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2017世界ジュニア選手権大会

上写真はスウェーデンのトルルス・モアガド。非常に浅い独特のグリップ。レシーブでは強烈なチキータはないのだが、ガツンと切ったり、サイドスピンを入れたりと多彩な球さばきで、相手の3球目攻撃を許さない。バックハンドのミート打ちから後陣でのロビングまで、緩急を交えた独特のリズムがある、謎めいたオールラウンダー。韓国戦では1勝を挙げ、さらに相手エースの安宰賢を2−0でリードしてあと一歩まで追い詰めた。スウェーデンリーグのエースレーブでプレーしており、すでにヨーロッパチャンピオンズリーグにもデビューしている。

下写真は韓国で早くから「天才少女」の呼び声高いシン・ユビン。サービスのうまさとバックハンドのミート打ちが光るが、それ以上にコートでの力の抜けた雰囲気、試合前のリラックスした表情が印象的。これは相当メンタルが強そうだ。
今大会の会場である「リーヴァ・デル・ガルダ・エキシビションセンター」は、その名のとおり、本来はスポーツ施設ではなくて展示会場。そこにフロアマットを貼ってコートを設営している。

前回の南アフリカ大会では、フロアの上にクッション代わりにかさ上げした木の板を張り、その上からフロアマットを貼っていたのだが、今大会は薄いマットが下に一枚入っているだけで、コンクリートの床に直接フロアマットを貼っているような感じだ。フロアマットの部分を踏んでみると、足に伝わる感触は相当硬い。先ほど、イタリアの女子選手がひとり足を傷めて担架(たんか)で運ばれていったが、選手の足への負担が心配だ。

第1コートと第2コートがあるメインフロアでは、試合中でもスズメがちょくちょく飛び交っており、10コートをギュッと詰め込んだ感じのセカンドフロアは天井がかなり低い。カジノやアイススケート場に隣接した前回大会の会場にはビックリしたが、今大会の会場もなかなか個性的(?)。

団体第2ステージの第2試合は、日本男子がメインフロア、日本女子がセカンドフロアでの試合。2階分の上下運動を繰り返すのは結構コタエます。
  • セカンドフロアはこんな雰囲気

  • ベンチの熱い雰囲気と、天井周りの配管のギャップ

  • セカンドフロアで、入場待ちの選手たち

  • こちらは練習会場。柱が目立ちます

●男子団体・第2ステージ
〈日本 3−0 イタリア〉
○木造 −10、11、5、−4、8 アマト
○宇田 7、7、−8、−8、7 M.ムッティ
○田中 8、9、10 ピント

日本男子、初戦はイタリアにストレート勝ち!
しかし、余裕の勝利といえる内容ではなかった。試合が終わった直後、開口一番「やっぱり簡単な試合はない」と田㔟邦史監督。1番、2番はゲームオールまで迫られ、あわやという試合展開だった。

大会前は昨年に続き、邱建新さんが指導するドイツ・ニュルティンゲンのBTTC(バタフライ・テーブルテニス・センター)で合宿した日本男子。基本的に選手同士で打ち合うことはなく、森薗政崇、及川瑞基といったハイレベルな先輩たちを相手に、充実した練習を積んで現地に乗り込んできた。調整は万全だが、初戦でここまで苦しむというのは、世界大会の怖さだろう。

田勢監督が最も注意していたというイタリアのエース・アマトは、台上の細かいプレーが非常にうまく、下がっても粘り強かった。世界ジュニアのシングルスでもベスト16に入るくらいの力はありそうだ。2番のM.ムッティ、3番のピントというふたりの左腕も、集中力の高いプレーを見せていた。

エース木造は、鬼門となる序盤戦での勝利が何より大きい。大事にラリーに持ち込むプレーが多かったが、ここから天性のひらめき、相手の待ちを外すプレーが出てくるだろう。2番宇田もポテンシャルはこんなものではない。
そして日本男子では、もっとも冴えたプレーを見せたのは田中。「田中はサービス・レシーブとバックハンドがうまい。初戦でも緊張感を感じさせないプレーだった」と田㔟監督もそのプレーを評価。スイングスピードの速い両ハンドドライブは素晴らしい威力だった。
  • トップ木造、苦心の勝利をつかんだ

  • ムッティとの左腕対決を制した宇田

  • 田中は世界ジュニア初戦とは思えない、冷静なプレーを披露

  • 木造を苦しめたテクニシャン・アマト

●女子団体・第2ステージ
〈日本 3−0 セルビア〉
○長﨑 8、6、8 ルプレスク
○木村 7、11、−7、4 スルヤン
○木原 6、−9、3、9 ビグニェビッチ

女子団体第2ステージ、日本はセルビアに3−0で快勝!

重要な初戦ながら、あえてエースの加藤を温存した渡邊隆司監督。トップで左腕の長﨑を相手エースのルプレスクに当て、きっちり勝利して流れを作った。2番木村の起用は、スウェーデンオープンでチャン・モー(カナダ)やメシュレフ(エジプト)という強豪を破った好調ぶりを買ってのもの。審判に巻き込みサービスをたびたびフォルトに取られる場面があったが、「選考会の時は巻き込みサービスしかなかったのが、順回転のサービスもしっかり練習してきてくれていた」という順回転(右横回転)のサービスで乗り切った。

3番木原は緊張の色も見せず、変則左腕のビグニェビッチに完勝。大会前のスウェーデン・ハルムスタッドの合宿にはA.ディアス(プエルトリコ)やサウェータブット(タイ)も参加し、充実した練習を積むことができたという。チームの雰囲気も明るく、まずは順調なスタートだ。
  • トップできっちり役割を果たした長﨑

  • 木村は勝利に安堵の笑顔。ナイスゲームだった

  • 女子は2台しかないメインフロアでの試合。広いようで結構狭い

昨日は羽田空港を出発してから18時間余りで、現地のホテルであるパレス・ホテル・チッタに到着した編集部タロー。現地の最低気温はマイナス1度、しっかり寒いです。飛行機を乗り継いだドイツのミュンヘンでは、雪が激しく吹きつけていた。

開催地のリーヴァ・デル・ガルダは人口が1万5千人くらいで、過去の世界ジュニアの開催地の中でも最も小さい。ヴェネチアとミラノの中間くらいに位置する、イタリア北部の街。最寄りの空港であるヴェローナ空港からは、バスや電車をつかっても1時間くらいかかる。

実は昨夜、ヴェローナ空港に着いた時には交通手段が決まっておらず、「出たとこ勝負」だったのだが、幸い同じ便に何人か選手やコーチがいて、組織委員会のスタッフに頼んでマイクロバスに乗せてもらうことができた。絵に描いたような「便乗」だが、本当に助かりました。メディアは何をやるにも自力。食事などのサービスも利用できないので、深夜の会場で受け取ったIDはQRコードの部分に青いシールが貼られていた。うーむ、当然とはいえ切ない。

しかし、今日からいよいよ大会取材。時差ボケとは無縁の人間なので、初日からバリバリ取材したいと思います。……その前に、フォトグラファーでID申請したのに、ペン記者のIDになっているので、変えてもらわなければ。これも海外の大会取材では、よくあることです。
  • ポチッとシールが貼られたID

  • ミュンヘンにて、名物の白ソーセージ「ヴァイスヴルスト」。ビールの注ぎ方がヘタすぎ

昨日、11月26日に開幕し、団体第1ステージが終了した世界ジュニア選手権。日本は大会第2日目の今日、団体第2ステージから登場する。第1ステージの結果および、第2ステージの組み合わせは下記のとおり。

★男子第1ステージ
A 1位:アメリカ/2位:チリ/3位:チュニジア
B 1位:スウェーデン/2位:エジプト/3位:オーストラリア
C 1位:イタリア/2位:ブラジル/3位:アルジェリア
D 1位:インド/2位:アルゼンチン/3位:ニュージーランド

★男子第2ステージの組み合わせ
A 日本/ドイツ/イタリア
B 中国/フランス/インド
C 韓国/ルーマニア/スウェーデン
D チャイニーズタイペイ/ロシア/アメリカ

・男子は第2ステージでドイツ、イタリアと同組。「日独伊三国同盟」……なんて言ったら怒られそうですが。ドイツは今年のヨーロッパユース・ジュニアベスト8で、バックハンドの強いエンゲマンがエース。日本は初戦でイタリア、第2戦でドイツと当たるので、イタリア戦で各選手とも大会の雰囲気に慣れておきたい。もちろん、伝統的にパワーヒッターが多く、地元でのプレーに燃えるイタリアも油断できない。


☆女子第1ステージ
A 1位:セルビア/2位:プエルトリコ/3位:チュニジア
B 1位:ドイツ/2位:エジプト/3位:ニュージーランド
C 1位:チェコ/2位:イタリア/3位:オーストラリア
D 1位:ブラジル/2位:カナダ/3位:アルジェリア

☆女子第2ステージの組み合わせ
A 日本/香港/セルビア
B 中国/アメリカ/ブラジル
C 韓国/ロシア/ドイツ
D ルーマニア/チャイニーズタイペイ/チェコ

・女子は香港と同じグループ。香港には昨年までエースだった蘇慧音や、前回2位に躍進した麦子詠はおらず、前回大会ほどのインパクトはない。エース加藤を軸にきっちりストレートで勝利したい相手。まずは初戦のセルビア戦でのオーダーと、選手の調子に注目したい。
前回、6年ぶり2回目の女子団体優勝を果たした日本女子チーム。今大会を戦うメンバーは下記のとおりだ。

[日本女子チーム]
■渡邊隆司監督
加藤美優(日本ペイントホールディングス・WR17)
長﨑美柚(JOCエリートアカデミー・WR102)
木原美悠(JOCエリートアカデミー・WR105)
木村光歩(山陽女子高)

男子と同様、前回の優勝を経験しているのは加藤ひとりというフレッシュなメンバーだ。加藤は大会前のスウェーデンオープンでハン・イン(ドイツ)、ユ・モンユ(シンガポール)を下してベスト8に入り、準々決勝で朱雨玲(中国)とゲームオールの接戦を演じた。これまで団体戦では伊藤・平野らの陰に隠れがちだったが、アジアにもヨーロッパにも強く、鉄壁のバックハンドで格下への取りこぼしも少ない。長丁場だけに体力面にやや不安があるが、最後の世界ジュニアで完全燃焼してもらいたい。

JOCエリートアカデミーの先輩・後輩であるふたりの「ミユウ」、長﨑と木原はまだ中学生ながら、満を持しての世界ジュニアデビュー。左腕から回転量が多く、パワフルな両ハンドドライブを放つ長﨑と、バック表ソフトの強打に加えてフォアドライブの連打にも威力を増した木原。勝負度胸も満点のふたりだが、まずは団体戦の第2ステージ、そして準々決勝でしっかり勝ち星を挙げ、勢いに乗りたい。

そして高校3年にして、初の世界ジュニア代表に選ばれたのが木村だ。バック面に変化系の表ソフトを貼って相手を揺さぶり、フォアストレートに放つフォアドライブは切れ味十分。他の3選手が中学・高校での団体戦での経験が少ない中、名門・山陽女子高を引っ張ってきた団体戦での経験も貴重だ。
  • 加藤、最後の世界ジュニアで完全燃焼だ!

  • パワフル左腕・長崎がデビューする

  • 木原、大舞台でも強心臓ぶりを見せるか

  • 異質速攻の木村、このチャンスを生かしたい

11月26日〜12月3日、イタリアのリーヴァ・デル・ガルダで行われる世界ジュニア選手権。その開幕が直前に迫る中、男子団体とシングルスで2連覇がかかっていた張本智和(JOCエリートアカデミー)の欠場が発表された。

本当に残念なニュースだが、張本は11月に入ってからユース五輪予選、ドイツオープン、スウェーデンオープンと転戦し、さらに世界ジュニア後の12月もITTFワールドツアー・グランドファイナルに2018世界選手権(団体戦)最終選考会と大会続き。右肩の故障の悪化を防ぐのは賢明な判断だろう。今大会を戦う日本男子チームのメンバーは下記のとおり。

[日本男子チーム]
■田㔟邦史監督
木造勇人(愛工大名電高・WR85)
髙見真己(愛工大名電高・WR243)
田中佑汰(愛工大名電高・WR304)
宇田幸矢(JOCエリートアカデミー/大原学園・WR223)
※WR=2017年11月発表の世界ランキング

前回の団体優勝を経験しているのは木造のみ。髙見、田中、宇田はいずれも世界ジュニア初出場となる。

木造、髙見、田中のいる愛工大名電高は、今や高校卓球界の「横綱」。10月の全日本団体では、社会人の最強チーム・協和発酵キリンをあと一歩まで追い詰めた。惜しくも敗れた後、今枝一郎監督は「日の丸を背負って、4人しか出ない日本の代表のうち3人も出るというのは、それだけの責任がある。あと一ヶ月半、成長して世界ジュニアを迎えるというのをひとつのテーマにして、彼らには接するようにしている」とコメント。インターハイや高校選抜で修羅場をくぐり抜けてきた、団体戦での豊富な経験とチームスピリットは、世界ジュニアでも必ずや力を発揮するはずだ。

そして、団体戦を戦ううえで重要になるのは、日本にとって初戦となる第2ステージ。12チームが4つのグループに分かれて戦い、上位2チームが準々決勝に進むことができるが、各グループの1位チームと準々決勝で当たる2位通過は避けたい。

日本男子は前回、第2ステージのルーマニア戦で木造が2敗を喫し、苦戦を強いられた。この時に今枝監督は木造を「出足で一度苦しんでから、調子を上げていくタイプ」と評したが、唯一の世界ジュニア経験者である木造は、今大会ではチームを引っ張る立場。出足からエンジン全開で臨んでもらいたい。

また、張本に替わって出場する宇田は、国際大会での経験が豊富で、ベルギーオープンでフランチスカ(ドイツ)やアポロニア(ポルトガル)を破った実績もある。うまく調子の波に乗れば、エース級の活躍も期待できるだけに、宇田をどこで使うか、その後はどう起用するか、田㔟監督の腕の見せどころだ。
  • 木造、今大会は大黒柱としてチームを引っ張る

  • 初の世界ジュニア代表、髙見の活躍に期待

  • 全日本団体で大活躍した田中、世界ジュニアでもブレイクか

  • 宇田、代替出場のチャンスを生かして存分に暴れたい