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中国リポート

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 大変ご無沙汰を致しました…。全日本選手権が終わり、ようやく編集部も本格的な年明けを迎えております。中国リポートも本格始動いたします!

 1月14日、シンガポール卓球協会は退任した劉国棟女子チーム監督の後任人事として、現北京市女子チーム監督の周樹森氏の就任を正式に発表した。
 新井周(グランプリ大阪)の実父として知られる周樹森は現在67歳、浙江省杭州市の出身。中国卓球界では知らぬ者のない名指導者だが、自身も1964年に国家チームに選ばれ、選手として活躍。しかし、妻の劉雅琴(元全中国チャンピオン)とともに、文化大革命によって世界大会への道を閉ざされた。74年から国家チームコーチ、そして81年から北京女子チームのコーチを務め、張怡寧、郭炎、そしてリ・ジャウェイら多くの名選手を育てている。兄の周蘭遜(故人)は65年世界団体優勝メンバー、姪のシーリー・チョウ(オーストラリア)は00年シドニー五輪複ベスト8、名だたる卓球一家なのだ。

 周樹森とシンガポール卓球協会の契約は、今年1月1日から2012年12月31日までの4年間。しかし、2009年10月に山東省で第11回全中国運動会が開催され、周樹森は北京市女子チームの監督として重責を担うため、それまでは暫定的にシンガポール女子チームの顧問に就任。全中国運動会の終了を待って本格始動となる予定だ。
 劉国棟監督がチームを離れ、大きな打撃を受けたかに見えたシンガポール女子チームだが、さすがに五輪銀メダルチームだけあって大物を担ぎ出してきた。1月13日に初めてシンガポール女子チームの指導を行い、「2012年ロンドン五輪では2枚のメダルが目標」と語った周監督。団体で1枚、シングルスで1枚ということだろうが、個性が強いメンバーをまとめる上では、周監督の経験がものを言いそうだ。日本の卓球ファンとしては「シンガポールにはこのままおとなしくしていてほしい…」というのが心情だが、今後も日本の強力なライバルには変わりないだろう。

下写真上:全中国運動会で、張怡寧のベンチに入った周樹森
下写真下:北京五輪団体表彰でのシンガポール女子チーム。王越古は、年齢的にロンドン五輪は微妙なところだ
 年越しの話題、しかも順番が前後してしまい、申し訳ありません。08超級リーグの女子最終順位とMVPを掲載いたします…。

☆☆☆ 2008中国卓球クラブ超級リーグ・女子最終順位 ☆☆☆

1.  魯能・路安集団
2.  遼寧鞍鋼
3.  山西大土河華東理工
4.  八一工商銀行
5.  北京時博国際
6.  北京北大方正
7.  江蘇中超電纜
8.  広東珠江怡景湾
9.  大同雲崗・雁北賓館
10.  冀中能源

★最佳運動員(女子MVP)
郭躍(遼寧鞍鋼)

 大激戦となった決勝戦を紙一重の差で制した魯能・路安集団が優勝。MVPには、王楠が抜けた穴を埋め、チームを決勝進出に導いた郭躍が選出された。
 3位以下のチームでは、張怡寧のいる北京時博国際が、北京北大方正との5位決定戦、北京ダービーを2試合ともストレートで制して5位。準決勝進出はならなかったが、張怡寧にとっては納得のシーズンだったのではないか。8位の広東珠江怡景湾は、エース劉詩ウェンが17勝5敗と及第点の成績を残したが、2番手の曹幸ニィが2勝8敗と不調なのが響いた。

 そして、何よりショッキングだったのが冀中能源の甲Aリーグ降格。7~10位のチームで争う第2ステージの順位決定戦では、まず江蘇中超電纜に2連敗して9位決定戦へ。9位決定戦は2試合で勝敗を決するのだが、冀中能源はまず第1戦で大同雲崗・雁北賓館に3-2で勝利。しかし、これが最後の抵抗だった。第2戦ではトップで賈君がカット主戦型の武楊に、2番で牛剣鋒が馮亜蘭にストレートで敗れ、一気に降格の崖っぷちに。今シーズン超級リーグの最多勝ペアとなった牛剣鋒/白楊が勝利して意地を見せたが、4番で賈君が馮亜蘭に敗れ、ついに自動降格が決定した。
 2000-2001年、2002年と2シーズン続けて(当時のチーム名は河北六通)、超級リーグを制した河北省チーム。ここ2シーズンほど中堅チームとして安定した成績を残していたが、主力である牛剣鋒と白楊のふたりが国家チームを引退。技術レベル、モチベーションともに維持しきれなかったようだ。世代交替もいまだ進んでおらず、再び昇格するまでには相当な時間を要するだろう。

 こちらも遅ればせながら、超級リーグの男女9位チームと甲Aリーグ2位チームの入れ替え戦の結果も続けて掲載いたします。

Photo上:優勝は逃したが、MVPの座を獲得した郭躍
Photo下:今シーズンはシングルス2勝11敗と惨憺(さんたん)たる成績に終わった牛剣鋒。かつての世界ランキング2位も、チームの凋落に歯止めをかけられず
 大変遅ればせながら、明けましておめでとうございます! スタートから3年目を迎えた中国リポート、今年も「かゆい所に手が届く」リポートを目指して頑張ります。全日本選手権のある1月は更新頻度が少々落ちるかと思いますが…、何卒ご容赦下さい。

 2009年の中国リポート1発目は、シンガポール卓球チーム総監督・兼女子監督を退任した劉国棟のニュースから。なんと劉国棟はインドネシア卓球チーム総監督に就任することが明らかになった。シンガポールとインドネシアはマラッカ海峡を挟んだ隣国同士。独立後初の五輪でのメダルをもたらした立て役者が、こともあろうにライバルチームの総監督となり、打倒シンガポールを狙ってくるのだから、シンガポール国民の胸中は複雑だろう。
 インドネシア卓球チームは、昨年3月の世界団体選手権で男子47位、女子37位。劉国棟曰く「オリンピックや世界選手権での成績どうこうと言うのは、今の時点では現実的ではない。インドネシア卓球チームは男女ともまだまだレベルは低い。成績に関してはしばらく問わない(出典:成都商報)」。四川省成都市での強化合宿でレベルアップを図ると語る劉国棟、さすがの名伯楽もすぐに結果は出せないだろうが、今後インドネシアが長足の進歩を遂げるのは間違いないだろう。2年に1度開催される東南アジア競技大会での優勝が、当面の目標になりそうだ。

 また、シンガポール卓球協会は男子チームの監督として、新たに四川省女子卓球チームの監督である陳平西と2年契約を結んだ。今年47歳の陳平西は、80年代に国家チームのメンバーとして蔡振華、江加良らの「陪練(トレーナー)」を務めた経歴の持ち主。88年に国家チームを引退してフランスに渡り、コーチ兼プレーヤーとなってフランス国籍を取得している。

 それにしてもシンガポールは得がたい人材を失った。選手の管理権を巡ってシンガポール卓球協会と対立した劉国棟だが、インドネシア卓球チームの総監督という選択に、遺恨めいたものを感じるのは考え過ぎか…。シンガポール女子チーム監督の後任人事はまだ未定だが、劉国棟に絶対の信頼を寄せていた馮天薇ら若手選手にとっては大打撃だ。世界の大舞台で果敢に中国に挑み、鮮烈な印象を残したシンガポール女子チーム。

Photo:昨年11月に北京で結婚式を挙げた劉国棟。実弟の劉国梁に加え、介添え人として劉国正も出席。中国でも間違える人がいますが、劉国正とは血縁関係はありません
★★★ 2008中国卓球クラブ超級リーグ・男子最終順位 ★★★

1. 上海冠生園
2. 浙商銀行
3. 寧波北侖海天
4. 魯能中超電纜
5. 四川全興
6. 江蘇江南電纜
7. 錦州銀行
8. 八一工商銀行
9. 海寧皮革城鵬翔

★最佳運動員(男子MVPプレーヤー)
馬龍(寧波北侖海天)

 2008中国卓球クラブ超級リーグは、12月20日に全日程を終了。5~6位、7~9位の順位決定リーグ戦も無事終了し、順位が以上のように確定した。今季は昨シーズンより1チーム少ない9チームで行われた男子は、最下位の海寧皮革城鵬翔が甲Aリーグとの入れ替え戦に回ることになった。また、12月26日には超級リーグの総括会議が開催され、20勝2敗の好成績を収めた馬龍が最佳運動員(MVP)に選出された。
 優勝した上海冠生園は賞金32万元(約416万円)を獲得。以下、2位の浙商銀行に22万元(約286万円)、3位の寧波北侖海天に15万元(約195万円)、4位の魯能中超電纜に9万元(約117万円)が贈られた。

 全体の成績を見てみると、今シーズン3季ぶりに超級リーグに昇格した上海冠生園の優勝は、やはり大きなサプライズ。助っ人の高礼澤がポイントゲッターとして機能したことで、第2ステージでは王励勤をダブルスに起用する必勝パターンで勝ち進んだ。馬龍に4連敗するなど、やや力に衰えの見える王励勤も決勝の2試合では単複2点ずつを叩き出し、エースの意地を見せた。
 優勝候補と見られた2位の浙商銀行は、水谷隼(スヴェンソン・明治大)が単複で貴重な働きを見せ、苦戦となった第1ステージを乗り切って決勝に駒を進めたが、最後はエース馬琳が息切れの感あり。3位の寧波北侖海天の馬龍は、馬琳と徐克に敗れた2敗のみでシーズンを終え、来季からは馬琳に代わって「馬龍を得た者が天下を得る」となりそうな勢いだ。4位の魯能中超電纜は短期決戦となった今シーズンの流れをうまくとらえ、逆に5位の四川全興は序盤で好スタートを切りながら、一度崩れたチーム状態を立て直すことができなかった。

 一方の下位争いは、第1ステージで1勝7敗と最下位だった海寧皮革城鵬翔が、第2ステージでも錦州銀行と八一工商銀行に2連敗を喫し、やはり最下位の9位で入れ替え戦へ(9チームのため、自動入れ替えのチームはなし)。今季はドラフトで420万元(約5880万円)で獲得したエース李平がまったくの期待外れ。第2ステージでようやく復調の兆しを見せたが、シングルス通算3勝10敗では、マスコミが命名した「420万元先生」の名が泣くというもの。8位の八一工商銀行は、やはり王皓のワンマンチームという前評判を覆すことができず。06年世界ジュニア2位の徐克が奮闘したが、2-3という敗戦スコアを連発しての低空飛行となった。

★男子シングルス・10勝到達プレーヤー
1. 馬龍(寧波北侖海天/20勝2敗)
2. 王皓(八一工商銀行/16勝4敗)
3. 王励勤(上海冠生園/13勝6敗)
4. 雷振華(錦州銀行/13勝7敗)
5. 馬琳(浙商銀行/13勝7敗)
6. 張継科(魯能中超電纜/13勝9敗)
7. 陳杞(江蘇江南電纜/10勝5敗)

Photo上:シングルス20勝2敗の驚異的な成績を残した馬龍
Photo中:王励勤はシングルス13勝6敗ながら、ダブルスで貴重な働き
Photo下:高額年棒のプレッシャーに負けたか、成績が残せなかった李平
☆08中国卓球クラブ超級リーグ・女子
●決勝第1戦
[遼寧鞍鋼 3-1 魯能・路安集団]
 唐イェ序 -5、-8、7、-3 馮天薇○
○郭躍 -9、10、12、7 李暁霞
○唐イェ序/常晨晨 9、2、3 李暁霞/彭陸洋
○郭躍 5、4、6 馮天薇

●決勝第2戦
[魯能・路安集団 3-2 遼寧鞍鋼]
 馮天薇 8、-5、-9、-9 郭躍○
○李暁霞 8、-11、7、1 唐イェ序
 李楠/彭陸洋 -6、-8、-8 唐イェ序/常晨晨○
○李暁霞 -7、11、-10、7、6 郭躍
○彭陸洋 8、3、-5、-11、8 常晨晨

●決勝第3戦
[魯能・路安集団 3-0 遼寧鞍鋼]
○李暁霞 6、4、-5、5 郭躍
○馮天薇 6、10、12 唐イェ序
○李暁霞/彭陸洋 -8、-4、10、8、7 唐イェ序/常晨晨

 2008中国卓球クラブ超級リーグ、女子優勝は魯能・路安集団。05年のシーズン以来、3年ぶり2回目の優勝を決めた。
 魯能・路安集団のホームである山東大学体育館で行われた第1戦は、トップで唐イェ序が「唐イェ序キラー」である馮天薇につかまり、先制点を奪われた遼寧鞍鋼だが、2番でエース郭躍が李暁霞を3-1で破る。この勝利で試合の流れは遼寧鞍鋼に傾き、遼寧鞍鋼が3番ダブルス、4番シングルスにストレートで勝利。魯能・路安集団も1-1となったところで、ダブルスに李暁霞を起用する思い切ったオーダーを組んだが、流れを食い止めることはできなかった。

 第2戦は遼寧鞍鋼のホームである鞍山市鞍鋼体育館での開催。郭躍のみならず、アウェーである李暁霞にとっても、故郷に錦を飾る一戦となった。観客の熱狂的な声援を前に、この両者が前半のシングルスで1点ずつ奪い、1-1で迎えたダブルスで遼寧鞍鋼の唐イェ序/常晨晨が李楠/彭陸洋を一蹴。11年ぶりの優勝に大きく前進する。
 そして4番で、再び郭躍と李暁霞のエース対決が実現。第1ゲームは郭躍が出足からリードして奪うが、第2ゲームは李暁霞8-3のリード、第3ゲームは郭躍6-2のリードから、ともにデュースに追いつかれるなど、どちらも試合の流れを掴み切れない展開。郭躍が第3ゲームを取って「優勝まであと1ゲーム」に迫るが、ここから開き直った李暁霞が逆転勝利。遼寧鞍鋼はラストでも、常晨晨が第4ゲームで3度のマッチポイントを奪われながらしのぎ、第5ゲームの出足で3-0とリードするなど、優勝への執念を見せたが、最後に力尽きた。

 運命の第3戦は、第2戦と同じく鞍山市鞍鋼体育館で行われた。トップは三たび郭躍と李暁霞の対戦。ラブオールの宣告とともにスタートダッシュをかけた李暁霞に対し、両親が観戦に訪れた郭躍はなかなか調子が上がらず。郭躍は李暁霞のミドルからフォアに曲がってくるサービスをうまくレシーブできず、李暁霞の3球目攻撃を浴びる。魯能・路安集団が大きな大きな先制点を挙げる。
 第2戦で優勝まであと一歩と迫った遼寧鞍鋼。それだけにこの第3戦では、気持ちの切り替えが難しかったのか。2番・唐イェ序は競り合いの中でミスが多く、馮天薇に0-3で敗退。3番ダブルスでも、第1戦ではストレートで完勝していた唐イェ序/常晨晨ペアが、李暁霞/彭陸洋ペアにゲームオールで敗れ、ホームでまさかのストレート負け。11年ぶりの優勝は夢と消え、超級リーグでは3度目の準優勝となった。

 両ハンドの重いドライブでラリー戦に絶対的な強さを発揮する李暁霞と、強力な3球目攻撃や台上強打の切れ味で勝負する郭躍。ダブルスでは絶妙のコンビネーションを発揮する親友、そしてシングルスでは永遠のライバルである両者の対戦が、今回の決勝の明暗を大きく分けた。これからも世界選手権や五輪の舞台で、ふたりは何度となく火花を散らすことになるだろう。

Photo上:エースの重責を見事に果たした李暁霞
Photo下:王楠が抜けた穴を埋め、エースとしてチームを引っ張った郭躍だったが…
★2008中国卓球クラブ超級リーグ
●男子決勝第1戦
[上海冠生園 3-0 浙商銀行]
○王励勤 8、9、8 馬琳
○高礼澤 -7、8、-4、6、8 ヤン・ツー
○王励勤/許シン 10、7、4 張超/ヤン・ツー

●男子決勝第2戦
[上海冠生園 3-1 浙商銀行]
 高礼澤 -3、-3、6、-6 馬琳○
○王励勤 6、6、4 水谷
○王励勤/許シン 8、4、6 馬琳/張超
○高礼澤 -6、7、5、8 水谷

 超級リーグ男子決勝は、上海冠生園が浙商銀行に2連勝。96年シーズン(当時は中国クラブリーグ)で優勝した上海大衆以来、12年ぶりの優勝を飾った。超級リーグでは初優勝で、ここ2年ほどあまり明るい話題がなかったエースの王励勤にとって、久々に嬉しいタイトル獲得となった。

 浙商銀行の水谷隼は第1戦を欠場。欠場の理由は現時点では定かでないが、浙商銀行はピンチヒッターとして登場したヤン・ツー(シンガポール)が単複で2失点。トップに出場した馬琳が王励勤にストレート負けし、そのムードを変えられないまま0-3で浙商銀行に敗れた。
 試合のスコアに関係なく、3試合で先に2勝を挙げたチームが勝利となるプレーオフ決勝。第1戦の完敗ムードをひきずることなく、第2戦に臨みたい浙商銀行、ホームで一気に優勝を決めたい上海冠生園。上海外国語大体育館で、決勝第2戦が幕を開ける。

 トップでエース馬琳が高礼澤との左右のペンドラ対決を制し、先制点を挙げた浙商銀行。2番でついに水谷隼が登場するが、王励勤の積極的な連続ドライブ攻撃の前に、序盤から大きくリードされる展開。試合の主導権を全く譲らなかった王励勤が水谷を一蹴し、試合は1-1のタイとなる。
 結果的にこの試合の勝敗を分けたのは、3番のダブルスだった。再び王励勤/許シンのペアを起用した上海冠生園に対し、浙商銀行は馬琳/張超ペアを今季初めて起用するという賭けに出る。ともに広東省チームに所属し、ダブルスでも05年全中国運動会2位という実績を持つ強豪ペアだ。しかし、11月の全中国運動会を制し、全中国運動会でも尻上がりに調子が良くなっていた王励勤/許シンとの差は歴然。ストレートで王励勤/許シンが勝利した時点で、試合の大勢は決したか。4番シングルスで高礼澤が水谷を破った瞬間、上海冠生園の選手たちはフェンスを飛び越えてコートに殺到し、歓喜を爆発させた。かつては「世界チャンピオンの揺籃」と言われた名門・上海市チーム、ついに復活の兆しが見えたか。

 浙商銀行の水谷隼は、初参戦となった08年の超級リーグをシングルス3勝7敗、ダブルス5勝3敗という成績で終えた。シングルスで対戦した王皓、王励勤、馬龍、張継科、邱貽可という顔ぶれを見れば、シングルスでの成績も健闘と言えそうだが、高礼澤に2敗を喫したのが惜しまれる。しかし、張超とのダブルスではチームの得点源となり、チームの決勝進出に貢献した。

Photo上:国際大会で勝てない王励勤、久々に嬉しいニュースとなった
Photo下:決勝第2戦の4番で水谷を下し、上海冠生園の優勝を決めた高礼澤
 2008年もいよいよ年の瀬。中国が国家的事業と位置づけた北京五輪も、終わってしまえばずいぶん昔の出来事のようだ。
 北京五輪で団体・シングルスの2冠を獲得した馬琳。「無冠の帝王」が彼の運命なのかと思われたが、五輪での金メダル獲得で、今度は09年世界選手権横浜大会で「大満貫(五輪・世界選手権・ワールドカップで優勝すること)」を目指すことになった。若手の馬龍が急成長を見せているが、馬琳にも十分に優勝のチャンスはありそうだ。

 馬琳にとって記念すべき1年となった2008年の締めくくりに、卓球王国秘蔵の(?)馬琳の写真をご紹介。超級リーグ男女決勝の模様も、続けてリポートします…。

 1枚目は07年世界選手権ザグレブ大会のもの。キャプションを付けるとしたら「ウキャ?」(失礼)。練習中にミスをして頭を掻いているだけだが…。

 2枚目は北京五輪・男子団体準決勝より、舌がマリンブルーに染まってしまった馬琳。ゲーム間に青いスポーツドリンクを飲んだせいなのだが、舌に色がつくドリンクとは少々不気味。駄菓子屋で怒られた腕白坊主のようだ。

 そして3枚目が極め付き。08年世界選手権広州大会・準決勝の李静戦でのひとコマ。クリックすると拡大されるので、審判台の近くに注目。なんとシューズのみのご出演だ。大きく回り込んだあとに後ろに体勢を崩したところらしいのだが…なんともミステリアスな一枚。
 89年世界選手権優勝、92・96年五輪ダブルス金メダリストで、国家女子1軍チームのコーチを担当していた喬紅(チャオ・ホン)が、広東省卓球運動管理センター主任に就任、同時に広東省卓球チームの総監督に就任することになった。

 喬紅は1968年11月21日生まれ、湖北省武漢市出身。上で述べた主要なタイトルをはじめ、世界選手権・五輪で計7個のタイトルを獲得。回転量が多く、安定感バツグンの両ハンドドライブを武器に活躍したが、ダブルスで金メダルを獲得した96年アトランタ五輪を最後に国家チームを引退し、日本リーグの松下電器でプレーした。
 2001年に中国に戻り、広東省広州市の華南師範大学に入学したが、当時国家チームの総監督だった蔡振華から、急きょ国家チームへ招集される。2002年のアジア競技大会団体決勝で2敗を喫し、スランプに陥っていた王楠が、国家チームの首脳陣に対し、自らの担当コーチとして喬紅をチームに迎えるよう求めたのだ。その後、王楠は03年パリ大会で3冠王を獲得して見事復活を果たした。喬紅はその後、04年に国家女子チーム監督として選考会に出馬しているが、施之皓との選考レースに敗れ、北京五輪終了とともにコーチとしての任期を終えていた。

 喬紅が監督となる広東省チームで、最も有名だった選手と言えば85・87年世界チャンピオンの江加良。超級リーグでは男子チーム(広東全球通)が03-04年シーズンで優勝、女子チームが05年シーズン2位になるなど、数年前までは活躍が目立っていたが、08年シーズンは男子チームは甲Aリーグに低迷し、女子チームも第1ステージ7位と不調だった。また、現在の広東省チームの主力である馬琳、張超、劉詩ウェンらはいずれも遼寧省の出身。かなり若い段階で広東省に移籍しているため、広東省に選手の育成力がないとは言えないが、有望な若手がなかなか出てこないのも確かだ。
 温厚で謙虚な性格で、現役時代から人望が厚かった喬紅。これから、広東省チームでどのように手腕を発揮していくのか、要注目だ。

Photo:北京五輪で、中国女子チームに声援を送る喬紅
 11月25~26日に江蘇省・張家港市で行われた「国家チーム監督・コーチ選考会」を受け、今月8日、国家男女チームのコーチングスタッフが発表された。
 最大の関心事となっていたのは、現監督の施之皓と、新たに監督に立候補した孔令輝の一騎打ちとなった女子チーム監督の人事。マスコミや卓球ファンの間では、孔令輝の監督就任を後押しする声も多かったが、結局施之皓監督の留任が決定。他に立候補者がおらず、留任した男子チームの劉国梁監督とともに、新たな4年間へのスタートを切った

 異例とも思えるほど、長い時間をかけて行われた女子チームの監督選考。施之皓の監督留任のひとつの要因となったのが、選考会の際に行われた投票だった。これは直接人選に影響するものではないが、選考会の最後に国家チームや国家体育総局・卓球バドミントン管理センターの首脳陣、全国の省・市チームの監督など、約80名によって行われ、施之皓が得票数で孔令輝に大差をつけた。
 「マスコミなどでは孔令輝の前評判が高かった。彼は優秀な選手であり、指導する選手たちも順調な成長を見せている。しかし、やはり指導者としての総合的な能力、そして指導に対する責任感という点で、各チームの監督たちの間では施之皓に投票する者が多かったようだ」(卓球バドミントン管理センター・劉風岩副主任)。施之皓が監督を落選した場合、卓球・バドミントン管理センターに前職に見合うだけのポストが空いていないことも、施之皓が票を集める理由になったようだ。

 結局、これまでどおり国家女子1軍チームで郭躍・劉詩ウェン・姚彦・木子の指導に当たることになった孔令輝。監督就任は、やはり時期尚早ではなかっただろうか。男子チームの劉国梁監督も、現役を引退して1年あまりで監督に就任したが、当時は蔡振華が卓球バドミントン管理センターの副主任に昇進し、男子チームの監督は空位のような状態だった。施之皓が2年間監督を務め、孔令輝に引き継ぐという折衷案もあったようだが、結局は孔令輝にはもう少し経験を積ませるという結論に達したようだ。

 両監督とも、任期は2012年ロンドン五輪終了まで。しかし、毎年全中国選手権後に行われる信任投票で50%以上の得票がなければ、解任の可能性もある。「国家チームのコーチは『鉄飯碗(ティエファンワン)』ではない」とは蔡振華の言葉。『鉄飯碗』=落としても割れない鉄の茶碗というのは、解雇され、食い扶持を失う心配がないということ。かつての中国の国営企業などの雇用待遇を指した言葉だ。国家チームのコーチには、常に結果を出していく姿勢が求められている。

Photo上:海外でのコーチ経験も豊富な施之皓、孔令輝との一騎打ちを制す
Photo下:男子監督の重責をよく果たしている劉国梁
 中国は1979年から、国家体育総局の前身である国家体育運動委員会によって、その年に最も活躍したスポーツ選手10人を「全国十佳運動員(十大優秀選手)」として表彰してきた。この「十佳運動員」に選ばれるのは、「一流選手の中の一流選手」というお墨付きを頂くことであり、中国のスポーツ選手にとっては非常な名誉。毎年、男子選手と女子選手の割合は必ずしも5対5ではなく、年によっては7対3だったり、4対6だったりする。
 卓球界からは、第1回の「十佳運動員」に79年世界選手権ピョンヤン大会で優勝した葛新愛が選ばれて以来、毎年のように選手が選ばれてきた。2007年までの29回のうち、卓球選手が選出されなかった年は1984年、1986年、2006年の3回しかない。トウ亜萍が7回、王楠が6回、郭躍華が4回選ばれるなど、やはり中国のスポーツ界では卓球は花形なのだ。

 2004年までは優秀な選手を10人選ぶだけだったこの「全国十佳運動員」、2005年から10部門での優秀選手を選出する「中国十佳ローレウス冠軍奨」として生まれ変わった。ローレウスというのは、スポーツ振興およびスポーツを通じた慈善活動を行う非営利団体「ローレウス」のこと。メルセデス・ベンツで有名なダイムラー・クライスラー(現ダイムラー)と、カルティエやダンヒルなどを傘下に置くスイスのリシュモン・グループによって設立された。世界中のスポーツ・ジャーナリストと、往年のスター選手で構成されたローレウス・アカデミー会員の投票によって決定する「ローレウス世界スポーツ賞(The Laureus World Sports Awards/2000年~)」は“スポーツ界のアカデミー賞”とまで言われており、「中国十大ローレウス冠軍奨」はその中国版ということになる。

 さて、かなり古いニュースになってしまって恐縮なのだが、今年も11月21日に、この「中国十佳ローレウス冠軍奨」の授賞式典が北京で開催された。最優秀男子/女子選手、最優秀チーム賞、最優秀コーチ賞、最優秀男子/女子新人賞、最優秀障害者選手賞、最優秀ペア賞などの10部門で選出される「中国十佳ローレウス冠軍奨」。100万票を超える投票があったネット投票が11月19日に終了し、このネット投票の上位3名を「中国十佳ローレウス冠軍委員会」のメンバーが審査して、各部門の最優秀賞を決定した。ちなみに冠軍委員会の委員長は、ローレウス・アカデミーの会員でもあるトウ亜萍だ。
 各部門でのネット投票による、卓球選手の得票は以下のとおり。(%は全体での得票率)

★最優秀男子選手賞  3位:馬琳(16.43%)/8位:王皓(1.23%)/12位:王励勤(0.21%)
★最優秀女子選手賞  1位:張怡寧(24.34%)/7位:郭躍(5.43%)
★最優秀チーム賞   1位:中国卓球チーム(45.95%)
★最優秀コーチ賞   2位:劉国梁(17.96%)/3位:施之皓(15.58%)
★最優秀障害者選手賞 3位:葛楊(13.89%/北京パラリンピック男子立位9-10優勝)

 ネット投票の結果が覆ることはほとんどなく、この順位のまま、張怡寧が最優秀女子選手賞、中国卓球チームが最優秀チーム賞に輝いた。…ちなみに筆者も張怡寧に一票を投じている。授賞式典では普段のクールな表情とは一転、満面の笑顔を見せた張怡寧。2位の郭晶晶(水泳・板飛込み)に大差を付け、2005年に続く2回目の最優秀賞獲得。人気でも中国でトップクラスであることを印象づけた。
 男子で北京五輪2冠の馬琳は惜しくも3位。男子体操チームのエースである楊威が最優秀男子選手賞となった。惜しまれるのは最優秀コーチ賞で、授賞したのは中国体操チームの黄玉斌総監督、得票率は24.83%だった。相手は国家チームの総監督、卓球チームも2位と3位の男女監督ふたりの票を足せば、確実に追い抜けたのだが…。

Photo上:張怡寧、その人気を改めて見せつけた
Photo下:馬琳、1位との差は僅差だが…