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中国リポート

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 昨年8月の北京五輪で現役を引退し、その後の進路が注目されていた卓球界の女王・王楠が、中国共産主義青年団の中央委員会で任務に当たることが明らかになった。中国のマスコミでも「卓球界から政界への転身か」と大きく報道されている。

 王楠が所属することになった中国共産主義青年団(略称:共青団)は、中国共産党の下部に位置する若手エリート団員の育成組織。中央委員会はその中から選出されるエリート中のエリートだ。団員資格は14~28歳で、現在30歳の王楠は少々年齢オーバーだが、競技スポーツの選手ということで優遇されたのだろう。3月23日に北京市の前門東大街にある中央委員会の事務所を訪れた王楠は、初めての任務として香港からの訪問団の受付を担当した。

 実業界への進出が有力視されていた王楠だが、これまでに政治的な活動も多く行ってきた。21歳で中国共産党に入党し、5年に1度開かれる共産党大会には遼寧省代表として2大会連続で参加している。昨年5月に胡錦濤国家主席が訪日し、福原愛選手と早稲田大で卓球を楽しんだ際も、隣に王楠の姿があったことは記憶に新しい。北京五輪を控えた大事な時期だっただけに意外な感じがしたが、あれもひとつの布石だったのかもしれない。
 王楠が政治家として、実務の要職に着くことは考えにくいが、卓球界の女王としての抜群の知名度を活かし、さまざまな活動に参加していくことになりそうだ。

Photo:王楠、充電を終えて活動開始
Photo:北京五輪女子団体決勝を観戦に訪れた胡錦濤国家主席(右)とIOCのロゲ会長(左)。胡錦濤主席の観戦が急きょ決定したため、選手たちが緊張することを予想して、百戦錬磨の王楠のトップ起用が決められた
 3月12~13日、中国女子チームは集合訓練を行っている広東省中山市で、「直通横浜」に続く代表決定戦を行った。
 まず「直通横浜」で4~7位となり、すでに代表権を獲得している劉詩ウェン、李暁霞、郭炎、姚彦が2つのシングルスの出場枠を懸けてリーグ戦を行った。劉詩ウェン、李暁霞、郭炎の3人が2勝1敗で並び、勝率計算の結果、李暁霞が1位、劉詩ウェンが2位でシングルスの出場枠を獲得した。李暁霞はようやくの出場枠獲得といったところか。また劉詩ウェンは広東省チームの女子選手として、1973年サラエボ大会の林美群以来、36年ぶりのシングルス出場となった。これで丁寧、張怡寧、郭躍、李暁霞、劉詩ウェンの5人が自力でシングルスへの切符を手にした。残る2人のシングルス代表は首脳陣によって決定される。
 また、「直通横浜」で8~14位だった7選手によるリーグ戦の結果、彭陸洋、李暁丹、常晨晨の3名が横浜大会への出場権を獲得している。

 一方、中国男子チームも3月21日に集合訓練中の浙江省寧波市で「一騎打ち」の代表決定戦を開催。「直通横浜」で10位の李平、11位の雷振華、12位の邱貽可が、7位の王励勤、8位の馬琳、9位の馬龍の3人から対戦相手を選び、勝者が出場権を獲得するという何とも恐ろしいシステム。まず10位の李平に最初の選択権が与えられ、李平は馬琳を選んだ。馬琳を選んだ理由は「同じ呉敬平コーチの門下でよく知っているし、少しでもチャンスがあると思った」から。続いて雷振華が馬龍、最後に残った邱貽可が王励勤を選択した。その結果は以下のとおり。

馬琳 -5、10、8、7、7 李平
馬龍 9、7、7、5 雷振華
邱貽可 -8、-8、10、10、10、4 王励勤

 馬琳と馬龍は順当な勝利を収めたが、なんと現世界チャンピオンの王励勤が、邱貽可に対し2ゲームをリードしたところから逆転負けを喫した。馬琳、馬龍、そして邱貽可が出場権獲得となった。
 「大力(王励勤)のプレーは普段の部内リーグと比べてもそう悪くはなかった。敗因は競り合った場面で戦局に対応できなかったこと。3ゲーム続けて12-10で落としているからね」(劉国梁監督)。推薦出場の道が残されているため、王励勤が横浜大会を欠場することは考えられないが、自力で出場権を獲得できなかったことは心理面に影響を与えそうだ。北京五輪で悲願のタイトルを獲得した馬琳に対し、ザグレブ大会の優勝後に始まったイバラの道を、王励勤はまだ抜けられないでいる。

 中国リポート、大変ご無沙汰をして失礼致しました。お伝えしたい情報はまだまだたくさんあるのですが…。これからも時間の許す限りリポートを続けますので、宜しくお願い致します。

Photo上:シングルスの出場権を獲得した李暁霞。準優勝だったザグレブ大会の雪辱を期す
Photo下:苦しい苦しい世界王者、王励勤
☆直通横浜女子-総合成績
1.  丁寧(1S3位/2S1位)
2.  張怡寧(1S2位/2S2位)
3.  郭躍(1S1位/2S5位)
4.  劉詩ウェン(1S4位/2S3位)
5.  李暁霞(1S7位/2S4位)
6.  郭炎(1S9位/2S6位)
7.  姚彦(1S6位/2S9位)
8.  李暁丹(1S5位/2S12位)
9.  彭陸洋(1S11位/2S8位)
10.  曹臻(1S14位/2S7位)
11.  常晨晨(1S10位/2S11位)
12.  木子(1S8位/2S15位)
13.  范瑛(1S13位/2S10位)
14.  饒静文(1S12位/2S13位)
15.  文佳(1S15位/2S14位)
16.  王シュアン(1S16位/2S16位)

☆出場枠&シングルス出場権獲得(3位以上)=丁寧、張怡寧、郭躍
☆出場枠獲得(7位以上&戦型推薦)=劉詩ウェン、李暁霞、郭炎、姚彦、曹臻

 上記が直通横浜・女子の総合成績。第2ステージ1位の丁寧が見事に総合1位となり、初のシングルス出場権を獲得。残るシングルスの出場権は、順当に張怡寧と郭躍が手中にした。4~7位の劉詩ウェン、李暁霞、郭炎、姚彦は、男子と同じく種目は未定ながら出場枠を獲得。8位の李暁丹と9位の彭陸洋を飛ばして、ペン攻撃型・カット主戦型・シェーク異質型・ツブ高攻守型の4つの戦型の中で最上位だった曹臻が7番目の出場枠を得た。

 丁寧がいち早くシングルスの出場権を獲得したのは予想外だったが、代表に決定した7名の顔ぶれは順当なものと言えそうだ。残るシングルスの出場権、及び出場枠は、3月13~14日に国家女子チームが集合訓練を行っている広東省中山市で代表決定戦が行われている。すでに出場枠を獲得している4~7位の劉詩ウェン、李暁霞、郭炎、姚彦が総当たりのリーグ戦を行い、2名がシングルスの出場権を獲得。8~14位の李暁丹、彭陸洋、常晨晨、木子、范瑛、饒静文もリーグ戦を行い、3名が代表として追加された。こちらの結果も引き続きお伝えします!

Photo:シングルス6大会連続出場となる女王・張怡寧。2大会ぶりの優勝なるか
★直通横浜男子-総合成績 ※1S・2S=第1・2ステージ
1.  王皓(1S1位/2S1位)
2.  張超(1S5位/2S2位)
3.  許シン(1S2位/2S7位)
4.  張継科(1S9位/2S4位)
5.  ハオ帥(1S8位/2S3位)
6.  陳杞(1S7位/2S5位)
7.  王励勤(1S4位/2S9位)
8.  馬琳(2S8位※1Sは棄権)
9.  馬龍(1S3位/2S11位)
10.  李平(1S6位/2S12位)
11.  雷振華(1S13位/2S6位)
12.  邱貽可(1S11位/2S10位)
13.  徐輝(1S10位/2S15位)
14.  ジャク一鳴(1S12位/2S13位)
15.  方博(1S15位/2S14位)
16.  侯英超(1S14位/2S16位)

★出場枠&シングルス出場権獲得(3位以上)=王皓、張超、許シン
★出場枠獲得(6位以上/種目は未定)=張継科、ハオ帥、陳杞

 直通横浜・男子の総合成績は上記のとおり。第1・2ステージともに1位の王皓は文句なし、さらに総合2位の張超と3位の許シンがシングルスの出場権を獲得。4~6位の張継科、ハオ帥、陳杞が、種目は未定ながら出場枠を獲得した。これで中国の男子代表6名がまず確定した。
 第1ステージを棄権した馬琳、現世界チャンピオンの王励勤、そして世界ランキング2位の馬龍は、この「直通横浜」で出場枠を獲得できず。8人の強化指定選手(馬琳・王皓・王励勤・馬龍・陳杞・ハオ帥・張継科・許シン)に入っていない張超が出場枠を獲得したことで、世界ランク10位以内の大物選手がシングルスの出場権を逃す可能性も出てきた。
 中国男子チームでは3月21日、「直通横浜」の7~12位の選手6名で代表決定戦が行われている。リポートが遅くなり、大変申し訳ありません。代表決定戦の結果もなるべく早くお伝えします!

Photo:ぶっちぎりの1位通過を決めた王皓。悲願の世界タイトルへ好発進
 今回行われた「直通横浜」第2ステージでは、エキサイトしすぎる選手たちの試合態度が問題として取り上げられている。テレビ中継も行われる「直通横浜」は、特に若手選手にとって代表入りのチャンスが懸かった重要な試合。それだけに感情的になるケースも多いようで、フェンスや卓球台を蹴飛ばす、過剰なガッツポーズや発言を繰り返す、審判の判定に従おうとしない、など問題を起こす選手が続出している。

 まず、3月3日(選考会第2日目)に行われた徐輝とハオ帥の試合。10-10とジュースになったところで、審判がアウトと判定したボールに対し、徐輝がエッジだと猛抗議。結局このポイントはエッジだと認められたが、徐輝はその後凡ミスを連発してストレート負け。女子チームでは、郭炎や木子が苛立ちからフェンスを蹴飛ばす場面が見られ、施之皓監督が審判長に対し、悪質な行為にはイエローカードではなく、即刻レッドカードを提示するよう求めている。

 そして、今回のような問題では必ず顔を出すのが、陳杞と邱貽可のふたり。第2ステージで7勝8敗と伸び悩んだ邱貽可は、試合中に「畜生!」「全然入らねえ!」と自分への苛立ちが爆発。日本でも、オープン大会などに行くとひとりはいるタイプだが…。そして陳杞に至っては、その邱貽可との対戦でゲームをリードされ、卓球台に怒りのキック一撃。「陳杞が台を蹴飛ばした後、邱貽可は驚いて周囲を見渡し、ぼくがいないかどうか探していたね。『蹴飛ばしたのは彼ですよ、僕じゃないですよ』きっとそう言いたかったんだろう(笑)」(劉国梁監督/出典:杭州日報)。
 陳杞には06年アジアカップ決勝で敗れたあと、ラケットをベンチに投げつけ、椅子を蹴飛ばすなどして重い処罰を受けた前科がある。この時には劉国梁監督や担当コーチの肖戦まで連帯責任で罰金を払っている。劉国梁監督ももちろんそのことは忘れていないようで、「これがもし国際試合だったら、陳杞は国家のイメージを背負うことになる。まさか過去の失敗を忘れたなんてことはないだろう!」とチクリ。

 ただ強いだけでは一流選手とは言えないし、周囲の尊敬を集めることもできない。07年世界ジュニア選手権で、宋時超が勝利後に台の上に乗った一件も忘れるわけにはいかないだろう。これから中国チームの主力になるのは、「一人っ子政策」で大事に育てられ、甘やかされた選手たち。今回のような問題は、今後も国家チームの首脳陣を悩ませることになりそうだ。

Photo上:07年女子ワールドカップでは、ファッションモデルを務めた邱貽可クン。この時はご機嫌ですが…
Photo下:陳杞クンはもう一度反省が必要です
★[直通横浜]女子第2ステージ・最終順位 3/2~5

1.  丁寧(11勝4敗)
2.  張怡寧(11勝4敗)
3.  劉詩ウェン(11勝4敗)
4.  李暁霞(11勝4敗)
5.  郭躍(10勝5敗)
6.  郭炎(10勝5敗)
7.  曹臻(9勝6敗)
8.  彭陸洋(8勝7敗)
9.  姚彦(7勝8敗)
10.  范瑛(7勝8敗)
11.  常晨晨(7勝8敗)
12.  李暁丹(5勝10敗)
13.  饒静文(5勝10敗)
14.  文佳(4勝11敗)
15.  木子(3勝12敗)
16.  王シュアン(1勝14敗)

★主な対戦記録
[2日]丁寧  3-1 范瑛   郭躍  3-1 郭炎   劉詩ウェン 3-1 李暁霞
    彭陸洋 3-1 李暁霞  郭躍  3-0 張怡寧  李暁霞 3-2 丁寧
[3日]曹臻  3-1 張怡寧  郭炎  3-2 彭陸洋  劉詩ウェン 3-1 郭躍
    丁寧  3-1 郭炎   彭陸洋 3-1 郭躍   張怡寧 3-0 劉詩ウェン
[4日]張怡寧 3-0 李暁霞  郭躍  3-2 丁寧   常晨晨 3-2 郭炎
    曹臻  3-2 丁寧   范瑛  3-1 郭躍   丁寧  3-1 劉詩ウェン
[5日]李暁霞 3-1 郭炎   木子  3-1 郭躍   丁寧  3-2 張怡寧
    郭炎  3-2 張怡寧  李暁霞 3-2 曹臻   李暁霞 3-1 郭躍

 [直通横浜]の女子第2ステージ、こちらは第1ステージに続いて5ゲームズマッチ・11点制での開催。結果は上記のとおりとなった。上位4人が11勝4敗で並ぶ混戦になったが、第1ステージで3位と健闘した丁寧が、国際大会での活躍を裏付けるように見事首位の座を獲得した。
 今や中国卓球界の「時の人」になりつつある丁寧。北京市チームの先輩である張怡寧は「私が18、9歳の時には、もう世界選手権で上位に進出していたし、丁寧の好成績はちっとも意外じゃない。これまでベテランの選手たちが多くいて、実力を発揮する場がなかっただけ」とその実力を認めるコメント。2年前のザグレブ大会では雷振華との混合ダブルスのみのエントリーで、経験を積むだけの出場だった丁寧だが、横浜大会ではシングルスでのデビューが決まった。
 ボーイッシュなルックスから、どこのマスコミが言い出したものか、中国では「スポーツ界の十大中性美女」のひとりに数えられている丁寧。他に陸上やバレーボール、スピードスケートなどから選手が選ばれる中、卓球界から丁寧と郭躍のふたりが選出されている。納得の人選だが、「女子選手の男子化」では、卓球が他競技に先んじているということか…。

 2位以下の選手では、張怡寧が第1ステージに続いて2位に入り、余裕を持ってシングルスの出場権を獲得。故障を抱え、成績が伸び悩んだ馬琳とは違い、こちらの五輪金メダリストの仕上がりは順調だ。3位の劉詩ウェンは世界ランキングもいつの間にか12位まで上昇、横浜大会でシングルスへの出場が決まれば有力なダークホースのひとり。そして4位の李暁霞は、第1ステージでの低迷を払拭するとまではいかないものの、最低限の成績を首脳陣に示すことができた。3月4日には試合がすべて終わった後で、李隼コーチとともに居残りの特訓を行い、最終日に郭炎や郭躍を破っている。今回の「直通横浜」では、シングルスの出場権を獲得できるのは上位3名のみ。李暁霞は残る出場権を賭けて、部内での代表決定戦に臨むことになる。

Photo上:これから女性ファンが増えそうな丁寧
Photo下:及第点は出した李暁霞。中国女子の主軸になるためには、ここからが正念場
★[直通横浜]男子第2ステージ・最終順位
1.  王皓(12勝3敗)
2.  張超(12勝3敗)
3.  ハオ帥(12勝3敗)
4.  張継科(11勝4敗)
5.  陳杞(10勝5敗)
6.  雷振華(9勝6敗)
7.  許シン(8勝7敗)
8.  馬琳(8勝7敗)
9.  王励勤(8勝7敗)
10.  邱貽可(7勝8敗)
11.  馬龍(6勝9敗)
12.  李平(6勝9敗)
13.  ジャク一鳴(5勝10敗)
14.  方博(4勝11敗)
15.  徐輝(2勝13敗)
16.  侯英超(0勝15敗)

◆主な対戦カード
[2日]ハオ帥 3-2 馬琳   張超  3-1 王励勤  張継科 3-2 許シン
    ハオ帥 3-2 馬龍   方博  3-2 張継科  許シン 3-1 陳杞
[3日]邱貽可 3-2 王皓   李平  3-1 馬琳   馬龍  3-0 王励勤
    許シン 3-0 馬琳   馬琳  3-1 王励勤  方博  3-2 馬琳
[4日]陳杞  3-1 王皓   張継科 3-1 馬琳   ハオ帥 3-0 王励勤
    陳杞  3-0 馬龍   張継科 3-2 馬龍   王皓  3-2 張超
[5日]王皓  3-0 王励勤   張超 3-2 馬龍   陳杞  3-0 馬琳
    許シン 3-2 王励勤   馬琳 3-1 馬龍   馬琳  3-2 王皓

 大変遅くなりました、16名の選手たちによって争われた、[直通横浜]男子第2ステージの結果は上記のとおり。この第2ステージは「四分制」で行われた第1ステージとは異なり、通常の11点制・5ゲームズマッチで行われている。

 第2ステージの最大のダークホースとなったのは右シェークドライブ型の張超(チャン・チャオ)。3日目の初戦で張継科に敗れるまで8連勝で突っ走り、馬琳、馬龍、王励勤らを連破して12勝3敗の好成績を挙げた。担当コーチである秦志ジェンは、教え子の奮闘について「以前の彼(張超)にとって、卓球は単なる“仕事”に過ぎず、卓球への思い入れもそう強いものではなかった。しかし、国家チームに入ってすでに10年。年齢が増してくるにつれて、彼の中にはひとつの切迫感が生まれてきたようだ」と述べている。「非常に攻撃力がありながら、精神的にムラがあり、特に相手のエッジやネットから崩れる場面が多かったが、今ではそういうこともなくなった(秦志ジェン)」。
 広東省出身の張超は、1983年8月5日生まれの25歳。2000年8月に国家2軍チームに入り、すぐに1軍チームに昇格。両親はともに陸上選手で、張超自身も身体能力に恵まれていることが、ノングルー時代に大きなアドバンテージになっているようだ。将来を嘱望された「六小龍(王皓・陳杞・ハオ帥・邱貽可・張超・馬龍)」のラストランナーが、ついに頭角を現してきたか。

 一方、首脳陣の期待を裏切ったのが6勝9敗で11位に沈んだ馬龍。折り返しの2日目終了時点では5勝3敗とまずまずの成績だったが、残り2日間はなんと1勝6敗。「優秀な選手といえども敗れるのは仕方ないが、連敗することは許されない。今回のように7連敗もするようでは、彼が抱える問題は決してひとつではない。心理面の問題や経験不足というだけでなく、多くの面で問題を抱えているはずだ」とは劉国梁監督の弁。「世界で最も勢いのある男」に、思わぬ落とし穴が待っていた。代表を外される可能性は低いが、直通横浜で自力で出場権を獲得できなかったことは、本大会でも彼の心理に微妙な影響を与えそうだ。

 それにしても、第1・2ステージでともに1位だった王皓のプレーは安定感抜群。2006年の「直通ブレーメン」では第1S3位・第2S2位、07年の「直通ザグレブ」では第1S4位・第2S4位と、確実に上位に名を連ねてくる。同じ北京五輪代表の馬琳と王励勤が出場権獲得を逃す中、文句なしの成績で横浜大会のシングルス出場権を獲得した。

Photo上:ついにブレークか、張超
Photo下:馬龍、世界の頂きへの道はまだまだ険しい
 3月4~6日、韓国・ソウルの泰陵選手村(国家トレーニングセンター)で、世界選手権個人戦横浜大会の代表選考会が開催された。
 シングルスには男女6名が出場できる韓国。09年1月の世界ランキングで「世界ランキングのトップ10以内」という選考基準を満たしていた柳承敏と金キョン娥が、すでにシングルスの出場権を獲得。残る5つの出場権のうち、4名までがこの国内選考会で決定し、最後の1名は協会の推薦によって決定する。男女11名の総当たりで行われた選考リーグの結果は以下のとおり。

★男子選考リーグ
1.  金廷勲(9勝1敗)※出場権獲得
2.  呉尚垠(8勝2敗)※出場権獲得
3.  李鎮権(8勝2敗)※出場権獲得
4.  朱世赫(8勝2敗)※出場権獲得
5.  徐賢徳(6勝4敗)
6.  鄭栄植(5勝5敗)
7.  李廷佑(4勝6敗)
8.  趙志燻(3勝7敗)
9.  鄭尚亘(3勝7敗)
10.  趙彦来(1勝9敗)
11.  尹在栄(3敗7棄権)

 なんと世界ランキング50位の伏兵、金延勲が9勝1敗の単独トップでシングルスの出場権を獲得した。見るからにゴツい右シェークドライブ型で、昨年の世界団体戦広州大会の韓国代表。広州大会では予選リーグで0勝2敗という成績に終わったが、その後のプロツアーで唐鵬(香港)、オフチャロフ(ドイツ)らを破っている。この選考会でも朱世赫に3-4で敗れた一敗のみと見事な成績で、横浜大会でも思わぬダークホースになる可能性もある。ノングルー時代の申し子か。
 世界ランキング9位の朱世赫、12位の呉尚垠は無事出場権を獲得したが、広州大会でレギュラー起用された李廷佑は7位に沈み、北京五輪代表の尹在栄は途中から選考会を棄権。最後に残されたシングルスの協会推薦枠「1」は、選考会5位で高校生のホープ・徐賢徳と、実績十分の李廷佑の間で争われることになるだろう。

★女子選考リーグ
1.  李恩姫(8勝2敗)※出場権獲得
2.  朴美英(8勝2敗)※出場権獲得
3.  石賀ジュン(7勝3敗)※出場権獲得
4.  唐イェ序(6勝4敗)※出場権獲得
5.  文玄晶(6勝4敗)
6.  朴永淑(5勝5敗)
7.  徐孝元(5勝5敗)
8.  金貞弦(5勝5敗)
9.  李玄(3勝7敗)
10.  梁賀恩(2勝8敗)
11.  崔文英(6敗4棄権)
※文玄晶と李玄の「玄」は正しくは火+玄

 トップ通過は07年ザグレブ大会ベスト16の李恩姫。以下、朴美英と帰化選手の石賀ジュンが続き、中耳炎の手術で1カ月近く練習を休んでいた唐イェ序がからくも4位に滑り込んだ。ここ一番での強さはさすがだ。広州大会代表で、予選リーグの日本戦で福原愛(ANA)と激戦を繰り広げた文玄晶は5位に終わったが、6位以下の選手との実績の差からいって、協会推薦枠の獲得はかなり濃厚だ。
 女子は選考会の結果としては、ほぼ順当なものと言えるだろう。もし文玄晶が6人目のシングルス代表になれば、カット主戦型の金キョン娥と朴美英、シェーク異質速攻型の唐イェ序と石賀ジュン、ペン表速攻の李恩姫にペンドライブ型の文玄晶と、「世界で最もバラエティに富んだ代表チーム」となる。

 ちなみに、代表選考会が行われた泰陵(テルン)選手村で初めての女性村長として、05年3月から現職にあるのが、1970年代に韓国女子の中心選手として活躍した李エリサ。73年サラエボ大会で韓国女子が団体初優勝を飾った時の団体メンバーだ。長い景気の低迷に苦しむ韓国、李村長も予算の不足に悩まされているという報道をしばしば目にするが、北京五輪で13個の金メダルを獲得した韓国スポーツ界の「虎の穴」を支えるべく、韓国卓球界の女傑は日々奮闘している。

Photo上:代表選考会1位通過の金延勲。横浜大会でどのようなプレーを見せてくれるか(写真提供:ITTF)
Photo下:本格的なペン表速攻型として、貴重な存在である李恩姫
 2月26~27日に行われた「2009年全国卓球工作会議」。国家女子チームの施之皓監督は「2012年ロンドン五輪に向け、女子選手の技術の男性化をより合理的に推進する。そしてノングルー時代に完全に適応する」と述べた。
 これからロンドン五輪まで、再び4年間の激しい競争が繰り広げられる国家女子チーム。チームのエースである張怡寧に対して、施之皓監督は「北京五輪で奮闘して2枚の金メダルを獲得し、チームで最も信頼の置ける選手であり、チームの貴重な財産」と賞賛。しかし、30歳を間近にして迎えるロンドン五輪への見通しについては、「彼女にとっても大きな試練となるだろうし、多くの不確定要素が存在する」と述べ、決して楽観視できないとしている。唯一五輪で2連覇を達成しているトウ亜萍は、96年アトランタ五輪で金メダルを獲得し、翌97年世界選手権マンチェスター大会で優勝して現役を引退したが、果たして張怡寧はロンドン五輪までプレーを続けるのだろうか。

 また、8人の重点強化選手がいる国家男子チームに対し、国家女子チームは6人の重点強化選手を指定。張怡寧・郭躍・李暁霞・劉詩ウェン・丁寧・姚彦というメンバーだ。余程のことがない限り、ロンドン五輪の代表3人はこの6人の中から選ばれるだろう。国家チーム内では、張怡寧と李暁霞は李隼コーチ、郭躍・劉詩ウェン・姚彦は孔令輝コーチ、丁寧は任国強コーチの指導を受けており、丁寧以外の選手は同門で五輪代表の座を争うことになる。
 この6人の中に、現在世界ランキング4位の郭炎の名前がないのにお気づきの方もいるかもしれない。世界選手権・横浜大会には出場する可能性が高い郭炎だが、少なくとも4年後のロンドン五輪まで強化の対象になる選手ではないと判断されたのだろう。ガッツあふれるプレーと豪快な両ハンドドライブで活躍した郭炎だが、残念ながら、遠からず国家チームを引退することになりそうだ。彭陸洋・曹臻・常晨晨といった中堅選手たちも、チャンスをつかみ損ねたまま、より若い選手たちに追い抜かれようとしている。他国ならば充分にエースが務まる顔ぶれなのだが…。

 また、北京五輪以降の大会で、国家女子チームの選手たちはカット主戦型の選手に相次いで苦杯をなめている。昨年12月のITTFプロツアー・グランドファイナルで李暁霞が金キョン娥(韓国)に敗れ、クウェートオープン優勝の丁寧もスロベニアオープンでチホミロワ(ロシア)、デンマークオープンで金キョン娥、カタールオープンで朴美英(韓国)に敗れるなど、カット主戦型を苦手としている。現在、国家女子チームには范瑛しかカット主戦型がいないため、国家女子チームは急遽、オーストリアのクラブチーム・フロシュベルグでリュウ・ジャ、リ・チャンビンとともにプレーしている朱虹をチームに呼び戻すようだ。朱虹はかつて国家女子チームで金キョン娥の仮想選手も務めていたカット主戦型。3月9日から広東省中山市でスタートした35日間の集合訓練では、カット対策も重要な課題のひとつになるだろう。

Photo上:常勝軍団の手綱を執る施之皓監督
Photo下:身体能力・技術力ともに世界トップクラスの郭炎。まだひと花咲かせてほしい選手だ
 少し前のニュースになるが、2月26日、江蘇省太倉市にある五つ星ホテル「錦江国際大酒店」で、中国卓球協会の「2009年全国卓球工作会議」が行われた。蔡振華の中国卓球協会会長への就任をお伝えした、幹部交替会議に先立って開催されたものだ。中国卓球協会の幹部や国家チームのコーチ陣、各省の体育局の卓球担当、北京・上海・遼寧などの有力な省チームのコーチなどが一同に会する盛大なものとなった。

 「全国卓球工作会議」で最も注目を集めたのは、国家男女チームの監督による北京五輪の報告、そして2012年ロンドン五輪までの抱負と計画の発表だ。
 まず、国家男子チームの劉国梁監督は「実際には、現在の状況は皆さんが思っているほど楽観的なものではない。我々のチームの実力は、まだ天下無敵というような強さには至っていない」といきなりシビアな発言。「ノングルー時代を迎えて、技術力も弱められた部分があるし、攻撃の威力も低下していて、まだ完全にノングルーに対応したとは言えない」。実際に、カットマンに無類の強さを誇っていた王励勤がクウェートオープンで朱世赫(韓国)に敗れ、カタールオープンでは陳杞や馬琳がボル(ドイツ)に敗れている。北京五輪での歴史的大勝にも、いつまでも浸っていられないはずだ。

 今年から重点強化選手として、馬琳・王皓・王励勤・馬龍・陳杞の5人に、ハオ帥・張継科・許シンの3人を加えた8人を確定させていた国家男子チーム。その上で劉国梁監督は、チーム内の競争をより促進するため、この8人を4つのクラスに分けることを発表した。
 第1クラスには、世界チャンピオンの王励勤と五輪金メダリストの馬琳が選出された。最近では若手にやられることもたびたびだが、やはりこれまでの実績がモノを言う。いわば「現役チャンピオン」クラス。
 第2クラスは現在世界ランキング1位の王皓と、2位の馬龍。実力的には王励勤・馬琳に劣らず、若くて勢いはあるが、まだビッグタイトルは手中にしていない。「チャンピオンは目の前」クラスといったところか。
 第3クラスはハオ帥と陳杞。ともにサウスポーで、国家チーム内では典型的なライバル関係にあるふたり。しかし、なかなか壁を破れないまま、若手の突き上げを食らっている。お尻に火のついた「目指せ中堅脱出」クラスだ。
 第4クラスは張継科と許シン。まだまだ勉強中、しかし将来的には世界のトップに行く可能性もある。将来性に期待の「未来のチャンピオン候補」クラスか。

 …クラスの名前は筆者が勝手につけてしまったが、8人を単純に競争させるのではなく、ライバル関係の選手同士をひとつのクラスにして、さらに序列をつけることでより競争をあおるというやり方だ。もちろん大会の成績次第では、この4クラスの中で位置が上下することもある。このクラス分けは、あくまでもスタートラインなのだ。それにしても、国家チームの首脳陣がここまでして選手の競争をあおる国が、中国の他にあるだろうか。

 「『再び栄光を手にする』という信念は、すでに我々のチームのすべての人間の胸にしっかりと宿っている」と決意のほどを述べた劉国梁監督。ロンドン五輪までの4年間に次のような段階分けをして、再びメダル独占を狙っている。
「2009年是起歩年(着手する年)」
「2010年為基礎年(基礎を固める年)」
「2011年為重点年(重点強化の年)」
「2012年定位冲刺年(ラスト・スパートの年)」

Photo上:劉国梁監督、油断の色は見られず
Photo中・下:中国卓球界の「龍虎」、王励勤と馬琳が最上位クラスへ