全日本卓球選手権マスターズの部、初日。
会場をフラフラしつつ、出場選手の名前が載っているページを見ていたら、ハイエイティ(85)の部に
土佐昭子 (浜卓会・ 神奈川)
の文字を発見!
ちょっと待って。私、落ち着いて。落ち着いて私。
深呼吸を一回、二回、三k……土佐さぁああああんんん!!!!!
い、い、生きていらっしゃった……。
私、号泣。その場に崩れ落ちて号泣。
もちろん、心の中でですよ。実際にその場に崩れ落ちて号泣なんてしたら、病院に連れて行かれますから。
「流れ出て止まらない涙よ、止まれ!」と思いながら、近くにいた70代と思われるお姉さまに聞きました。
「あのぅ、神奈川県の土佐さんって、知ってますか?」
「知ってるわよ、土佐さんでしょう? 今から決勝戦するわよハイエイティで」
ぬぅをおおおおおおおおをおおお!!!
生きておらっしゃったうえに、これから決勝戦ですと!?
決勝戦が始まるコートを見てみると、そこには土佐さんのお姿が!
「ありがたや~、ありがたや」私は思わず合掌。目にはまた涙が。
っていうか、なんで私はこんなに泣いているの?
携帯電話のビデオで、土佐さんの決勝戦を録画。そして涙。さっきからずっと涙が止まらないんですけど。
私が子供の頃にはすでにおばあちゃんだった土佐昭子さん、現在85歳。
当時、土佐さんと同じ卓球場で練習をさせてもらっていました。何回も一緒に練習していただいたのを覚えています。
今でもその姿を変えることなく、あの時のおばあちゃんのままです。変わらなさ過ぎて怖い。
えっ? まさか、魔女?
土佐さんは私と同じ左のペン。投げ上げサービスまで一緒です。一緒というか、私が土佐さんの投げ上げサービスを完全コピーしたんですけどね。
リトルキングスの子供たちは、練習場で土佐さんを見かけると土佐さんの所に駆け寄ります。なぜならチョコをくれるから。ただのチョコではありません。HERSHEY’Sのキスチョコです。「あんなに美味しいものを、このおばあさんは私たちにくれる!」と、非常にやましい心で近寄ります。ね、クソガキでしょう?
当時、「練習がんばるんだよ」「いっちゃんは偉いね」「先生方の話はちゃんと聞くんだよ」というような言葉をかけてもらっていた気がします。
ハイエイティの決勝戦のお相手は北波輝さん、大阪府の情熱クラブ。
とってもスリムな体型で腰など全く曲がっておらず、シャキッとしています。
黒髪のおかっぱ頭は、後ろから見たら「高校生?」と間違われてもおかしくありません。
85歳以上の学校のクラスがあるとするならば、北波さんはアイドル的な存在でしょう。
すごくモテそう。
土佐さんの投げ上げサービスの威力は今でも健在。サービスエースをバンバンと獲っていました。3-0 (4,4,3)で土佐さんが優勝。
そのうちサービスエースで得点したのが1セット目に5本、2セット目に5本、3セット目は3本でした。ビデオでチェックしたので間違いありません。
「土佐さんにご挨拶を」と、表彰式へ。土佐さんを見た瞬間、私、また号泣。
周りの人に見られると本当に変な人になってしまうので、一生懸命に涙を隠しました。
表彰台にいる土佐さんの写真を撮っていると、私に気付いた土佐さんが「こっちに来い」と私に手招きをしてきました。
「えっ? 私も表彰台に乗って、土佐さんと一緒に写真を撮ってもらうんですか? それはちょっと……。一緒に写真は嬉しいですけど、でもやっぱり恥ずかしいですよ!」
モジモジしていると「それでも来い! 早く来い!」と土佐さんが更に手招きするので、しょうがなく近寄り、土佐さんの手を取り、表彰台に登ろうとしたら「土佐さんが表彰台から降りるための手助けを求めていた」という事が判明。
白目を剥いて後ろに倒れ、後頭部を強く打って意識を無くしてみました。心の中でね。
「いっちゃん、よく来たね~」
「土佐さん~~~!!!」
ダメだ……なんでこんなに涙が出てくるの?
「土佐さん、セルフィーしましょう!」
「あ、目、つぶちゃいましたね。もう一回!」
土佐さんと仲良くしていると、他のおばあさま方に
「まぁ、土佐さんのお孫さん?」と話しかけられ、土佐さんは「そうだよ、私の孫だよ」と言ってくれました。
その瞬間、土佐さんの胸に飛び込み顔をうずめ、ワンワンと泣きました。心の中でね。
私の永遠のアイドル土佐さん。
今回、チョコはくれませんでした。