愛ちゃんを初めて見たのはテレビでだったか、全国大会の試合会場でだったか全く覚えていませんが、当時「泣き虫愛ちゃん」として皆から親しまれ、誰もが彼女の親戚の叔父さんまたは叔母さんのように感じていた頃、4歳年上だった私ももれなく「親戚の子」くらいの感覚で「彼女を身近に感じていた」のを昨日の事の様に思い出します。
愛ちゃんが小さかった頃、我が卓球クラブ「リトルキングス」へ親善試合に来てくれたことがありました。恐らく試合をしたと思いますが、勝ったのか負けたのか全然覚えていません。ただ、愛ちゃんの為に藤沢市長が挨拶に来て、なぜかミニーマウスの大きなぬいぐるみをプレゼントしていた事だけは覚えています。
クイズ! 福原愛ちゃんとミニーちゃんと、西田泉は何処でしょう?
さて、全国ホープスの部で、ランクに入れなかった私は観覧席で呑気に表彰式を見ていたら愛ちゃんのお母さんが表彰式にいる愛ちゃんの写真を撮っていました。
「愛ちゃんのお母さん、こんにちは! 愛ちゃん、優勝おめでとうございます!」
「あら、西田さん。ありがとうね」
「すごいですね、愛ちゃん」
「ありがとう」
「あ、私、写真撮りますよ! 愛ちゃんのお母さんはしっかりとその目で愛ちゃんの表彰式を見てください」
「あら、そう? ありがとうね」
なんと気の利いた娘なんでしょう。パチパチと愛ちゃんの写真を撮る小学生のわ・た・し!
4歳違いとはいえ、何度か遠征や合宿、試合会場で顔を合わせる事があり、その度に「愛ちゃん、愛ちゃん」と馴れ馴れしく話しかける私に対し、嫌な顔一つせずに「西田さん、西田さん」と相手をしてくれていた愛ちゃんはやっぱり凄い人でした。
私が青森山田高校、愛ちゃんは青森山田中学校に在籍していた頃は何度か同じ練習場で練習する事もありました。彼女の練習相手は専用の中国人コーチ。
当時からものすごい量の練習時間をこなしていて、私たちはため息しか出ませんでした。
練習の休憩時間に、私はいつものようにひょうきんな事をして部員を笑わせていましたが、その時は愛ちゃんと愛ちゃんのお母さんもいました。
「おサルのポーズ」両手を頭のてっぺんに持って行き「ウッキー」ってするやつ、イメージできますでしょうか?
それを皆の前で披露して笑いを取っていると、それを愛ちゃんのお母さんに写真で撮られ、とある卓球雑誌の「福原愛ちゃんのコーナー」の一角に載せられていました。
「青森山田高校のひょうきんな西田泉さん」みたいな感じで紹介されていました。
……これはアレかな、死ねばいいのかな?
ある日、何故か愛ちゃんのお母さんに「西田さん、一緒に焼肉食べに行きましょう」と誘って頂き、愛ちゃんと愛ちゃんのお母さんと焼肉にも食べに行ったこともありました。
愛ちゃんのご両親に試合会場で会えばもちろんご挨拶します。
「あら、西田さん。これ、あげるわ」とおにぎりを貰ったりもしました。
高校時代と、大学時代に全日本卓球選手権大会で愛ちゃんと対戦して速攻負け、「まぁ、あれだけ毎日練習してりゃあ強くなるよ」と負けた言い訳をし「でも、あれだけの練習量をこなしてる愛ちゃんはやっぱり本当にマジですげぇや!!!」と舌を巻くのでした。
私が社会人になり、「私が青森山田高校生の時、福原愛ちゃんが中学生で後輩だったんですよ~」という話しになると、親戚面をしたオジサンやオバサンが口を揃えてこう言うんです。
「へぇー! 凄いじゃん! ……愛ちゃんって、やっぱり泣き虫なの? っていうか、最近愛ちゃん勝てないんでしょ? もうダメになったんじゃない? (←完全なる知ったかぶり)」
ううおおおぇぇぉううえいいいをををををぃぅうううおーーーーー!!!!
「全然だめになっていませんから! 少なくともあなたよりは! 愛ちゃん、毎日すっごい練習してるんですよ! 努力に努力を重ねて、更にまた重ねて……(中略) プレッシャーとも戦い……(中略) だから、『愛ちゃんもう勝てないんじゃない?』なんて今後一切言わないで下さいっ!」と唾を飛ばしながら説教すると「どうもすみませんでした」と言うので「謝るのは私にじゃなくて、福原愛ちゃんにでしょう!」とさらに唾を飛ばすのでした。
私の悪口は言って良い。だがな、愛ちゃんの悪口だけは絶対に言わせまい。なぜなら、彼女の頑張る姿をこの目で見ていたんですもの。あの子は本当に凄い子なんです! ……あのコレ、本当の話しですからね。
それにしても、子供の頃の愛ちゃんのビデオは、涙なしには観られませんね。
お母さんと練習中、愛ちゃんが泣きながら「練習止めないで、止めないで~」と号泣する場面なんて、気付いたらこちらも一緒に号泣してるんですよね。本当に、いつみても何回観ても号泣できます。
マスコミや周囲からのプレッシャーで大変な思いをしたでしょうに、それでもオリンピックにも出場し「皆さんのお陰で頑張れました」と言える愛ちゃんはやっぱり本当にマジですげぇ!!!
日本ならず、世界的にもその名を知らしめ、卓球界にフィーバーを巻き起こした福原愛ちゃん。
感動をありがとう。そして、選手生活大変お疲れ様でした。