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中国リポート

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 ロンドン五輪の卓球競技が閉幕してすでに1カ月余り。しかし、日本のみならず中国でも、メダリストたちの多忙なスケジュールはまだまだ続いている。

 男子シングルス金メダリストの張継科は、国家卓球チームの奉仕活動や対スポンサーのイベント、山東省体育局の報告会など、様々な行事に引っ張りだこ。やはり金メダリストの人気は絶大で、スポンサーなども必ず「イベントには必ず張継科を来させてくれ」と注文してくるのだそうだ。あまりの忙しさに加え、練習不足で筋肉が落ちたことで体重が3キロも減ってしまったという。
 「確かにすごく疲れてるよ。何かと緊張することも多いしね。でも、ぼくたちには時間の許す限り、スポンサーの要求に応える義務がある。彼らは国家チームに多くのお金を払い、そして支持してくれているわけだから」(張継科/出典『山東新聞網』)。男子ワールドカップは欠場する張継科だが、9月13日以降にようやく練習を再開する予定だそうだ。

 女子シングルス金メダリストの李暁霞も、イベント攻めで1日に飛行機に二回乗る日もあるというから、まるで政治家並みだ。女子団体決勝が終わってから、まだ一度もラケットを握っていない。「イベントや社会活動に参加するのは、練習や試合とは違った疲労感がありますね」(李暁霞)。飛行機の乾燥した機内でのどを傷めることが多く、あちらこちらと連れ回されるため、五輪前から抱えていた右ひざの故障も思わしくないという。張継科と同様、こちらも女子ワールドカップは早々にキャンセルしている。

 今シーズンの中国超級リーグの開幕は10月17日。まだメンバーは正式に発表されていないが、両選手とも所属する山東魯能では絶対的なエース。決して替えの効かない選手だ。昨シーズン、張継科はプレーオフ・準決勝の浙商銀行戦で左ひざを負傷し、途中棄権でチームの敗退が決まってしまっただけに、五輪金メダリストとなっても超級に懸ける思いは強いだろう。李暁霞は超級3連覇を目指すことになるが、男子以上に各クラブの選手層は厚く、油断のできない戦いが続く。

Photo上:張継科、自慢の肉体美もトレーニング不足には勝てない?
Photo下:「早く練習を再開したい」と李暁霞
 五輪の開催年に当たるため、シーズンの開幕が例年の5月末から10月末にずれ込んでいる「2012中国卓球クラブ超級リーグ」。すでに選手の獲得状況や、新しいクラブの参戦情報などが流れつつあるが、中国・天津の地方紙『濱海時報』が興味深いニュースを伝えている。先月のロンドン五輪で、五輪7大会連続出場という金字塔を打ち立てたヨルゲン・パーソン(スウェーデン)の超級リーグ参戦が決定したというのだ。

「考えたのはほんの一瞬だよ、そして即決した。ぼくはずっと超級リーグでプレーすることを願っていたんだ。天津市チームで、ついにそれが実現するよ」(パーソン/出典『濱海時報』)。
 パーソンが戦列に加わることになったのは、今年10年ぶりに超級リーグへ復帰する天津市チーム。2010年シーズンには松平健太(早稲田大)がプレーしたチームで、監督を務めるのは地元・天津の英雄である馬文革(92年五輪3位)。パーソンと馬文革は20年来の旧友で、ドイツ・ブンデスリーガのオクセンハオゼンでチームメイトだったこともある。これまでにもパーソンが中国を訪れた時、超級リーグでプレーしたいという希望を馬文革に伝えていたという。

 今年は渤海(ぼっかい)銀行という大型スポンサーを獲得し、各クラブを転々としていたハオ帥・李平(ともに天津市チーム所属)を呼び戻し、さらに馬琳との契約も狙っているという天津市チーム。失礼ながら、46歳のパーソンが戦力的にプラスになるのか、という気もするが、馬文革監督にはよりシビアな計算もあるようだ。「パーソンの天津市チームでの役割は、試合だけでなく、ファンとのふれ合いやエキシビションマッチもある。天津の40〜50歳代の卓球ファンには、パーソンやワルドナーに対して特別な感情があるんだ」(馬文革)

 95年に開催された世界選手権天津大会の男子団体決勝で、パーソンとワルドナーのスウェーデンは激闘を繰り広げた。大激戦となった2番の馬文革対パーソン、そしてラストの王涛対パーソンは、中国男子が世界の覇権を中国から奪回した記念すべき一戦として、ファンの脳裏に刻まれている。馬文革がパーソンに期待するものは、競技力以上に「集客力」というのが本音だろう。パーソンは10月初旬に天津入りし、10月末の開幕へ向けて調整を行う予定だ。

photo上:因縁の地・天津で、今度は地元ファンの声援を背に戦うパーソン
photo中:44歳になった馬文革、超級での采配に期待
photo下:新生・天津市チームの上位進出のカギを握るのは、先日の中国オープンを制したハオ帥
 晴れてロンドン五輪・卓球競技の男子金メダリストとなり、大会後には連日睡眠時間が4時間を切るほどの取材攻勢を受けた張継科。帰国して故郷の山東省青島に戻った後も、「張継科フィーバー」は続いている。山東省の五輪メダリスト表彰会では、なんと1200枚(!)の封筒にサインを書かされる羽目になった。張継科曰く、「右手が言うことを聞かなくなったよ」(出典『半島都市報』)。24日には他の金メダリストたちとともに香港を訪れる予定だ。

 五輪・世界選手権・ワールドカップをすべて制する「大満貫」を、もう一度達成したいと語る張継科。それは競技人生最大の目標と言えるものだが、彼の当面の目標は英会話をマスターすること。「もっとしっかり英語を勉強しようと思っている。そうすれば、今度ホンモノの“C羅”に会った時、ふたりでお喋りができるからね」(張継科/出典『現代快報』)。ちなみに張継科が大ファンだというC羅とは、サッカー・ポルトガル代表のクリスチアーノ・ロナウドのこと。「C」は「Cristiano(クリスティアーノ)」、羅は「羅納尓多(ロナウド)」。J.セイブ(ベルギー)を「Jセ」と表記するようなものか…。

 実は張継科、今年3月の世界団体選手権ドルトムント大会で、ロナウドの直筆サイン入りTシャツをゲットしていた。2月のカタールオープンで、スペイン女子チームのション・イェンフェイにTシャツを託し、「ロナウドのサインを貰ってきて」と頼んだという。確かにロナウドはスペインのレアル・マドリードで活躍しているが、かなり無茶なお願いである。

 しかし、さすがはスペイン在住歴の長いション・イェンフェイ。マドリッドの卓球クラブの代表や、サッカーのトレーニングマシーンのメンテナンス担当など、様々な伝手(つて)をたどって、ロナウドのサインを手に入れてきた。前述の『半島都市報』によれば、卓球好きで知られるロナウドは張継科のこともよく知っており、気前よくサインしてくれたうえ、サインには「My dear brother(親愛なる兄弟)Zhang Jike」と添えられていたそうだ。

 これに大喜びした張継科は、さっそくサイン入りウェアを着た写真を「微博(マイクロブログ)」にアップ。そしてドルトムント大会で着用したウェアにサインし、中国語で「我親愛的兄弟(親愛なる兄弟)C羅」と書き添え、ロンドン五輪で再びション・イェンフェイに託したという。いずれ張継科のサイン入りウェアも、ロナウドの手元に届けられることになるだろう。ロナウドのフェイスブックに、中国代表のウェアを着たロナウドが登場する可能性もあるが、あの頑丈な首がちゃんとウェアに入るだろうか…。

photo上:英語のリスニングはかなりできるが、話すのが苦手という張継科
photo下:少なくともこのタトゥーの「persistence(忍耐)」という英単語だけは、二度と忘れないでしょう(写真提供:マンフレッド・シリング)
 前評判どおり、丁寧と李暁霞という中国勢同士の対戦となった、ロンドン五輪・卓球競技の女子シングルス決勝。李暁霞が4−1で丁寧を破って、中国女子5人目の五輪単金メダリストに輝いた。昨年のロッテルダム大会決勝では、丁寧の粘り強い攻守の前にイージーミスも出ていた李暁霞だが、今回の決勝でのプレーは完璧。丁寧のフォアサイドを切るシュートドライブのコースの厳しさ、打球点の早さは息を呑むほどで、同士討ちでありながらノータッチの山を築いた。

 そして今大会の女子シングルス決勝では、丁寧が思わず涙を見せる場面があった。すでに世界中で話題になっているが、サービスが主審からたびたびフォールトを取られ、さらに試合の遅延行為でレッドカードを提示されるなど、決勝1試合で4点を失ったのだ。
 まず丁寧は、第1ゲーム6−8、第2ゲーム5−8の場面で、「サービスのトスが斜めに上がっている」として、一発でフォールトを取られた。丁寧は第2ゲームには追いついてゲームポイントも奪ったが、結局この出足の2ゲームを落とす。さらに第3ゲームの開始前には、すでに台についていた李暁霞に対し、遅れて台に着こうとした丁寧にイエローカードが提示される(試合の遅延行為)。

 そして問題のシーンは、第4ゲーム、丁寧 2−6 李暁霞の場面。この試合で初めてバックのしゃがみ込みサービスを出した丁寧、サービスはネットを弾いて相手コートに入ったが、主審は「レット」のコールに続いて、トスが低かったとして「フォールト」のコール。
 丁寧、この3回目のフォールトでさすがに感情が抑えきれなくなった。あふれ出てきた涙を拭くためにタオルを取ると、そこに追い打ちをかけるように、「正規のタオリングの時間以外にタオルを使った」として、審判からレッドカードに相当する、2枚目のイエローカードが出る。スコアは2−6から2−8となり、このゲームの行方はほぼ決まってしまった。

 中国国内では、ネットで主審を務めたイタリア人の女性審判パオラ・ボンジェリさんへの批判が相次いだ。さらに「試合後に丁寧をなぐさめる気配もなかった」として李暁霞を批判する丁寧のファンが現れたり、ふたりの不仲を疑う報道すら流れた。ボンジェリさんから丁寧へ私的な謝罪がなされたという報道もあったが、丁寧はこれを否定している。その後の団体戦で中国女子は金メダルを獲得したことで、女子シングルス決勝での判定を巡る報道は収束しつつある。

 「どこの誰であっても、私はあの人(主審)を忘れることはできません。今回は私が参加した初めてのオリンピック、この一件は絶対に忘れないでしょう」(丁寧/出典『北青網』)
 女子決勝を戦った丁寧と李暁霞は手の内を知り尽くしたチームメイト同士で、サービスエースやレシーブでのイージーミスは非常に少ない。あくまで個人的な意見ではあるが、丁寧の3本のサービスフォールトは、試合の流れを大きく左右するような、重大なルール違反ではなかったように思う。一生に一度上がれるかどうかの五輪決勝の舞台、主役を務めるのはあくまで選手であるべきだった。

photo上:審判の判定に涙を浮かべる丁寧(上)、表彰台でも笑顔なし(下)
 男子シングルス決勝で張継科に1-4で敗れ、五輪3大会連続で銀メダルとなった王皓。中国リポートでも以前紹介したように、このふたりが決勝で対戦したら「(2大会とも銀メダルの)王皓に勝たせるのでは?」という中国の卓球ファンの懸念もあったが、杞憂に終わった。王皓得意の裏面ドライブ、裏面フリックは張継科の多彩なバックハンドに完璧にシャットアウトされ、フォアの打ち合いになっても、張継科が抜群のフットワークで王皓を制した。

 男子シングルス決勝の終了後、王皓が母親の劉志英さんに長いメールを送ったことを、『中国体育報』が伝えている。父親の王忠全さんはこう語っている。「息子からのメールは、私たちをなぐさめ、励ましてくれるものだった。本来なら私たちが息子をなぐさめるべきなのに。三回の五輪で三枚の銀メダル。息子は全力を尽くしたのだと私は思っている」(出典『中国体育報』)。
 男子団体決勝の韓国戦では、王皓の故郷である長春市の長春全民健身センターに、王皓の両親や母校である長春市体育学校の生徒などが100人ほど集まり、王皓を応援。劉国梁の母親である文玉香さんも同席した。王皓にとって劉国梁は、八一解放軍チームの先輩。家族ぐるみのつきあいがあるそうで、王皓の両親を励ますために河南省から駆けつけたのだという。王皓は決勝3番のダブルスに出場して、中国男子の優勝を決めた。パートナーはシングルス決勝で敗れた張継科だった。

 王皓は男子団体決勝後に行われたインタビューで、次のように語っている。
「ずいぶん年を取ってしまったね。ぼくにこんなことを言う人もいるかもしれない。馬琳や王励勤は北京五輪が終わってからも、次の五輪を目指して努力を続けただろうと。でもぼくは、考え方は人それぞれ違うと思う。少なくともぼくにとっては、今回のロンドン五輪が最後のオリンピックになるだろう。
 中国男子チームからは次々と人材が輩出されて、張継科や馬龍のような若い選手もいる。安心してチームを去ることができると感じているよ」

 ……まるで引退会見のようだが、王皓は最後に「すぐに引退することはできないだろう。チームの事情もあるだろうしね」と付け加えている。
 国家男子チームで王皓と馬琳を指導してきた呉敬平コーチも、今回のロンドン五輪を最後にコーチングスタッフから外れる。その呉コーチは、王皓の現役続行を求めるファンの声に対し、微博(中国版ツイッター)で「王皓は簡単に引退したりはしない」と述べている。来年、パリで行われる世界選手権個人戦。ベルシー・スポーツホールに果たして王皓の姿はあるのか。

photo:五輪3大会連続の銀メダル。王皓の胸に去来するものは……
photo:団体金メダルを決め、劉国梁監督とともに敬礼
 日本女子チームが、女子団体で史上初となる銀メダルを獲得したロンドン五輪。準決勝でシンガポールを一蹴した戦いぶりは素晴らしかった。中国リポートといえども、まずはこの偉業に盛大な拍手を送ります。恭喜恭喜!

 そして今大会の卓球競技でも、4種目すべてで金メダルを獲得した中国。男子シングルスでは、張継科が決勝で王皓を下し、初出場・初優勝を飾った。張継科は2011年5月の世界選手権優勝から、わずか15カ月ほどで「大満貫」を達成してしまった。08年北京五輪では馬琳や王励勤のトレーナー、そして09年世界選手権ではシングルス出場もかなわなかった選手が、10年世界団体選手権での活躍をきっかけに、鮮やかなサクセスストーリーを完結させた。

 これまで中国リポートでもたびたび登場してきた「大満貫」という言葉。オリンピック・世界選手権・ワールドカップの3つのタイトルを獲得することで、カードゲームのブリッジの用語である「グランドスラム」を、麻雀の用語で代用したもの。テニスで四大大会すべてを制することも、海外や日本ではグランドスラムだが、中国では大満貫と呼ばれている。
 これまで大満貫を達成しているのは、ワルドナー(スウェーデン)以外ではいずれも中国選手。トウ亜萍、劉国梁、孔令輝、王楠、張怡寧、そして今回の張継科。いずれも中国卓球界の「レジェンド」ばかりだが、張継科は『新京報』のインタビューに対し、次の目標は『もう一度大満貫を取ること』と言い切っている。偉大な先輩たちの中でも、「ダブル大満貫(3大大会で2回以上の優勝)」を達成しているのは張怡寧だけ。張継科は男子で初めてのダブル大満貫を狙うというのだ。まだまだこの男の辞書に満足の文字はない。

 15カ月で大満貫を達成したことも、本人は決して早いとは思っていないようで、「むしろごく正常だと思うよ。これはぼくの実力の現れだから、何も特別なことはないと思うけど」と答えている。ロンドン五輪の男子シングルスで最も苦戦した4回戦の後で、試合後に「良い練習になった」と言い放ったビッグマウスは、これからどんな名言・珍言を残すのか。

 ちなみに張継科に対しては、ロンドン五輪・閉会式で中国選手団の旗手を務めるのではないかという中国国内での報道もあり、張継科自身も「そのような大役を任されたら非常にうれしい」とコメントしていた。しかし、結局はヨット・女子レーザーラジアル級の徐莉佳が旗手を務めた。張継科は「テレビで観たって一緒だろう」と選手村の部屋で閉会式を観たそうだ。これまでの張継科のパフォーマンスの“実績”から言って、「アイツには安心して任せられない」というのが、中国選手団幹部の本音なのかもしれない(あくまで推測デス)。

photo上:バックブロックも抜群の安定感を見せた張継科
photo下:張継科、会場のエクセルでインタビューを受ける
 7月9~11日に四川省成都市の成飛体育館で行われた国家チームのエキシビションマッチ。ロンドン五輪の卓球競技会場「エクセル」がそのまま成都に引っ越してきたかと思うほど、競技環境の再現は完璧だ。

 女子シングルスでは、現世界女王で、郭炎とのエントリー変更で五輪団体・シングルスへの出場権を得た丁寧が、A組で優勝。決勝で宿命のライバル・劉詩ウェンを4-2(11-4、9-11、11-8、11-3、5-11、11-6)で破った。昨年11月のプロツアー・グランドファイナルでは、劉詩ウェンの緩急をつけた攻めにストレート負けを喫した丁寧だが、この試合では攻守に抜群の安定感を見せた。
 「五輪のようなビッグゲームを経験すると、選手の実力は30%くらいアップする。ライバル関係にある丁寧と劉詩ウェンも、丁寧が五輪を経験することで、両者の間にはっきりと明暗が分かれていくかもしれない」。88年ソウル五輪・男子ダブルスで金メダルを獲得した偉関晴光さんの言葉だ。果たして劉詩ウェンの逆襲はあるのか

 「五輪さながらの雰囲気の中で集合訓練を行うことで、普段の練習や練習試合でも、五輪をイメージしながらプレーできた」と試合後に語った丁寧。ロンドンにはスペアラケット5本、ラバー30枚を持ち込み、「マイ枕」まで持参。五輪本番への備えは完璧とも思えるが、このエキシビションマッチのA組初戦でカットの胡麗梅に1ゲームを落としている。かつて丁寧の弱点と言われたカット打ち。近年では完全に克服されたように見えるが、CCTVで卓球の解説を務める楊影(97年世界女子複優勝)は「丁寧は対カットが唯一の不安」と指摘する。

 女子シングルスB組で優勝したのは李暁霞。決勝で楊揚(07年世界ジュニア優勝)を4-1で下している。ただ、集合訓練中に古傷である足首のケガが再発し、エキシビションマッチの終了後は、出発まで軽めの調整で済ませている。「ロンドン五輪に向けて、とても良い準備ができている。十分な準備期間があったし、あとは自分の実力を示す機会を待つだけ」(李暁霞)。
 李暁霞の最大の不安要素は「慢熱(スロースターター)」だろう。勢いがつけば、その豪打は丁寧に勝るとも劣らないものがあるが、うまくエンジンに点火できるかどうかが課題。中国女子チームの施之皓監督も、「出足の2試合について、より慎重に、細かく準備をしておく必要がある。特に心理面の準備は重要だ」と語っている。

 3チームの総当たりリーグ戦で行われた女子団体は、丁寧・李暁霞・郭躍の「奥運主力隊」が力の差を見せつけて優勝。現在の国家女子チームは、攻撃型の中堅選手の層がやや薄くなっているようだ。
 いよいよロンドン五輪の開幕は目の前。シングルス・団体戦のドローが今日25日の現地時間14時(日本時間22時)から行われるので、その結果に注目しよう。

Photo:中国女子・五輪代表の3選手、丁寧(上)、李暁霞(中)、郭躍(下)
 皆様、大変ご無沙汰を致しました。すでに1カ月あまりに及ぶ集合訓練を終え、大会前の最終調整を行うイギリス・リーズへ到着している国家男女チーム。集合訓練の締めくくりとして行われた、男女チームの「熱身賽(エキシビションマッチ)」の結果をお伝えします。

 7月9~11日に四川省成都市で行われたこのエキシビションマッチ。卓球台からフロアマット、使用球から照明の明るさに至るまで、すべてロンドン五輪本番に合わせる徹底ぶり。エキシビションマッチの時だけでなく、男女チームとも集合訓練の段階から、五輪本番と全く同じ環境で訓練を積んでいる。卓球人には少々違和感のある、スカイブルーのフロアマットにも、すでに対応済みというわけ。前半の2日間でシングルス、最終日に団体を行うタイムテーブルも五輪と同様だ。
 シングルスは男女ともA組とB組のふたつのグループに分け、ふたりの優勝者が誕生した。主な結果は以下のとおり。

★★★ “国酒茅台杯” 中国卓球チーム五輪エキシビションマッチ ★★★

〈男子シングルス〉
[A組]
●1回戦

張継科 4-2 劉イ
閻安 4-1 馬琳
馬龍 4-1 尚坤
●準決勝
張継科 4-2 徐晨皓
馬龍 3、9、5、-8、5 閻安
●決勝 馬龍 9、-10、10、-8、-9、9、9 張継科

[B組]
●1回戦

王皓 4-1 馬特
●準決勝
王励勤 -5、8、9、-5、7、10 王皓
●決勝 許シン 4-1 王励勤

<男子団体>
●準決勝

〈奥運主力隊 3-1 国家四隊〉
※国家四隊の方博/閻安ペアが3-1で張継科/馬龍ペアに勝利
●決勝
〈奥運主力隊 3-0 国家二隊〉

○馬龍 -9、9、-8、7、4 許シン
○王皓 7、-9、5、9 馬琳
○王皓/張継科 8、8、-5、8 王励勤/許シン

 …詳細な記録がなく、なんとも中途半端な記録でスミマセン。
 まず男子シングルスでは、A組の決勝で馬龍と張継科のライバル対決が実現。全くスコアが離れないシーソーゲームとなり、張継科が最終ゲーム2-5から5点連取で7-5と逆転したが、最後の最後でプレーが消極的になった。9-8から馬龍に3点連取を許し、惜敗。最後はフォア前へのサービスに対するレシーブが浮き、馬龍に豪快な3球目シュートドライブで打ち抜かれた。
 「五輪でのプレッシャーは誰にでもあるものだし、心身のバランスを保つことが最も大事。気持ちを静め、雑念を払って試合に向かうだけだよ」と試合後に語った張継科だが、初出場のロッテルダム大会で見せた思い切りの良いプレーが、果たしてロンドンで見せられるのか。五輪の前年に行われた世界選手権の優勝者が、翌年の五輪を制したケースは、男子ではまだない。

 一方、男子シングルスB組で周囲を心配させたのが王皓。近年は圧倒的に分の良かった王励勤に敗れた。女子シングルスでは丁寧と李暁霞が、A・B組でそれぞれ優勝しているため、ロンドン五輪のシングルス代表でタイトルを逃したのは王皓だけ。コートサイドから鋭い視線で試合を見つめた劉国梁監督は「王皓は技術面では問題はないが、大力(王励勤)の状態が素晴らしかった。プレッシャーに打ち勝つメンタルの強さが、まだ王皓には足りない」と述べている。プレーヤーとしては下り坂に差し掛かりつつある王皓、3回目の出場となるロンドン五輪は、まさにラストチャンスだ。

 小さいニュースとしては、五輪2連覇への道が絶たれた馬琳が、今回の集合訓練で82kgから72kgへ、10kgの減量に成功したとのこと。食事を果物メインにした「フルーツダイエット」だそうだが、これはセカンド・ライフのための布石か? 体が軽くなりすぎたせいか、肝心のプレーはまったく冴えがなかった。

Photo上・中:張継科(上)、やはり馬龍(中)は天敵か
Photo下:馬琳、ダイエットは少々遅すぎた…?
 国家チームの選手たちが一番好きなスポーツは何か。一番はおそらく卓球……のはずだが、二番目に来るのは間違いなくサッカーだ。人民解放軍チームの師弟コンビ、王涛と王皓は英プレミアリーグの人気クラブであるマンチェスター・ユナイテッドの大ファン。張継科はポルトガルのエース、クリスチアーノ・ロナウドのファンだという。ふたりともプライドが高くて筋肉自慢(失礼)、何となくうなずけるものがある。

 ヨーロッパのサッカー選手にも、中国国内で微博(マイクロブログ)のアカウントを持っている選手もいる。そのひとりがスペインのジェラール・ピケ。193cmの長身でスペインの守備陣を支えるピケが、チームメイトのセスク・ファブレガスとの卓球動画をアップし、中国でも話題を呼んでいる。卓球選手顔負け、とは言い難いが、ピケのフォアドライブの安定感はなかなかのものだ。

 現在、ヨーロッパではサッカーの欧州選手権「UEFA EURO2012」が佳境を迎えている。27日にポルトガルとの準決勝を控えるスペインは、試合が行われるウクライナのドネツィクで調整中で、動画は練習の合間に撮影されたようだ。ピケは子どもの頃から卓球が大好きだったそうで、「騰訊体育」の取材に対して次のようにコメントしている。「卓球はエキサイティングだし、知力と反射を試されるスポーツ。ぼくはサッカー選手になったけど、卓球をやっていたことがサッカーにも非常に役立っているし、卓球好きなサッカー選手は多いんだ」。

 国家男子チームの劉国梁監督も、早速このピケの動画をチェック。微博で「ピケは打球センスが良いし、セスクは打球にスピードがある。ふたりが試合をやったら、どちらのツッツキがより切れているかが、試合のカギになるな」といたってマジメなコメント。「使っているラケットと台が良くないな。卓球の普及のためにも、スペインサッカーチームに紅双喜の五輪公式卓球台を送ることを考えてもいいね」(劉国梁)。

 ピケも「劉国梁、ありがとう。問題があるのは卓球台じゃないと思う…(笑)。いつの日か、あなたの指導を受けられる日が来るといいな。そうなったら最高だね」とコメントを返している。長身で男前のピケが卓球を選んでくれなかったのは残念だが、彼が超一流のサッカー選手になる過程で、卓球が果たした役割は小さくない。「サッカー選手向けの卓球プログラム」「ボクシング選手向けの卓球プログラム」などを作り、他のスポーツ選手の強化に役立てれば、卓球というスポーツのステータスを違う角度から高めていけるのではないだろうか。

↓ピケとセスクの卓球動画はこちら(youtube)
 http://www.youtube.com/watch?v=PmCtsy_Mq1U

photo:劉国梁の微博は、驚異のフォロワー600万人超え(!)
 シンガポール女子卓球チームのエースである馮天薇が、ロンドン五輪・シンガポール代表選手団の旗手を務めることになった。08年北京五輪では、同じく女子卓球チームのリ・ジャウェイが旗手を務めており、2大会連続で女子卓球チームから旗手が選出。名実ともにシンガポール・スポーツ界の顔であることを印象づけるものだ。

 その国を代表するスポーツ選手だという「認定証」とも言える、五輪選手団での旗手。前回の北京五輪では日本の福原愛をはじめ、リ・ジャウェイ(シンガポール)、プリシラ・トミー(バヌアツ)、ボセ・カッフォ(ナイジェリア)、ゼイナ・シャバン(ヨルダン)の5人が旗手を務めた(いずれも女子選手)。

 北京五輪に参加した国・協会の数は204で、競技数は28。卓球選手の5人という数字はやや少ないようにも思えるが、たとえばテニス選手で旗手を務めたのは2人だけだった。陸上競技のように様々な種目が含まれている競技もあり、5人は平均的な数字かもしれない。ちなみに04年アテネ五輪で旗手を務めた卓球選手は、ジャン-ミッシェル・セイブ(ベルギー)のひとりだけで、00年シドニー五輪はゾラン・プリモラッツ(クロアチア)と蒋澎龍(チャイニーズタイペイ)のふたりだった。そして意外にも、中国からはまだ卓球選手の五輪旗手は現れていない。北京五輪では張怡寧が選手宣誓の大役を担ったが、五輪への参加が84年ロサンゼルス五輪まで遅れたことも影響している。

 ここしばらくは国際大会でも思うような成績が残せず、一時2位まで上げた世界ランキングも10位(12年6月)まで下降している馮天薇。旗手の大役を発奮の材料にして、再び中国と熱戦を展開してもらいたいところだ。

Photo上:7月27日の開会式で旗手を務める馮天薇
Photo下:美人旗手として話題を集めたゼイナ・シャバン(ヨルダン)。昨年、ヨルダン王室のラシド王子と結婚
(写真は上から12年世界団体選手権、08年北京五輪)