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中国リポート

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 男子は浙江省寧波市の北侖訓練基地、女子は河北省正定市の国家卓球訓練基地で集合訓練を行っている国家卓球チーム。女子は4月22日、男子は4月25日にエキシビションマッチを開催している。
 女子は今回が集合訓練に入って3回目のエキシビションマッチ。前回は劉詩ウェン・郭躍・郭炎の「中国1」チームが、王シュアン・楊揚・顧玉ティンの仮想・日本チームと対戦し、李暁霞・丁寧・武楊の「中国2」チームが、馮亜蘭・曹麗思・饒静文の仮想・シンガポールチームと対戦した。今回は「中国1」vsシンガポール、「中国2」vs日本が対戦。なんと中国1、中国2の両チームとも、1-3で敗れている。中国1vsシンガポールの結果は以下のとおり。

〈中国1 1-3 仮想・シンガポール〉
○劉詩ウェン 3-0 楊揚
 郭炎 0-3 馮亜蘭○
 郭躍 2-3 曹麗思○
 郭炎 1-3 楊揚○

 なお、なぜか今回は日本チームの楊揚とシンガポールチームの饒静文が入れ替わったようだ。中国1は2点起用された郭炎が2失点。3番の郭躍も曹麗思に先行されながらゲームオールまで追いついたが、最終ゲームは一気に離されて4-11で完敗した。前回(2回目)のエキシビションマッチでは、劉詩ウェンが楊揚にストレートで敗れるなど、毎回誰かしらに問題が現れるような状況。試合が終わった時には昼の12時を回っていたが、施之皓監督は選手たちを練習場の近くのトラック(陸上競技場)へ行かせ、長距離走をやらせたという。

 一方の男子チームは、4月25日に馬琳・王皓・王励勤の「オリンピック金メダリストチーム」が、馬龍・許シン・張継科・ハオ帥の「世界チャンピオン級チーム」の挑戦を受けた。しかも、このエキシビションマッチに開催に際して、国家男子チームは各省の総監督などで構成された顧問団を北侖市に招聘。張雷(北京市)、馬文革(天津市)、呂林(浙江省)、喬紅(広東省)、王涛(解放軍)などそうそうたるメンバーがトレーニングやエキシビションマッチを視察し、コーチ陣との意見交換やミーティングを行った(顧問団は4月28~29日に女子チームにも招聘)。韓国やドイツ、日本といった主要なライバルチームの選手分析も、夜間ミーティングで毎日のように行われており、モスクワ大会への準備に余念はない。
 男子チームのエキシビションマッチの結果は以下のとおりだ。 

[世界チャンピオン級チーム 3-1 五輪金メダリストチーム]
 許シン -9、-3、-6 馬琳○
○ハオ帥 5、-9、6、2 王励勤
○張継科 -8、10、-5、7、5 陳杞
○馬龍 11、10、8 王皓

 両チームとも激しいガッツのぶつかり合いとなったが、好調のハオ帥が2番で王励勤を破り、そこから世界チャンピオン級チームが3点連取。若手が勢いの差を見せつける結果となった。5月11日に終了する男子チームの集合訓練、モスクワ大会代表メンバーの最終発表は、5月15日前後と見られているが…?

Photo上:郭躍を下した曹麗思は、08年世界ジュニア4冠王
Photo下:国家男子チームではバイプレーヤー的な存在だが、「直通莫斯科」、そして今回のエキシビションマッチでも意地を見せたハオ帥
 昨年10月から「Twitter(ツイッター)」を始めている卓球王国(http://twitter.com/worldtt)。更新はぼちぼちですが、重要度はともかくとして、意外にレアな情報も流れていたりします。
 今月、そのツイッターでも話題になっていたのが、08年北京五輪金メダリストの馬琳が始めた「微博(ウェイボー)」。「微博」は正確には「微博客」、「微(マイクロ)」と「博客(ブログ/中国語での発音はボークー)」で「マイクロブログ」。文字どおり、ブログの文字数を制限した中国版ツイッターで、中国最大手のポータルサイトである「新浪」をはじめ、「騰訊」や「網易」もこの「微博」のサービスをスタートさせている。芸能人や有名人の「博客」を独占していた「新浪」が「微博」でも他を大きくリードしており、馬琳が書いているのも「新浪微博」だ。
 馬琳の「微博」には火鍋や河豚(フグ)のスープ(!)など、夕食のメニューの写真もしばしば登場。まだスタートして一カ月くらいだが、フォロワーの数は66447(4月23日現在)と、なかなかの人気を集めているようだ。その内容を少しだけ紹介してみると…。

◎3月22日20:49 「今食事が終わったところ。今日は練習で膝を傷めてしまったけど、それほどひどくはない。みんな安心して、調整はうまくいってます」
◎3月23日18:32 「チームメイトの馬龍がドイツオープンのシングルスで優勝した。おめでとう!」
◎4月4日18:27 「今日は劉国正の結婚式に出席。愛しあうふたりがついに結ばれたことを、心から祝福します!」

 4月2日、「直通莫斯科」第3ステージの初戦でハオ帥に敗れた後には、「人生、一定是五味倶全的人生」とその心情を吐露している。「人生、酸いも甘いも、すべて味わうのが人生…」という感じだろうか。馬琳の競技人生をよく現している言葉かもしれない。ファンからの励ましの声が多く寄せられ、4時間後には「ひとつだけ確かなことは、これからもプレーを続けていきたいということ。僕は卓球というスポーツを心から愛しているから、そしてこの情熱と皆さんからの声援によって、ずっとプレーを続けてこられたから」と語っている。
 ちなみに4月9日で「微博」は一時中断。「明日から集合訓練が始まる。ようやく練習に集中できる環境だ、いつも集合訓練では携帯やパソコンは取り上げられるから、外の世界との連絡の手段はなくなってしまう」と書かれており、それ以降更新はされていない。

 ひとつだけ気になるのは、やはり「本当に馬琳が書いてるの?」という点。これまでにも張怡寧のニセモノがブログを立ち上げた例もあるし、馬琳の人気を当て込んで、ゴーストライターが立てられた可能性もゼロではない。馬琳は現在集合訓練中だが、国家チームと行動をともにしながら取材を続けている「ピンパン世界」(中国)の宋斐さんに聞いてみたところ、「確かに馬琳本人が書いている」とのこと。他に国家チームで「微博」をやっている選手がいたら紹介してくれるそうなので、ご期待ください…。

↓馬琳の「微博」はこちらです
http://t.sina.com.cn/1010956892

Photo:世界選手権団体戦モスクワ大会の代表になれるかどうか、その当落線上にいる馬琳。ITTFのホームページに発表された現時点でのメンバーでは、「直通莫斯科」を通過した3人(許シン・張継科・馬龍)に加え、王皓と王励勤がリストに入っているが…?
 現在、河北省の正定国家卓球訓練基地で集合訓練を行っている国家女子チーム。4月13日と19日に、世界選手権団体戦モスクワ大会を想定した部内対抗戦を実施している。
 まず、4月13日の対抗戦は、すでにモスクワ大会の代表権を獲得している郭躍・劉詩ウェン・郭炎と、代表権を獲得していない李暁霞・丁寧・武楊が対戦。「代表確定チームvs.代表候補チーム」の戦いとなったが、結果は以下のとおり。

[代表候補チーム 3-2 代表確定チーム]
 李暁霞 2-3 劉詩ウェン○
○丁寧 3-0 郭躍
○武楊 3-0 郭炎
 丁寧 2-3 劉詩ウェン○
○李暁霞 3-0 郭躍

 エース郭躍が全く調子が上がらないまま、まさかの2失点。ラストでは風邪が治りきらない李暁霞からも、1ゲームすら奪うことができなかった。「直通莫斯科」第3ステージで代表権を獲得したばかりの郭炎も、ベンチに施之皓・国家女子チーム監督が入りながら、武楊の鉄壁のカットの前になす術(すべ)なし。正牌隊(代表確定チーム)は劉詩ウェンの孤軍奮闘という内容で、2-3で敗れている。
 続けて4月19日、一昨日行われたばかりの部内対抗戦は、国家女子チームのうち12名の選手が参加。「中国」「日本」「シンガポール」の3チームに分かれて試合を行った。中国チームは劉詩ウェン、郭躍、郭炎、李暁霞、丁寧、武楊の6名だが、残る2チームのメンバー編成がなかなか興味深いので、ご紹介したい。

◇仮想・日本女子チーム
王シュアン(王+旋) 右シェークF裏ソフト/B表ソフト攻守型
楊揚         右シェーク両面裏ソフトドライブ型
顧玉ティン(女+亭) 左シェーク両面裏ソフトドライブ型

◇仮想・シンガポール女子チーム
馮亜蘭        右シェーク両面裏ソフトドライブ型
曹麗思        右シェークF表ソフト/B裏ソフトドライブ型
饒静文        右シェークF裏ソフト/B表ソフトドライブ型

 見事なまでに、各チームの主力3選手に対応するメンバーを揃えている。たとえば仮想・日本女子チームは、「仮想・福原愛選手」の王シュアンは言わずもがな、右シェークで安定した両ハンドドライブを武器とする楊揚は平野早矢香選手、サウスポーから威力ある強打を繰り出す顧玉ティンは石川佳純選手を想定。楊揚の替わりに李暁丹を入れても良い気がするが、プレースタイルは確かに良く似ている。仮想・シンガポール女子チームも、馮亜蘭は同じ馮さんの馮天薇、フォア表ソフトの曹麗思はリ・ジャウェイ、パンチのある両ハンド異質速攻の饒静文は王越古。…いちいち解説するまでもないかもしれないが、これだけのレベルの選手を揃えられる国家女子チームの層の厚さには改めて驚かされる。ちなみに、仮想チームの選手たちは、さすがに各国の代表ウェアではなく、中国代表のウェアを着用している。

 まだ試合の結果は詳しく分かっていないが、中国(郭躍・郭炎・劉詩ウェン)と仮想・日本女子の対戦は、3-2で中国が辛勝。劉詩ウェンが楊揚にストレートで敗れ、タイムアウト時に思わず涙。郭躍が慰め、励ましたことが大きく報道されている。中国(李暁霞・丁寧・武楊)と仮想・シンガポール女子は2-2の引き分けとなったようだ。5月13日まで行われる国家女子チームの集合訓練では、計6回の部内対抗戦が行われる。

Photo上:4月13日の対抗戦で、郭炎にストレート勝ちした武楊(09世界ジュニアより)
Photo中:楊揚は4月20日の対抗戦で、劉詩ウェンを寄せつけず(09全中国運動会より)
Photo下:ルックスは似ていませんが…、仮想・石川佳純の顧玉ティン(09世界ジュニアより)
 現在、世界の女子卓球界では、パワフルなフォアドライブを得意とするふたりの「馮」さんが活躍している。ひとりは世界ランキングを2位まで上げている馮天薇(シンガポール)、もうひとりは3月のドイツオープンで予選リーグから勝ち上がり、優勝を飾った馮亜蘭だ。

 1986年8月31日生まれ、現在23歳の馮天薇は、2010年4月発表の世界ランキングで4位から2位にランクアップ。リ・ジャウェイの3位(2005年10月)を上回り、シンガポールの卓球選手の史上最高位を記録した。中国選手以外で世界ランキングを2位まで上げたのも、02年7月発表のランキングで2位になったボロス(クロアチア)以来だ。彼女をシンガポールへ連れて来た劉国棟(元シンガポール女子チーム監督)は、シンガポール卓球協会との確執によってインドネシアへ去ったが、後任監督として周樹森(元北京市女子チーム監督)が就任。ジン・ジュンホン女子チームコーチとともに、2012年ロンドン五輪を目指す強化体制が整ってきている。

 そして、1990年1月25日生まれの馮亜蘭は、言わずとしれた2006年世界ジュニア選手権の女子チャンピオン。3月のドイツオープンでは、すでに世界選手権団体戦モスクワ大会の代表に決まっていた劉詩ウェンや郭躍、急性虫垂炎の手術を受けた李暁霞が欠場する中で代表に抜擢され、そのチャンスを見事に活かした。なんとプロツアーは初出場・初優勝。中国の女子選手でも、プロツアーでのデビュー戦を優勝で飾ったのは張怡寧、曹臻ほか4人しかない。このドイツオープンでの優勝により、世界ランキングでも一気に13位にランクインした。
 馮亜蘭の出身は湖北省の省都・武漢市。88年ソウル五輪金メダリストの陳静や、89年世界選手権女子チャンピオンの喬紅の出身地であることは、これまでにもたびたび述べているが、男子選手では先日結婚した劉国正の出身地でもある。このふたりのプレーは実によく似ており、かつて国家女子2軍チームの閻森コーチも馮亜蘭を「女子選手の男性化の代表とも言える選手。彼女のプレーを見ていると、劉国正のリプレイを見ているかのようだ」と評している。レシーブ、3球目攻撃のあとにスーッと中陣に下がり、連続フォアドライブでガンガン攻める。全中国運動会で范瑛のカットを完璧に打ち砕いたパワードライブとフットワークは素晴らしかったが、前陣での厳しい攻めと守備力を身につければ、面白い存在になる。

 ちなみに馮天薇と馮亜蘭、中国語での読みは「フォン・ティエンウェイ(Feng Tianwei/馮天薇)」と「フォン・ヤァラン(Feng Yalan/馮亜蘭)」だが、日本語ではどういう読みになるのか。筆者は不勉強にも「ひょうてんび」「ひょうあらん」と呼んでいたが、正しくは「ふうてんび」「ふうあらん」。中国語の「馮」には「ping」と「feng」のふたつの発音があり、「ping」に対応する日本語読みが「ひょう」、そして姓の「feng」に対応する日本語読みは「ふう」になるそうだ…。

Photo上:日本リーグのサンリツでもプレーしていた馮天薇
Photo下:郭躍、丁寧に続いて「おてんば娘」「ボーイッシュな女の子」を意味する「假小子」という冠名がついた馮亜蘭。中国女子はルックスも男性化?
 6月9日に開幕する「2010年中国卓球クラブ超級リーグ」に先立ち、6月2~7日に四川省成都市(Aブロック)と山東省煙台市(Bブロック)で開幕する「2010年中国卓球クラブ甲Aリーグ」。超級リーグのひとつ下のリーグであるこの甲Aリーグの競技規定が今シーズンから変更され、外国籍選手だけで構成されたクラブでも、登録が可能となった。 また、中国のクラブチームへの外国籍選手の登録も人数制限がなくなっている(出場は一試合で最大2名まで)。

 この規定変更により、今シーズンの甲Aリーグでは、すでに女子で2チームが海外から参戦することが発表されている。日本から参戦するミキハウスと、シンガポール女子チームだ。
 ミキハウスチームは昨シーズンも甲Aリーグに参戦した平野早矢香(河北冀中能源)、樋浦令子(黒龍江中超電纜銀河)、石川佳純(三起商行)が主なメンバー。昨シーズンの通算成績は平野が単28勝8敗/複0勝1敗、樋浦が単2勝1敗/複7勝8敗、石川が単19勝17敗/複1勝2敗だった。平野と石川は世界選手権団体戦モスクワ大会の閉幕(5月30日)後、すぐに甲Aリーグへ出場するタイトなスケジュールとなる。また、シンガポール女子チームは、北京市チームの一員として超級リーグでプレーするリ・ジャウェイを除く馮天薇、王越古、スン・ベイベイらのメンバーで甲Aリーグに参戦。世界ランキング2位の馮天薇が超級リーグの「外援(助っ人選手)」ではなく、甲Aリーグに出場するのは「意外」のひと言だが、甲Aリーグ女子には実力派の若手選手がひしめいている。馮天薇といえども気の抜けない戦いが続くだろう。

 なお、国家体育総局卓球・バドミントン管理センターの劉風岩主任によれば、ミキハウス、シンガポール女子チームとも試合への出場のみで、成績のつかないオープン参戦となる。甲Aリーグにはドイツ女子ナショナルチームのシャール、バーテル、ジルベライゼンらも参戦する意思を表明(実際に参戦するかどうかは未定)。昨シーズンも石賀浄(韓国)、キム・ジョン(北朝鮮)をはじめ、何人かの外国籍選手が参戦していた甲A女子リーグ、今シーズンはさらに多彩な顔ぶれで開幕を迎えることになりそうだ。
 ミキハウスチームは、甲Aリーグ女子第1ステージではBブロックに参戦し、Bブロック12チームによる総当たりのリーグ戦が開催される。4位までに入ったチームは第2ステージ(8月25~29日/於:重慶市)の優勝決定リーグ(全8チーム)に進み、5位以下のチームは順位決定リーグに回る。オープン参戦ではあるが、まずは第1ステージで4位以内を目指したい。純正・日本人チームで挑むミキハウスチームの活躍に期待だ。

Photo:昨シーズンは甲Aリーグでも順調に勝ち星を積み上げた平野早矢香
☆「直通莫斯科」女子第3ステージ
〈4.2~3/山東省・中国石油大学体育館〉
●準々決勝

曹臻 5、7、5、-10、-4、4 丁寧
王シュアン 8、8、10、9 李暁霞
郭炎 4-1 饒静文
常晨晨 4-3 姚彦
●準決勝
郭炎 11、6、-7、7、5 曹臻
常晨晨 8、4、6、-5、7 王シュアン(王+旋)
●決勝
郭炎 4、7、9、8 常晨晨

 女子「直通莫斯科」の第3ステージは、山東省東営市にある中国石油大学体育館で開催。中国第2位の規模を誇る巨大油田「勝利油田」を擁する東営市で、燃え上がる闘魂で勝利を掴んだのは、世界ランキング3位の郭炎だった。張怡寧の欠場、さらに郭躍と劉詩ウェンが代表権を手にしたことで、やや役者不足の感もあった第3ステージだが、きっちり勝ち抜くあたりはさすがだ。

 男子同様、この女子「直通莫斯科」でも波乱が起きたのは初戦だった。世界ランキング5位の丁寧、そして急性虫垂炎(盲腸)の手術から復帰した李暁霞が姿を消した。第2ステージ決勝で劉詩ウェンからゲームカウント3-1とリードを奪い、代表権獲得まであと一歩だった丁寧は、曹臻得意のバック表ソフトの連続強打に苦戦。ゲームカウント0-3から2-3まで挽回したが、第6ゲームは7-0と大量リードを許して敗れた。決して相性の悪い相手ではないが、勝利を焦る気持ちがプレーに出てしまったのか。一方、第1ステージ以来の出場となった李暁霞は、右シェークフォア裏・バック表異質攻守型の王シュアンに完敗。第3ゲーム、10-7のゲームポイントから王シュアンに5点連取され、落としたことが大きく響いた。トーナメントの上半分に丁寧と郭炎が固まり、「李暁霞、絶好の組み合わせ」と報道したマスコミすらいたが、王シュアンが「陪練(トレーナー)」選手の意地を見せた形だ。
 王皓を破った男子「直通莫斯科」の李平同様、波乱の立て役者となった王シュアン。コカコーラが大好きな黒龍江省ハルピン市出身の21歳。福原愛選手(ANA)の仮想(コピー)選手として有名だが、彼女のアイドルはトウ亜萍だそうだ。小柄だがフォアのパンチ力はかなりのもので、前陣でたたみかける両ハンド連打は迫力にあふれている。

 そして、女子「直通莫斯科」の最後の切符を獲得した郭炎。北京五輪代表の座を逃し、09年世界選手権横浜大会では後輩の劉詩ウェンに完敗してベスト16止まり。09年2月に行われた「2009年全国卓球工作会議」では、6人の重点強化選手(張怡寧・郭躍・李暁霞・劉詩ウェン・丁寧・姚彦)からも外れたことが報道された(中国リポート2009/03/11『国家女子隊、郭炎が重点選手から外れる』参照)。筆者も「残念ながら、遠からず国家チームを引退することになりそうだ」と書いてしまったが、張怡寧が長期休暇に入り、エース不在の「無核時代」と言われる国家女子チームで、再び存在感を示しつつある。第3ステージ決勝では、パワードライブだけでなく、巧みに緩急をつけるプレーで常晨晨のミスを誘って完勝。すでに27歳という年齢だが、もうひと花咲かせるか。
 国家女子チームは5月10日まで、河北省正定市の国家卓球訓練基地で34日間の集合訓練に入っている。残る2人の代表メンバーは、李暁霞・丁寧・范瑛(or武楊)から2名が選ばれる公算。対シンガポールを考えるとカット主戦型も一枚入れておきたい感じだが、李暁霞と丁寧の選出はほぼ確実な情勢だ。

Photo上:郭炎、27歳の春に咲く
Photo下:フォアのミート打ちはかなりの威力、王シュアン
★“華夏銀行杯”「直通莫斯科」男子第3ステージ
〈4.1~3/遼寧省・大連海事大学体育館〉
●準々決勝
馬龍 8、9、6 雷振華
ハオ帥 4、-5、8、-11、9 馬琳
陳杞 7、-5、7、-9、9 王励勤
李平 9、5、6 王皓
●準決勝
馬龍 -6、6、8、-9、7 ハオ帥
李平 11、-6、10、-10、5 陳杞
●決勝
馬龍 9、6、7 李平

 お伝えしたいリポートが山積している中国リポート。またまたご無沙汰を致しました。「直通莫斯科」男子第3ステージの結果からお伝えします…。

 第1ステージで許シン、第2ステージで張継科が優勝し、世界選手権団体戦モスクワ大会の切符を手にしていた男子「直通莫斯科」。第3ステージを制したのは現世界ランキング1位の馬龍。常に優勝候補筆頭に挙げられてきただけに、「遅れてきた馬龍」と言いたくなるが、当たりが楽になったことにも助けられて代表切符を手にした。その一方で、馬琳、王皓、王励勤という北京五輪代表の3名が揃って初戦敗退。実力で代表権を手にできる最後のチャンスを生かせなかった。「波乱に次ぐ波乱…」と言いたいところだが、過去2ステージの結果を見ていると、もう「波乱」という言葉はそぐわないかもしれない。

  第3ステージの最大の「黒馬(ダークホース)」となったのは、勝ち抜けた張継科との入れ替わりで出場した李平。09年世界選手権横浜大会の混合複チャンピオンが、初戦となる準々決勝で王皓、準決勝で陳杞を下し、あわや代表権獲得かという活躍を見せた。王皓戦では第1ゲーム4-0、9-2と一気にスタートダッシュ。李平10-3のゲームポイントから10-9まで追いすがったのが、王皓のせめてもの抵抗だった。第2ゲーム、第3ゲームは李平が中盤で一気にリードを広げ、ストレート勝ちを収めた。ドイツオープンで張継科をストレートで破って決勝まで進み、やや復調かと思われた王皓だが、完全復活にはまだ遠い。
 王励勤と馬琳はともにゲームオール9点という激戦で惜敗。王励勤は最終ゲーム9-9から陳杞の積極的なフォアドライブ連打に押し切られた。馬琳はハオ帥戦で最終ゲーム7-4とリードを奪ったが、5点連取を喫して7-9と逆転され、最後は生命線であるフォアの回り込み攻撃にミスが出て万事休す。試合後、王励勤は「もしモスクワ大会に出場できなかったとしても、ロンドン五輪出場は決して諦めない」とコメント、意気軒昂なところを見せたが、3ステージとも初戦敗退の馬琳は代表権獲得がやや苦しくなったか…?

 4月6日から浙江省寧波市で45日間の集合訓練に入っている国家男子チーム。劉国梁監督は「3選手(馬琳・王皓・王励勤)とも実力が落ちているわけではないが、精神的なプレッシャーがプレーを乱している。まず精神面の問題から解決していきたい。技術面の改善はそれからだ」とコメント。モスクワ大会代表の残る2名の代表メンバーは、集合訓練の後期に発表される予定だ。

Photo上:ようやく代表権を獲得した馬龍、モスクワ大会では主力選手としての活躍が期待される(写真は09年アジア選手権)
Photo下:高い身体能力と上品な顔立ちの李平。代表権獲得にはあと一歩届かず(写真は09年世界選手権)
 張継科と劉詩ウェンの交際報道に続き、春めいたニュースをひとつ。4月4日、現在は国家男子2軍チームのコーチを務めている劉国正が、北京市で結婚式を挙げた。2001年の世界選手権大阪大会・男子団体準決勝の韓国戦ラストで、金擇洙に7回のマッチポイントを奪われながら逆転勝ちし、「奇跡の男」と称賛された中国卓球界の英雄。当時はその人気ゆえに「嫁人要嫁劉国正(お嫁に行くなら劉国正)」とまで言われたが、9歳年下の花嫁さんはさすがに美人だった。

 お相手は北京市女子チームのメンバーで、今年20歳の芦ルー(王+路)さん。昨年9月の全中国運動会では張怡寧・郭炎・丁寧・朱虹とともに、女子団体優勝チームとして表彰台に上がっている。ヘアバンドで髪を止め、笑顔を絶やさないその容姿は、まさに「美しい玉」を意味する「ルー(王+路)」の名前そのもの。K編集長も全中国運動会のイチオシに挙げる美人プレーヤーだったのだ。もっとも、ボーイッシュな張怡寧や丁寧、男勝りの郭炎と並んでいたからかもしれないが…。結婚式に出席した北京市女子チームの徐志崇コーチ曰く「北京市女子チームで一番美人で、一番気だての良い子をつかまえたな!」(出典:『楚天都市報』)。

  ちなみに芦ルーさんは現在北京体育大学の3年生、劉国正とは大学の同窓生だ。プレーヤーとしてのキャリアは北京市で積んでいるが、出身は河北省保定市。卓球選手では73年世界チャンピオンのシ(希+β)恩庭をはじめ、斉宝香、王浩とそうそうたる顔ぶれを輩出している。07年に国家女子チームを引退した牛剣鋒や、水泳飛込み競技の女王と言われた郭晶晶も同市の出身で、保定は美人を多く生む地なのかもしれない。
 世界でもトップクラスの実力を誇りながら、その豪快なプレースタイルゆえに現役後半はケガに泣いた劉国正。05年12月の右膝蓋骨の骨折が、手術のミスなどもあり、結果的に引退を早めることになってしまった。愛嬌のある丸っこい体つきとガッツあふれるプレーが記憶に残るプレーヤーだが、良きパートナーを得て、指導者として大成することを祈りたい。

Photo上:今年3月に30歳になったばかりの劉国正。おめでとうございます!
Photo下:芦ルーさん、戦型は右ペンホルダードライブ型です
 今、中国女子で最も勢いがある選手といえば、1月発表の女子世界ランキングで1位に躍り出た劉詩ウェン。女子「直通莫斯科」第2ステージで優勝して初の世界団体代表入りを決め、地元・広州市で開催された第23回アジアカップ、第1回フォルクスワーゲンカップでも他を寄せつけぬ強さで2連勝。ランキング1位の座を着々と固めつつある。両ハンドドライブでグイグイ攻めまくるそのプレースタイル同様、まさに乗りに乗っている感じだ。

 そして劉詩ウェン、卓球のみならずプライベートでも中国のマスコミを騒がせている。先月末、アジアカップの開催とほぼ時を同じくして、アジアカップの女子チャンピオンである劉詩ウェンと、男子チャンピオンである張継科との“熱愛”が一斉に報道された。すでに大会の期間中や空港などで、仲睦まじい姿がたびたび目撃され、なかば「公然の秘密」となっていたようだ。
 張継科は1988年2月16日生まれの22歳、劉詩ウェンは1991年4月12日生まれでもうすぐ19歳。ともに将来を嘱望(しょくぼう)される国家チームのホープ同士、いかにもお似合いのカップリングではある。張継科が2003年、劉詩ウェンは1年遅れて2004年に国家2軍チームに入り、ほどなくして交際がスタートしたと伝えられている。両選手とも、否定するコメントは出していない。

 劉詩ウェンの担当コーチである孔令輝は、昨年9月の全中国運動会の前に次のように語っている。「国家チームの中でも、私の担当グループ(郭躍・劉詩ウェン・姚彦・木子)は他のグループに比べて平均年齢が若いが、知っている限りでも2人が交際中。20歳くらいの女の子が恋愛をするのはごく自然なことだ。もちろん、プレーに影響が出ないことが大前提になるけどね」(出典:『生活日報』)。一方、未来の国家女子チームのリーダーとして、劉詩ウェンに期待を寄せる施之皓監督は「詳しい事情は知らないが、まだ早すぎるんじゃないか」とコメント。「何歳くらいならば良いでしょうか?」という記者の質問には、22歳以降のほうが良いと思う。まだ精神的に未熟なうちの恋愛は、練習やプレーに影響が出るかもしれない」(出典:『金羊報』)と述べている。

 2004年には当時恋愛関係にあったとされる選手たちが、国家チームから省チームへ戻されるなど、現役選手に対しては「恋愛厳禁」「卓球を愛してチームメイトを愛さず」が原則だった国家チーム。しかし、昨年9月の王皓と彭陸洋の交際報道に際し、呉敬平コーチ(王皓の担当コーチ)が「別にニュースでも何でもない。ようやく報道されるなんて遅すぎるくらいだ」と述べているように、プレーに悪影響を及ぼさなければ、コーチ陣も恋愛を容認する姿勢を見せている。「選手の恋仲を引き裂いた」と報道されれば、国家チームのイメージにとってもマイナス。卓球界のベストカップルとして、イメージアップに貢献してもらうほうが得策かもしれない。

 Photo上:世界ランキング急上昇中の張継科は、公私ともに順調?
Photo下:王国編集部内にも一部に熱狂的なファンを持つ劉詩ウェン
 「2010年中国卓球クラブ超級リーグ・摘牌大会」で女子の選手入札リストに名を連ねたのは、わずかに3名。北京女子チームから放出された郭炎と、所属チームが超級リーグに参戦していない范瑛と姚彦だ。その落札結果は以下のとおりとなった。

★女子「特級甲等」 ※選手名の後ろの( )内は昨シーズンの所属チーム
郭炎(山西大土河華東理工)   →[1133万元(約1億5500万円)]→ 山西大土河華東理工
★女子「一級」
范瑛(江蘇中超電纜)      →[520万元(約7100万円)]→ 山西大土河華東理工
姚彦(江蘇中超電纜)      →[610万元(約8350万円)]→ 内蒙古銀行

 3選手の落札額が、いずれも男子の最高額(450万元/ハオ帥)を上回ったばかりか、郭炎に1133万元という信じられない落札額がついた。中国のマスコミは「郭炎、馬琳4人分!」「冷静な計算か、それとも狂気の沙汰か?」と大々的に書き立て、郭炎は一躍中国スポーツ界の「時の人」となった。
 郭炎の入札は最低価格の80万元から、50万元や100万元の単位で金額が急上昇。開始からわずか5分あまりで600万元に到達し、超級リーグの摘牌大会の新記録を更新した。600万元以降は、郭炎の昨シーズンまでの所属チームである山西大土河華東理工と、新顔の内蒙古銀行(旧:北大方正・冀中能源)が「札束の叩き合い」。入札額が1000万元を超えたところで、ついに内蒙古銀行がギブアップし、山西大土河華東理工が郭炎を残留させることに成功した。
 郭炎を落札した華東理工大卓球部の臧玉瑛総監督も、「55回も入札の札を挙げた」とほとんど脱力状態。08年の摘牌大会で郭炎を落札した時の金額は148万元だったから、約8倍もの巨費を投じたことになる。郭炎自身は摘牌大会後、「自分につけられる落札額は、どんなに高くても500万元か、600万元くらいだと思っていた。途中からは『一体どこまで上がるの?』と思いながら見ていました」とコメントを残した。

 郭炎を競り落とした山西大土河華東理工は、山西省呂梁市に本社を置く石炭会社大手の山西大土河焦化有限公司が、上海の強豪大学である華東理工大学・女子卓球部のスポンサーとなっているチーム。山西大土河の賈廷亮董事長は、ロバに引かせた車で石炭を売っていた青年時代から、一代で山西省でも一番の大金持ちになった立志伝中の人物。08年時点での個人総資産は42億元(約580億円)と報道されている。郭炎に続き、なんと范瑛にも520万元を投じて落札し、今回の女子摘牌大会の話題を独り占め。広告効果はバツグンといったところだ。「我々には1200人を収容できる自前の体育館があり、炭坑や工場で働いている社員たちもたくさん超級リーグを観戦に訪れる。郭炎は一番人気がある選手で、郭炎がコートに入ると、みんな“郭炎、加油!”の大合唱をやるよ」とは山西大土河華東理工の白堅代表のコメント。賈董事長も卓球の大ファンだそうだが、ガッツあふれる郭炎のプレースタイルが、炭坑の町によく似合うのだろうか。

 サッカーでは甲Aリーグ時代の2003年、上海申花のスター選手である呉承瑛がライバルチームの上海中遠に1300万元で落札された記録があるが、2004年以降のサッカー超級リーグでは、トップ選手でも落札額は500万元が標準。プロバスケットボールリーグのCBAに至っては、歴代でも薛玉洋の60万元が最高だという。しかも郭炎の場合はわずか2年間の所有権に過ぎない。
 もっとも、落札額がいくらまで跳ね上がろうと、郭炎の懐に入るのは年棒の上限である120万元(約1640万円)だけ。30万元が郭炎の所属する北京体育局に支給され、残る983万元のうち、70%が超級リーグの賞金や運営費に、30%が再び北京体育局へと支給される仕組みだ。結果的に1133万元のうち、約61%に当たる688万元は超級リーグの主催者側(国家体育総局卓球・バドミントン管理センター)が手にすることになる。1133万元という金額も決して超級リーグの人気を反映したものではなく、石炭長者の意地が打ち上げた大花火、と表現したほうが妥当(だとう)かもしれない。

 中国卓球クラブ超級リーグは4月20日に監督・コーチおよび選手(中国卓球協会登録)、4月30日に外国籍選手の登録が締め切られる。その後、一週間ほどで今シーズンの登録クラブとメンバーリストが公表される予定だ。

Photo上:思わぬ「摘牌狂想曲」に巻き込まれた郭炎、結局は所属チームに残留することに
Photo中:郭炎と同じく、山西大土河華東理工が落札したカット主戦型の范瑛
Photo下:長身の姚彦は内蒙古銀行が落札。内蒙古自治区のフフハト市では、今年6月7~12日に世界ベテラン選手権が開催予定