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中国リポート

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 2012全国卓球選手権、最後に個人戦の結果をお伝えしましょう。またも大雑把な記録で申し訳ありませんが、個人戦5種目の主な結果は下記のとおり。

★男子シングルス
※馬龍は棄権
●3回戦(ベスト8決定戦)
劉吉康(遼寧省) 4−3 陳杞(江蘇省)
周雨(解放軍) 4−1 馬琳(広東省)
閻安(北京市) 4−3 許シン(上海市)
●準決勝
周雨(解放軍) 6、7、−4、6、−9、8 張継科(山東省)
方博(山東省) 14、−7、5、9、8 ハオ帥(天津市)
●決勝
周雨(解放軍) 2、5、11、−8、8 方博(山東省)

★女子シングルス
※郭躍、李暁霞、丁寧、劉詩ウェン、郭炎は棄権
●3回戦(ベスト8決定戦)
趙岩(江蘇省) 4−3 陳夢(山東省)
●準決勝
曹臻(解放軍) 9、−9、8、4、−8、4 趙岩
楊揚(解放軍) −8、9、9、2、−5、10 范瑛(江蘇省)
●決勝
曹臻 9、10、10、8 楊揚

★男子ダブルス決勝
王励勤/許シン(上海市) キケン 張継科/方博(山東省)
★女子ダブルス決勝
曹臻/木子(解放軍) 11、−6、6、−8、6、−6、9 陳夢/顧玉ティン(山東省)
★混合ダブルス決勝
馬龍/丁寧(北京市) 6、−4、13、−5、3、−10、11 ジャイ一鳴/常晨晨(遼寧省)

 男子シングルスは、丁寧との混合ダブルスで優勝した馬龍が棄権。団体戦の終了後、「ずっと練習量が落ちていたのに加え、試合続きで体に負担がかかっている。シングルスに出るかどうかはコーチと相談する」と語っていたが、大事を取ったようだ。また、女子シングルスに至っては郭躍、李暁霞、丁寧、劉詩ウェン、郭炎と世界団体戦ドルトムント大会の代表5人が揃って棄権。レベルが大幅に低下したが、悲しいかなこれが全国選手権のステータスなのだ。

 混戦の男子シングルスを制したのは、20歳の左シェークドライブ型・周雨。3回戦で馬琳、準決勝で張継科と五輪金メダリストを連破し、決勝ではこれまで分が悪かったという方博に完勝した。「(今回の優勝は)まだスタートラインに立ったに過ぎないよ、これからも試合はたくさんある。ただ、その出発点としては、今日はとても良い日になったと思う」(周雨)。
 周雨はもともと江蘇省の出身だが、江蘇省ではジュニアチームに入ることができず、わずか8歳で河南省濮陽市の中国卓球協会・濮陽卓球実験学校に入学。次第に頭角を現し、2007年10月に国家2軍チーム、2010年12月に国家1軍チーム入りを果たした。同じく2010年に人民解放軍チームの一員となってから、さらに目覚ましい成長ぶりを見せている。

 ……それにしても今回の周雨の優勝、「獅子をまだ起こしてほしくなかった」というのが正直な感想だ。長身を利して、中陣からでも一発で打ち抜く両ハンドのパワー、特にバックドライブの威力はすさまじく、プレーのスケールは先輩の陳杞をはるかにしのぐ。「周雨」と聞くと何だか雨がぼそぼそ降っているみたいだが、そのプレーはまるで暴風雨。アスリートとして申し分ない身体能力と、中国卓球界の顔になりうる精悍なルックス。超級リーグでのプレーも楽しみだ。

 ※周雨対方博の男子単決勝の動画はコチラ(youtube)
http://www.youtube.com/watch?v=cJpeNLqq5cM&feature=player_embedded

 トップ選手不在の女子シングルスは曹臻が制した。2008・2010年大会では準優勝に終わっていたが、悲願の初優勝。男子ダブルス決勝で、シングルス2回戦の尹航戦で右足を傷めるなど満身創痍だった張継科が棄権したため、女子ダブルスと女子シングルスの決勝が連続して行われる強行軍だったが、見事2冠を達成した。世界団体選手権の代表メンバー5人に次ぐ「No.6」の実力を証明し、女子シングルスの決勝後には「国家チームの主力選手は棄権したけど、トーナメントを見ると実力のある若手が多かった。1試合1試合頑張るだけだと自分に言い聞かせた」と語った。

 …し、しまった。昨日17日に中国超級リーグが開幕してしまいました。開幕戦の結果はまた明日!

photo上:末恐ろしい20歳、周雨(ジョウ・ユ)
photo中:馬龍によく似たタイプの方博は2位
photo下:曹臻、初優勝成る!
(写真は上から10年世界ジュニア、09年世界ジュニア、11年世界選手権)
 10月6〜14日に行われた「2012全国卓球選手権」。詳細な記録が少なくて恐縮ですが、女子団体の結果は以下のとおりとなった。

★女子団体
●準々決勝
〈解放軍 3−1 山東省〉

※李暁霞 1−3 楊揚、李暁霞 2−3 木子
〈遼寧省 3−1 江蘇省〉
〈四川省 3−2 広東省〉
〈北京市 3−1 山西省〉

●準決勝
〈遼寧省 3−2 解放軍〉
〈北京市 3−0 四川省〉

○丁寧 7、5、6 聶維
○郭炎 9、−2、6、−4、8 朱雨玲
○盛丹丹 7、10、9 李茜
●3位決定戦
〈四川省 3−2 解放軍〉


●決勝
〈遼寧省 3−2 北京市〉

 文佳 4、−10、−7、−7 郭炎○
○常晨晨 4、8、7 丁寧
 李佳イ 9、−7、−11、7、−6 盛丹丹○
○文佳 10、9、7 丁寧
○常晨晨 9、−8、−6、6、15 郭炎

 エース郭躍を首の故障で欠いた遼寧省チームが、決勝で優勝候補筆頭の北京市チームとの激戦を制し、下馬評を覆す優勝を果たした。
 男子にも増して、五輪代表の調整不足が際立った女子団体。ロンドン五輪金メダリストの李暁霞は準々決勝の解放軍戦で、格下の楊揚と木子に連敗。世界ランキングを14位まで上げている陳夢もトップで木子にストレート負けを喫し、山東省はベスト8止まりに終わった。広東省もエース劉詩ウェンの2点獲りもむなしく、四川省に敗れている。

 そして決勝は、準決勝ラストで常晨晨が楊揚にストレート勝ちした遼寧省と、実力どおりに決勝へと駒を進めた北京市の対戦。スコアを見てもわかるとおり、北京市のエース丁寧が常晨晨・文佳とのサウスポー対決でまさかのストレート負け。「ロンドン五輪が終わってから、ずっと計画的な練習ができていません。試合ではかなり消耗する感じで、技術や戦術もあまり良くない」と試合後の丁寧。ラスト郭炎は常晨晨に対し、第5ゲーム1−8のビハインドから驚異の粘りで追いつきながら、惜敗した。「全力でプレーしたけど、体調をベストの状態に持ってくることができなかった」(郭炎)。

 王楠が健在だった07年大会以来、5年ぶりの優勝を果たした遼寧省は、超級リーグでの郭躍の移籍が良いカンフル剤になったのかもしれない。特に常晨晨の活躍は目覚ましい。前陣を死守し、両ハンドのカウンターで攻めるプレーは、チームメイトの郭躍や文佳に通じる「遼寧スタイル」だが、ボールタッチが柔らかく、凡ミスは非常に少ない。神戸で行われた04年世界ジュニア決勝で劉詩ウェンを破り、優勝したことは卓球ファンの間でも遠い記憶のかなただろう。
 「練習は非常に真面目にやるが、試合になると力が出せない。メンタルのもろさが出る」。遼寧省女子チームの谷振江・前監督にそう評されていたガラスの左腕は、ここから奇跡の代表復帰を果たせるだろうか。

 それにしても、選手たちのモチベーションが上がらないのを差し引いても、五輪代表クラスがこれほどコロコロとやられてしまうとは……。中国女子の層の厚さには恐れ入るばかりだ。

photo上:大会後、『遼寧晩報』のインタビューに対し、「自分に自信がついたと感じる」と答えた常晨晨
photo下:調整不足を露呈した丁寧、超級リーグの序盤戦も苦しい戦いになりそう
 10月6日から昨日14日まで、江蘇省・張家港市で「2012全国卓球選手権」が開催された。ロンドン五輪代表の選手たちは、閉幕後の取材やイベント攻めで調整不足は明らか。大会序盤の団体戦から、思わぬ波乱が相次ぎ、男子シングルスでは誰も予想しなかった新チャンピオンが誕生した。
 まだ正式な記録は発表されていないので、詳細な記録は一部しかないが、まず男子団体戦の記録は以下のとおり。昨年度はロンドン五輪の試合方式に合わせ、団体戦の前に個人戦を開催。団体戦も4単1復(3番がダブルス)で行われたが、今年はまた5単のABC-XYZ方式に戻されている。

★男子団体
●準々決勝
〈北京市 3−2 四川省〉

○馬龍 −9、8、8、3 許鋭鋒
 閻安 −6、8、11、−5、−11 邱貽可○
 侯英超 6、−7、−6、−9 王建軍○
○馬龍 7、6、−10、−7、10 邱貽可
○閻安 7、9、9 許鋭鋒
〈河北省 3−1 湖南省〉
〈解放軍 3−0 内蒙古自治区〉
〈上海市 3−0 山東省〉

○許シン 3−2 方博
○王励勤 9、−7、8、14 張継科
○尚坤 3−0 呉ハオ

●準決勝
〈北京市 3−0 河北省〉
〈上海市 3−1 解放軍〉
●3位決定戦
〈河北省 3−2 解放軍〉
●決勝
〈北京市 3−1 上海市〉

 閻安 −5、−3、9、−11 許シン○
○馬龍 −7、6、−7、6、7 王励勤
○侯英超 7、−8、8、9 尚坤
○馬龍 4、−15、7、4 許シン

 男子団体は予選リーグから波乱の連続。馬琳・張超を擁し、優勝候補の一角だった広東省が新彊ウイグル自治区に敗れ、五輪金メダリストの張継科も江蘇省戦で蔡偉に2−3、林晨に1−3で敗れてまさかの2失点。チームは辛くも決勝トーナメントに進出したが、エース張継科の調子がやはり上がらず、上海市に完敗。張継科は最近は分が良かった王励勤に対し、第4ゲーム10−7のゲームポイントから逆転され、惜敗した。「まだ6割くらいの調子。故障に気をつけながら、個人戦で調子を上げていきたい」(張継科)。

 そして決勝は2年連続で北京市と上海市の顔合わせ。今年も馬龍という絶対的エースを擁する北京市が、3点目をどこで獲るかが勝負の分かれ目になった。
 その大役を担ったのは30歳のベテランチョッパー・侯英超。大会の約3週間前のロシアオープンではダブルスを組んだ尚坤を闘志あふれるプレーで破り、チームに決定的な1点をもたらした。「去年の決勝では尚坤に2−0から逆転されて、すごく悔しい思いをした。そのリベンジを期す一戦でもあり、チームの勝敗を大きく左右する3番での試合でもあったから、気合いが入っていたよ」と試合後の侯英超。決勝で王励勤と許シンを連破した馬龍も、「侯さんはチームで一番のベテラン、彼のおかげでチームは落ち着いて戦うことができた」と先輩を讃えている。ロシアオープンでは予選リーグで軽部隆介(シチズン)に敗れ、予選敗退の憂き目にあったが、後輩たちの前で面目躍如のガッツプレーを見せた。

 続けて女子団体と個人戦の結果もお伝えします…。

photo上:デカくてコワモテの侯英超、カーブロングも持ち味のひとつ
photo下:男子ワールドカップ優勝の馬龍、超級リーグでも活躍に期待
(写真は09年全中国運動会(上)/12年ロンドン五輪)
 9月21〜23日に行われた女子ワールドカップ。優勝した09年大会以来、3年ぶりの出場となった劉詩ウェンが、全6試合で2ゲームしか落とさない圧倒的な強さで2回目の優勝。李暁霞と丁寧に続き、練習中に首を故障した郭躍までも大会を欠場する中、きっちり結果を残した。決勝ではサマラ(ルーマニア)をわずか25分で料理している。
 「優勝できて本当にうれしい。これまでの継続的な努力がむくわれた気がします。オリンピックに出られなかったから、自分にとってはより大きな励みになりました。支えてくれた皆さん、そして孔令輝コーチにお礼を言いたい」(劉詩ウェン/出典『華奥星空』)

 そして、これまで超級リーグでは広東省チーム(広州時代地産)のエースとして奮闘してきた劉詩ウェンだが、今シーズンはついに移籍が決定。エース郭炎が北京市チームに復帰した山西大土河・華東理工が、彼女に白羽の矢を立てた。屋台骨を引き抜かれた広東省チームの打撃は計り知れない。
 現在の広東省チームは若手が中心で、国家チーム経験者は右シェークフォア表ソフトの周芳芳がいるくらい。福原愛(ANA)が計3シーズン所属したことでも知られる広東省チームだが、劉詩ウェンが抜けてしまうと、甲Aリーグでの上位進出すら覚束(おぼつか)ない。

 現在、広東省卓球管理センターの主任である喬紅(89年世界選手権優勝)は、『広州日報』の取材に対してこう語っている。「劉詩ウェンは広東省チームの絶対的な主力として超級リーグに出場していたが、チームには優勝を狙えるだけの力がなく、上位4チームのプレーオフには進めなかった。特にメンタルの部分において、彼女を鍛えるには足りない部分があった」。
 もっとも、このコメントはあくまで表向きのものらしい。微博(マイクロブログ)の9月14日の書き込みに、彼女の心情が現れている。

 「とうとう、すべての諦めがつきました。もう吹っ切れました。…今はただ、チームの首脳陣の方々に感謝するだけです。誰もが私を助けようと奮闘してくれました。結果は意にそぐわないものだったとしても、本当に感動しています。
 そして変わらず私たちを支持してくれた広州時代地産の岑CEOにも、心から感謝の言葉を申し上げます。ずっと思い悩んできたことに片(かた)が付きました。あとは超級リーグに向けて、精一杯の準備をするだけです!」(喬紅)

 馬琳、郭炎、郭躍、そして劉詩ウェン。各チームの看板選手たちが次々に移籍している今シーズンの超級リーグ。戦力の均衡が大きく崩れそうな気配だ。

photo上:新天地へと移籍した劉詩ウェン
photo下:喬紅、チームの陣容はあまりに苦しいが、一昨年の姜華君、昨年の石賀浄に続く外国籍選手の加入はあるのか
 今年は10月17日に開幕が予定されている『2012-2013中国卓球クラブ超級リーグ』。前回のオリンピックイヤー、2008年には第1ステージの全18節(全10チームが2回ずつ対戦)を半分の9節に短縮し、その年のうちに閉幕させるという強引な日程だったが、今年は年をまたいで2013年1月27日に閉幕する。

 コロコロ変わるクラブ名と、直前までオープンにされない日程と会場。そして入れ替え戦が終わると1年間休眠状態に入るホームページ。中国の卓球雑誌『ピンパン世界』の辺玉翔記者に問い合わせてみても、メディアの取材申請を含め、「成り行きを見守るしかないでしょう」とのこと。開幕してみたらクラブ数がひとつ減っていた、なんてこともザラだが、それでも「世界最高レベルの国内リーグ」であることだけは疑いの余地はない。

 現在のところ伝わっている、超級リーグに関するニュースを幾つかお伝えしよう。まず、今シーズンは本来なら「摘牌会議(ドラフト会議)」が行われるはずだが、今年から制度が変わり、摘牌会議は終了。選手の希望、そしてクラブ間の協議によって、ある程度自由に移籍ができるようになった。

 現時点で、すでに郭躍(遼寧大連・新衡業上方)が八一解放軍へ、移籍金400万元(約5千万円)の4年契約で移籍。来年は鞍山市で全中国運動会・卓球競技が行われる遼寧省、女子チームの絶対的エースの流出は、卓球競技を盛り上げる上でもマイナスになりそう。常晨晨・文佳の両サウスポーに18歳の李佳イを加えた陣容だが、上位を狙うのは厳しい。
 また、男子では浙商銀行がスポンサー撤退の憂き目にあっている。もともと天津市チームを母体としたクラブだったが、今シーズンは本来の地元である天津市でスポンサーを獲得し、新たなスタートを切る。天津市チームはエース馬琳を残留させることを目指していたが、馬琳は郭躍と同じく400万元の移籍金で江蘇省チームへ移籍した。元祖「優勝請負人」の馬琳、キャリアをスタートした八一工商銀行を振り出しに、これが7つ目の所属クラブとなる。

 昨シーズンの優勝クラブが消滅。プロスポーツの世界では異常事態というほかないが、「やっと優勝できたし、名前も売れたし、もういいか」というのがスポンサーの本音か。超級リーグ、まずはクラブのメンバーと日程発表が待たれる。

photo上:ちなみに馬琳のクラブ遍歴は、八一工商銀行(〜01)→山東魯能(02)→広東全球通(03-04)→陝西銀河国梁(05-06)→寧波北侖海天(07)→浙商銀行(08-09)→寧波北侖海天(10)→浙商銀行(11)→江蘇省チーム
photo下:郭躍、遼寧省チームは4年後の復帰を希望しているが、それまでプレーを続けられるだろうか
 驚異的な経済成長には陰りが見られるとはいえ、サッカーの超級リーグに大物選手が次々と加入するなど、その威力を発揮している「チャイナマネー」。ロンドン五輪で金メダリストになった選手たちには、サラリーマンには一生かかっても稼げないほどの大金が舞い込む。

 五輪でメダリストになれば、まず国家チームや所属する省・市から多額の報奨金が贈られる。日本でも競技連盟や協会から報奨金が出る仕組みになっているが、中国の場合は大企業がスポンサーにつくため、その総額は日本の比ではない。最も報奨金が手厚い広東省の場合、五輪の金メダリストには報奨金500万元(約6250万円)と高級車1台が贈られるという。
 その他にも、選手個人が企業とスポンサー契約を結んでいれば、そのスポンサーの企業からも報奨金が出るし、地元の企業から報奨金や車、マンションが贈られるケースもある。

 『西安晩報』の記事によれば、ロンドン五輪の卓球男子シングルスで優勝した張継科への報奨金の総額は920万元(約1億1,500万円)に上るという。これは中国のスポーツ選手の中でもトップクラスの数字だ。
 まず国家チームからの報奨金は、国内有数のビール会社である燕京ビール集団がスポンサーとなり、男子シングルスの金メダルに50万元。男子団体は1チームに100万元で、3人に分割される。出身の山東省からは金メダル1枚につき100万元、青島市からも多額の報奨金が贈られ、国・省・市の報奨金の合計額は500万元(約6250万円)に達する。

  さらに張継科には地元青島市の不動産会社から、海沿いの1部屋120平方メートルの高級マンション、およそ300万元相当が贈られている。ただし、こちらはまだ建設中で、セレモニーで大きな鍵のレプリカを受け取っただけだ。
 そして香港の実業家・霍英東(故人)が創設した霍英東体育基金から、金メダリストひとりずつに重さ1キロの純金のメダルと8万ドル(米ドル)の報奨金。香港のアパレルメーカー「金利来 Goldlion」の創業者、曾シェン(うかんむり+先)梓氏の曾シェン梓体育基金から、金メダリストひとりあたりに約40万元。

 ……列挙するだけでため息が出てしまう金額。メダルの有無とメダルの色が、選手たちの人生を変えてしまうのだ。

photo:張継科、文字どおり値千金の金メダルとなった
 日本とは比較にならないほど、卓球に関する多種多様な情報が流れている中国。その中で、不定期に繰り返されるひとつのニュースがある。「孔令輝と恋人の馬蘇は、すでに別れている」という破局報道だ。ロンドン五輪が終わり、国家卓球チームのコーチ陣の仕事にもひと区切りがついたところで、中国ではふたたびこの破局報道がマスコミを賑わせている。

 お父さんの苗字がマァ(馬)さん、お母さんの苗字がスゥ(蘇)さんでマァ・スゥ(馬蘇)。まるでコンビ名のような名前の由来を持つ馬蘇は、孔令輝と同じ黒龍江省ハルピン市の出身。もともと広告のモデルの仕事をしていたが、2002年にドラマ「大唐歌飛」で女優としてデビュー。同じ年に、共通の友人が主催するパーティで孔令輝と知り合い、交際がスタートした。パーティの後日、孔令輝がドラマに出演している馬蘇に惹(ひ)かれて電話をかけ、「ひとりのあなたの大ファンに、お会いする機会を作ってやっていただけませんか?」と頼んだという、まことしやかな逸話が残っている。

 現在では年間3〜4本のテレビドラマ、さらに映画にも出演し、女優としての地位を確立している馬蘇。しかし、孔令輝とのツーショットがマスコミに登場することはほとんどなくなり、「結婚は秒読みか」と言われながら、同居さえしないまま10年が経った。2010年2月に破局報道があった時は、孔令輝が「馬蘇との関係はうまくいっている、別れてはいないよ」とコメント。今回の報道についても孔令輝は、「またぼくたちを別れさせたいの? みんな、ぼくたちよりずっと結論を急いでるみたいだね」というコメントを出している。
 別れたことを否定していても、交際歴10年で孔令輝も今年で37歳。周囲がふたりの関係を疑うのも無理からぬところか。孔令輝のお母さんの谷淑霞さんは、馬蘇とメールのやり取りは続けているようで、「別れたという報道は信じていません」とコメントしている。

 ……ちなみに破局報道の根拠のひとつとして、馬蘇にはすでに新恋人がいるという情報も流れている。香港の映画俳優・陳展鵬がその人なのだが、実はこの陳展鵬も小さい頃から卓球に打ち込み、香港ジュニア代表として国際大会にも出場したほどの腕前。今年5月に香港で行われたチャリティイベント「萬衆同心公益金」では、帖雅娜とのラリーも披露している。本当に新恋人なのかどうかはともかく、馬蘇さん、卓球とは縁浅からぬ人のようだ。

photo上:ロンドン五輪で、女子団体優勝を決めた施之皓監督とハイタッチする孔令輝(写真中央)。果たして年貢の納め時はいつ…?
※写真提供:アン・スンホ氏
 ロンドン五輪の卓球競技が閉幕してすでに1カ月余り。しかし、日本のみならず中国でも、メダリストたちの多忙なスケジュールはまだまだ続いている。

 男子シングルス金メダリストの張継科は、国家卓球チームの奉仕活動や対スポンサーのイベント、山東省体育局の報告会など、様々な行事に引っ張りだこ。やはり金メダリストの人気は絶大で、スポンサーなども必ず「イベントには必ず張継科を来させてくれ」と注文してくるのだそうだ。あまりの忙しさに加え、練習不足で筋肉が落ちたことで体重が3キロも減ってしまったという。
 「確かにすごく疲れてるよ。何かと緊張することも多いしね。でも、ぼくたちには時間の許す限り、スポンサーの要求に応える義務がある。彼らは国家チームに多くのお金を払い、そして支持してくれているわけだから」(張継科/出典『山東新聞網』)。男子ワールドカップは欠場する張継科だが、9月13日以降にようやく練習を再開する予定だそうだ。

 女子シングルス金メダリストの李暁霞も、イベント攻めで1日に飛行機に二回乗る日もあるというから、まるで政治家並みだ。女子団体決勝が終わってから、まだ一度もラケットを握っていない。「イベントや社会活動に参加するのは、練習や試合とは違った疲労感がありますね」(李暁霞)。飛行機の乾燥した機内でのどを傷めることが多く、あちらこちらと連れ回されるため、五輪前から抱えていた右ひざの故障も思わしくないという。張継科と同様、こちらも女子ワールドカップは早々にキャンセルしている。

 今シーズンの中国超級リーグの開幕は10月17日。まだメンバーは正式に発表されていないが、両選手とも所属する山東魯能では絶対的なエース。決して替えの効かない選手だ。昨シーズン、張継科はプレーオフ・準決勝の浙商銀行戦で左ひざを負傷し、途中棄権でチームの敗退が決まってしまっただけに、五輪金メダリストとなっても超級に懸ける思いは強いだろう。李暁霞は超級3連覇を目指すことになるが、男子以上に各クラブの選手層は厚く、油断のできない戦いが続く。

Photo上:張継科、自慢の肉体美もトレーニング不足には勝てない?
Photo下:「早く練習を再開したい」と李暁霞
 五輪の開催年に当たるため、シーズンの開幕が例年の5月末から10月末にずれ込んでいる「2012中国卓球クラブ超級リーグ」。すでに選手の獲得状況や、新しいクラブの参戦情報などが流れつつあるが、中国・天津の地方紙『濱海時報』が興味深いニュースを伝えている。先月のロンドン五輪で、五輪7大会連続出場という金字塔を打ち立てたヨルゲン・パーソン(スウェーデン)の超級リーグ参戦が決定したというのだ。

「考えたのはほんの一瞬だよ、そして即決した。ぼくはずっと超級リーグでプレーすることを願っていたんだ。天津市チームで、ついにそれが実現するよ」(パーソン/出典『濱海時報』)。
 パーソンが戦列に加わることになったのは、今年10年ぶりに超級リーグへ復帰する天津市チーム。2010年シーズンには松平健太(早稲田大)がプレーしたチームで、監督を務めるのは地元・天津の英雄である馬文革(92年五輪3位)。パーソンと馬文革は20年来の旧友で、ドイツ・ブンデスリーガのオクセンハオゼンでチームメイトだったこともある。これまでにもパーソンが中国を訪れた時、超級リーグでプレーしたいという希望を馬文革に伝えていたという。

 今年は渤海(ぼっかい)銀行という大型スポンサーを獲得し、各クラブを転々としていたハオ帥・李平(ともに天津市チーム所属)を呼び戻し、さらに馬琳との契約も狙っているという天津市チーム。失礼ながら、46歳のパーソンが戦力的にプラスになるのか、という気もするが、馬文革監督にはよりシビアな計算もあるようだ。「パーソンの天津市チームでの役割は、試合だけでなく、ファンとのふれ合いやエキシビションマッチもある。天津の40〜50歳代の卓球ファンには、パーソンやワルドナーに対して特別な感情があるんだ」(馬文革)

 95年に開催された世界選手権天津大会の男子団体決勝で、パーソンとワルドナーのスウェーデンは激闘を繰り広げた。大激戦となった2番の馬文革対パーソン、そしてラストの王涛対パーソンは、中国男子が世界の覇権を中国から奪回した記念すべき一戦として、ファンの脳裏に刻まれている。馬文革がパーソンに期待するものは、競技力以上に「集客力」というのが本音だろう。パーソンは10月初旬に天津入りし、10月末の開幕へ向けて調整を行う予定だ。

photo上:因縁の地・天津で、今度は地元ファンの声援を背に戦うパーソン
photo中:44歳になった馬文革、超級での采配に期待
photo下:新生・天津市チームの上位進出のカギを握るのは、先日の中国オープンを制したハオ帥
 晴れてロンドン五輪・卓球競技の男子金メダリストとなり、大会後には連日睡眠時間が4時間を切るほどの取材攻勢を受けた張継科。帰国して故郷の山東省青島に戻った後も、「張継科フィーバー」は続いている。山東省の五輪メダリスト表彰会では、なんと1200枚(!)の封筒にサインを書かされる羽目になった。張継科曰く、「右手が言うことを聞かなくなったよ」(出典『半島都市報』)。24日には他の金メダリストたちとともに香港を訪れる予定だ。

 五輪・世界選手権・ワールドカップをすべて制する「大満貫」を、もう一度達成したいと語る張継科。それは競技人生最大の目標と言えるものだが、彼の当面の目標は英会話をマスターすること。「もっとしっかり英語を勉強しようと思っている。そうすれば、今度ホンモノの“C羅”に会った時、ふたりでお喋りができるからね」(張継科/出典『現代快報』)。ちなみに張継科が大ファンだというC羅とは、サッカー・ポルトガル代表のクリスチアーノ・ロナウドのこと。「C」は「Cristiano(クリスティアーノ)」、羅は「羅納尓多(ロナウド)」。J.セイブ(ベルギー)を「Jセ」と表記するようなものか…。

 実は張継科、今年3月の世界団体選手権ドルトムント大会で、ロナウドの直筆サイン入りTシャツをゲットしていた。2月のカタールオープンで、スペイン女子チームのション・イェンフェイにTシャツを託し、「ロナウドのサインを貰ってきて」と頼んだという。確かにロナウドはスペインのレアル・マドリードで活躍しているが、かなり無茶なお願いである。

 しかし、さすがはスペイン在住歴の長いション・イェンフェイ。マドリッドの卓球クラブの代表や、サッカーのトレーニングマシーンのメンテナンス担当など、様々な伝手(つて)をたどって、ロナウドのサインを手に入れてきた。前述の『半島都市報』によれば、卓球好きで知られるロナウドは張継科のこともよく知っており、気前よくサインしてくれたうえ、サインには「My dear brother(親愛なる兄弟)Zhang Jike」と添えられていたそうだ。

 これに大喜びした張継科は、さっそくサイン入りウェアを着た写真を「微博(マイクロブログ)」にアップ。そしてドルトムント大会で着用したウェアにサインし、中国語で「我親愛的兄弟(親愛なる兄弟)C羅」と書き添え、ロンドン五輪で再びション・イェンフェイに託したという。いずれ張継科のサイン入りウェアも、ロナウドの手元に届けられることになるだろう。ロナウドのフェイスブックに、中国代表のウェアを着たロナウドが登場する可能性もあるが、あの頑丈な首がちゃんとウェアに入るだろうか…。

photo上:英語のリスニングはかなりできるが、話すのが苦手という張継科
photo下:少なくともこのタトゥーの「persistence(忍耐)」という英単語だけは、二度と忘れないでしょう(写真提供:マンフレッド・シリング)