ

  • ビレンコを中心に歓喜の輪ができた。奥はオーロラビジョンです

  • ユ・モンユ、カットを相手にまさかの2敗

  • 香港のエースに成長してきた杜凱琹

  • 髪をウェアに合わせてピンクにしてきた蘇慧音

日本男子対シンガポール戦の隣のコート、第1コートで北朝鮮を3−0で完封し、5戦全勝でグループBを1位通過した中国男子チーム。グループBは全試合が終了し、1位中国・2位ブラジル・3位ポルトガルが決勝トーナメントに進んだ。

中国男子の用兵術は明快だ。世界団体は3大会目の出場ながら、まだ試合経験の少ない樊振東は5試合すべてで2点起用して経験を積ませ、4番手の林高遠と5番手の王楚欽は格下相手に1試合ずつの起用。そして警戒すべきチームと対戦する時は、馬龍と樊振東の2点に3番許シンというベストオーダーを組む。

試合をつぶさに見ていると、際立つのは馬龍の強さ。17年世界選手権個人戦の男子シングルス決勝で樊振東が馬龍に肉薄し、「そろそろ世代交代か」という雰囲気もあったが、やはりチームのエースは馬龍だ。彼のフォアハンドはまぎれもなく世界一。ABS樹脂の採用で以前より硬くなったプラボールをものともしない。16年リオ五輪で金メダルを獲得し、年齢的にもゆるやかな下降線をたどるのかと思われたが、その強さにいまだ衰えは見られない。

一方、樊振東はポルトガル戦で左腕のジェラルドに対し、ゲームカウント1−2の8−10でマッチポイントを握られるなど、もうひとつプレーが冴えない。この試合は何とか逆転勝ちしたが、一度守勢に回るとフォアハンドの手数が減り、バタバタと連続失点する時がある。ボールの材質の変化による影響を、馬龍よりも大きく受けているように感じる。記者席では「痩せすぎか?」との声も……。

許シンのプレーは、相次ぐ故障で満身創痍だった昨年の全中国運動時に比べると、集合訓練でのトレーニングでキレが戻っている。ただ、かつての驚異的なフットワーク、後陣から這い上がるようなフォアドライブがもたらすインパクトはない。下がった時のプレーがより守備的になっている。

ベンチに入った劉国正監督は、今のところ座っているだけで大丈夫、という試合ばかり。しかし、準決勝・決勝で、前半で失点するような展開があれば……果たしてどうなるか?
  • 馬龍は強い、まだまだ強い

  • 決定打を狙い打つ、普段のプレーの冴えが見られない樊振東

  • もう28歳の許シン

  • どことなく心細げな劉国正監督

●男子予選グループ・第5戦
〈日本 3−0 シンガポール〉
○張本 5、4、6 ガオ・ニン
○水谷 8、4、5 ポー・シャオフォン
○大島 3、5、3 ベー・クンティン

日本男子、シンガポール戦は全く相手を寄せつけず、ストレートで勝利!
圧巻のプレーを見せたのはトップの張本。「バック対バックで球が合っていたので、いけそうだなと感じました」という本人のコメントのとおり、バックハンドの攻撃力が低く、守備主体のガオ・ニンとの試合は「フリーバッティング」のような内容だった。バック対バックで速さで圧倒し、回り込んでのパワードライブと打球タイミングを少しはずしたバックハンドで、ガオ・ニンのフォアを次々に抜いていった。

2番水谷は、「これまで戦った中ではかなりレベルが下の相手で、1ゲーム目に明らかなレベルの差を感じたので、明日に向けてサービスやレシーブなどを試しながら試合ができたのは良かった。コンディションは日に日に良くなっています」と試合後にコメント。2番、3番に出場したシンガポールのふたりは、地元育ちの若手。両ハンドで攻めてくるオーソドックスなドライブ型で、日本勢にとって全くやりづらさはなかった。

3番大島は、これが今大会初出場。サービスを効かせてチャンスを作り、強烈なフォアドライブを連発した。「1ゲーム目の入りは少し緊張しましたが、サービスが効いたので緊張はほぐれてきた。ここまで4戦ベンチで応援していて、みんな良いプレーをしてくれていたし、ぼくも応援で少しでもチームに貢献できたと思うので、この舞台で試合ができたことはすごくうれしく思います」(大島)。出場した3選手の調子を上げるには、シンガポールは最適の相手だったか。日本男子にとって運命のドローは、今夜22時に行われる。
  • 張本、ラブオールからしっかり声を出し、ガオ・ニンを圧倒

  • かつては鉄壁を誇ったガオ・ニンも、卓球の進化についていけない

  • 大島、今大会の初陣はしっかり勝利

  • 2番で水谷と対戦したポー・シャオフォン