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全国高校選手権(インターハイ2018)

女子学校対抗決勝で、四天王寺に0−3で敗れた遊学館。出雲美空と相馬夢乃というツインエースを擁し、戦力的には四天王寺と同等か、それ以上とも思われた。しかし、結果は0−3。トップ津隈が2ゲーム目の10−5から7点連取を許し、2番出雲は最終ゲームの9−6から逆転を喫した。3月の高校選抜で決勝進出を果たし、決勝の舞台も経験したうえで狙った頂点。しかし、四天王寺の壁は厚かった。

 「悔しいですし、本当に監督の責任だと思います。そのひと言です。優勝を狙うということで、今回は事前合宿も計画的にやりましたし、いろいろ対策も立ててきた」と語った、遊学館の安達健佑監督。監督自身も、2002年の茨城インターハイで遊学館がベスト4入りを果たした時のメンバー。母校の女子卓球部監督として、インターハイで初めて学校対抗決勝のベンチに入った。

 「出雲、相馬、そして出雲・相馬のダブルスか千葉で勝つというイメージを持っていたので、2番で出雲が落としたのは痛かった。出雲は昔ミキハウスにもいましたし、出雲に対しては徹底的にフォア前を突いたり、フォアに揺さぶる展開を使ってきた。それはわかっていたけど、対応できなかった。
 昨年はうちも初めてのインターハイでの入賞(3位)だったので、経験値が不足していた。四天王寺と当たるというだけで選手もビビってしまった。選抜はオーダーも当たったので狙えると思ったけど、決勝の舞台で緊張してうまくできなかった。今回は決勝も経験しているから、本当に狙っていこうと。でも戦術転換の能力、引き出しの能力が向こうのほうが上でした。今後は戦術に関しては徹底してやらないといけない」(安達監督)

 2番出雲が敗れ、ベンチに重苦しいムードが漂った時、「これだけ観客席で応援してくれる人たちがいて、たくさんの方の協力があったここまで来た。こんな感じで負けたらダメだぞ」とハッパをかけたという安達監督。「次は日本一を獲ります。まず国体があるので大阪にリベンジしたいし、来年のインターハイでは優勝します」と言い切った。それは自らに言い聞かせた、決意表明だったのかもしれない。戦型のバラエティに富んだ好チーム・遊学館。来年はひと回り大きくなって、インターハイの舞台に戻ってきてほしい。
  • 決勝1番に出場した津隈にアドバイスする安達監督

  • 出雲はベンチで笑顔。「リラックスさせて伸び伸びプレーしたほうがよい」と安達監督

  • 観客席では男子チームも大きな声援を送った

 女子表彰後の優勝インタビューで、開口一番「信じられないです」と語った四天王寺の村田充史監督。
 「決勝前は3:7か2:8くらいで分は悪いかなと思っていました。2番塩見はよく勝ってくれた。出雲さんとは五分五分くらいですけど、今の力は出雲さんのほうが上かもしれない。『よく1ゲーム取った』『おっ、2ゲーム取ったな』『えっ、勝ったの?』という感じです」(村田監督)

 一方で四天王寺は、大会前に遊学館に対し、入念な対策練習を積んできた。ダブルスは出雲・千葉ペアと出雲・相馬ペアの両方を想定し、宮崎・高橋のダブルス練習もしっかりやり込んだ。
 「佐藤(瞳/ミキハウス)が相手をしてくれたり、(出雲と同じ戦型の)梅村(優香/四天王寺高卒)が練習に来てくれたり、みんなに助けられて勝ち取った優勝ですね。遊学館は今年も本当に強いと思ったし、また1年かけて鍛え直して、来年は挑戦する気持ちで頑張ります」

 「今大会はまるで初優勝みたいな感覚です。『こうやったら勝てる』『これならいける』というものがまったくなくて、それだけにすごく新鮮です」(村田監督)。年によって戦力は違っても、変わらない強さ。それが常勝・四天王寺の伝統の力だ。
  • 優勝を決め、涙を流す選手たちと握手する村田監督

  • 6年連続でインターハイの頂点に立った

3連覇を達成し、ふーっと大きく息を吐いた今枝監督。
豪華メンバーを揃えている愛工大名電だが、地元開催のプレッシャーは大きい。点数的には余裕が見られたが、ベンチでの今枝監督は最後まで緊張の面持ちだった。試合後、ほっと胸をなでおろした今枝監督のコメント。

「地元開催というのはかなり意識していました。長年指揮していただいた後藤淳総長が亡くなられて、喪章をつけて意識を高く持ちました。その思いを果たせて、恩返しできた思います。
 鶴岡東さんとは去年もあたっていますが、去年のうちはドリームチームみたいなものだったので・・・今年は違います。個人戦で田原が中橋くんに勝っていたから、向こうもオーダーを変えてきたのかなと。
 曽根がその中橋くんに0−2から盛り返しましたからたいしたもんです。気持ちは入る前に作ってあるので、作戦だけ伝えました。

 田中は横綱相撲で、ダブルスも個人戦優勝の力どおりの活躍で、自分自身をコントロールしてくれました。団体は全部意識していました。初戦の福井商業さんにも田中が中村くんに当たらなければ、どうなっていたかわからない。

明日からの個人戦はベスト8に3人の残ってくれている。田原は全然実績ないのに、今大会はよく頑張ってます」

地元開催で絶対に手に入れなければならない学校対抗の優勝は守った。
最終日、残すはシングルス。名電完全制覇まであとひとつだ。
  • 噛みしめるように拳をあげた今枝監督

  • 欲しかった学校対抗のタイトルをゲット!

同校初の決勝進出を果たした鶴岡東。
ストレートでの敗戦となったが、1番で中橋が競るなど、見せ場は作っただろう。

決勝後の杉野森監督のコメント

「やはり相手は日本一の学校なので、名前負けしないようにと臨みました。
うちとしては5年連続ベスト8以上の成績を出しているので、最低の目標は8以上を目指すことでした。
今年のインターハイはいろいろなミラクル、神様が降りてきて、実力だけじゃなくて運も味方してくれました。
その中で子どもたちがてっぺんまで行こう!という思いが感じられました。敗れましたが頑張ってくれたし、すごいものを見せてくれました。ただ目標は日本一なのでまた頑張りたい。

 1番の中橋は全日本ジュニアで曽根くんに勝っていた。そこを突破口にしてダブルスで勝負して、後半につなげたかった。ぶつかっていかないと相手は崩れない。中橋は曽根くんに2−0から戦術を変えられて、対応ができず、さすがナショナルチームの選手だなと。
いい試合だったし、もう少しできたからこそ、勝てる日がくると思って頑張ります」
  • サービス力、フォアハンドで曽根を追い詰めた中橋

  • 2番は小松が任された。昨日の遊学館戦の金星は忘れないぞ

  • 1本目から飛び跳ねたベンチ

  • 来年に向けて杉野森監督の新たな戦いが始まる

●女子学校対抗決勝
 〈四天王寺 3−0 遊学館〉
○宮崎 11、10、9 津隈
○塩見 −5、8、−11、8、10 出雲
○宮崎・高橋 6、4、−6、−6、3 出雲・相馬
 鈴木 − 千葉
 大川(千) − 相馬

 四天王寺、決勝で遊学館に3−0で勝利!
 1995〜2000年に記録した6連覇の記録に並んだ!

 1番に宮崎、2番にエース塩見を配した四天王寺に対し、遊学館はこれまで一度も起用していない津隈(つぐま)をトップ起用。「(準決勝まで出場した)平川も力はあるんですが、四天王寺の選手にラリーに持ち込まれた時に厳しい部分がある。津隈はラリーで良いものを持っているので起用しました」と遊学館の安達監督。思いきった選手起用だった。
 
 津隈は両面から出すしゃがみ込みサービスとバックドライブの連打で、1ゲーム目に10-9、2ゲーム目には10-5と大きくリードしてゲームポイントを握ったが、ここから宮崎が7点連取で大逆転。バックハンドのミスが増えた津隈に対し、両ハンドの緩急とループドライブで巧みに攻略した。

 2番は塩見と出雲のエース対決。フォアサイドを厳しく攻める塩見のバックハンドを苦にせず、コースを突く合わせ打ち、威力あるスマッシュを何本も決めた出雲に十分勝機はあった。しかし、好プレーが続く一方で、ミスも続いた。5ゲーム目、7-4、9-6とリードし、10-9でマッチポイントを握ったが、ここも決めきれず。塩見が3点連取で逆転勝利。

 2番ダブルスに塩見が「頼むで!」と声をかけ、勢いづく四天王寺ベンチと、意気消沈の遊学館ベンチ。3番ダブルスでは、四天王寺ペアが2ゲームを先取してから2−2に追いつかれたが、最終ゲームは四天王寺ペアが3−2から10−2まで一気に突き放し、女子複チャンピオンペアの出雲・相馬を下した。相馬のカットをよく見極め、左腕の高橋が出雲のスマッシュもよく返して、宮崎の強打を引き出した。

 これが伝統の力か、決勝の舞台を知り尽くす強さか。四天王寺が才気あふれるタレント軍団・遊学館に貫禄の差を見せた。一方、敗れた遊学館の安達監督も「秋の国体で大阪にリベンジしたい、そして来年は日本一を獲ります」と力強く宣言した。
  • 2番で出雲に逆転勝ちした塩見

  • 3番ダブルス、宮崎・高橋が優勝を決めた!

  • しゃがみ込みサービスを操る津隈、トップで健闘

  • 出雲は最終ゲーム終盤のリードを守り切れず、惜敗

  • 6連覇の四天王寺、団体戦での強さを存分に見せつけた

●男子学校対抗決勝
愛工大名電 3−0 鶴岡東
○曽根 −12、-11、2、4、6 中橋
○田中 5、8、5 小松
○田中・加山 6、8、8 中橋・星

圧巻の試合だった。
トップで中橋が2ゲームを連取し、もしやと思われたが、そこからゲームは一方的な展開へ。
サービスの配球など、戦術をガラッと転換。それまで効いていた中橋のサービスを狙い打つなど、曽根が完全にペースを握り、逆転勝ち。
この逆転に主将の田中が燃えないわけがない。得意のバックハンドで小松を料理すると、ダブルスでもエンジン全開。
加山もストレートコースを有効に使い、中橋・星の足を止めた。

さすが個人戦優勝のダブルスと言ったことか。
最後は観客席の名電応援団に向かって大ガッツポーズ。
地元愛知で見事な3連覇。無敵の浮沈艦隊は今年も無敗航路を進んだ。
  • 戦術転換で逆転勝ちをした曽根。値千金の勝利だ

  • 田中はまさに横綱相撲

  • ダブルスも勝利し、ストレートで優勝を決めた

  • 地元愛知の大応援団に笑顔で応えた

初戦の2回戦で明豊の中村に3−2の辛勝。
首を傾げながらプレーしていた金光(大原学園)。昨年3位、全日本ジュニア3位の男もインターハイ初戦の雰囲気に呑まれていた。

しかし、そこで踏ん張るのが強者の証だろう。3〜5回戦ではどのコートよりも早く終了。攻められても弾き返すオールラウンダーは、インターハイに見事に順応した。

「今日、初めてこの体育館でプレーして、最初はボールの音、打球音が聞こえなくて、飛び方がわからなかった。空振りも多かった。2試合目からは慣れて、自分のプレーができるようになりました。
 今はブンデスリーガがシーズンオフなので、大学で練習したり、中国で練習しています。インターハイを年々経験して、今は試合のやり方がクリアに考えられるようになったし、気持ちの焦りも少ない。2試合目からは凡ミスも減ったので、明日もこのまま頑張りたい」(金光)

団体戦に出ていない金光のインターハイは今日からスタート。シングルスのみ、しかもシードなので今日、明日の2日間でインターハイが終わる。それだけに体も気持ちも乗らないまま力なく敗れてしまう魔の初戦を乗り切ったのは大きい。

孤軍奮闘の金光の試合に注目だ
  • ボールが走っている金光

●女子シングルス5回戦
相馬(遊学館) 3−0 岡崎(市立川口)
青木(横浜隼人) 3−1 永道(希望が丘)
出雲(遊学館) 3−0 桑原(正智深谷)
野村(愛み大瑞穂) 3−2 岡本(富田)
中田(玲)(愛み大瑞穂) 3−0 千葉(遊学館)
高山(札幌大谷) 3−0 青木(福井商業)
黒野(武蔵野) 3−1 工藤(五所川原商業)
塩見(四天王寺) 3−0 平川(遊学館)

2回戦から5回戦まで、一気に進行した女子シングルス。ベスト8決定戦となる5回戦が終了した。

地元・愛み大瑞穂のエース野村は、高い打球点で両ハンドを振り抜く富田・岡本の思い切りの良い攻撃に押され、ゲームカウント1−2の4ゲーム目も大きくリードされる展開。しかし、絶体絶命のピンチから「今年が最後、後悔したくない。最後まで自分を信じ抜いてやれた」(野村)と神がかりの逆転勝利をおさめた。

愛み大瑞穂からはもうひとり、非常に基礎レベルの高いカットプレーを見せる中田(玲)がベスト8。愛知・卓伸クラブの出身で、またも卓伸から楽しみなチョッパーが飛び出してきた。なんと言ってもカットの「音」がいい。低い打球点からでもしっかりボールをとらえ、確実に相手コートへカットを運んでいく。「インターハイのシングルスに出るのは初めて」というが、地元開催の大会で会心のプレーだ。

第1シードの岡崎に完勝した遊学館のスーパー1年生・相馬、カットからキレのある攻撃を見せる黒野もベスト8に勝ち上がり、ベスト8にカット型が3人残っている。遊学館の出雲は、4回戦で鈴木(四天王寺)に大苦戦しながらも勝ち上がり、この5回戦では桑原との左腕対決にストレート勝ちした。そして優勝候補筆頭の塩見は、ここまで1ゲームも落とさない圧巻の強さを披露している。
  • 野村は大逆転勝ちでベスト8入り

  • 守備範囲が広く、正確なカットを見せる中田(玲)

  • 武蔵野の黒野、キレのあるカットと攻撃を展開

●男子シングルス5回戦
戸上(野田学園)3−0 曽根(愛工大名電)
岩永(帝京安積)3−1 手塚(静岡学園)
星(鶴岡東)3−0 宮川(野田学園)
手塚(明徳義塾)3−1 蘇健恒(学館浦安)
田中(愛工大名電)3−0 浅利(遊学館)
田原(愛工大名電)3−0 中橋(鶴岡東)
加山(愛工大名電)3−0 上村(大阪桐蔭)
金光(大原学園)3−0 石沢(聖和学園)

男子シングルスベスト8が出揃った。
戸上は曽根と見応えのある打ち合いを展開。大きいラリー展開勝負どころで攻めきった戸上がストレートで勝利。
「すごく緊張して昨日はあまり眠れなかった。2回戦は緊張していて、いいプレーができなかったが、3回戦の松下さん(宮崎商業)の試合くらいから調子が上がっていって、次の川村さん(遊学館)の試合を乗り越えられて、いい形で曽根戦ができました。
 優勝!というと、上を見すぎているので、目の前の試合を頑張りたい」(戸上)

試合での暴れん坊ぶりが嘘のよう。コメントははみ出さない優等生だ。
そして話している時に一度も視線を外さず、まっすぐにこちらを向いていた。
芯が通った目は、「明日もやってやる」と言っているようだった。
  • ギアが上がった戸上。曽根を一蹴

  • 手塚も難敵に勝利して8強入り

 インターハイの観客席で、3つの学校のTシャツを着替えながら、元気に応援しているお母さんがいる。自身も91年の浜松インターハイに地元・誠心高から出場し、中央大でも選手として活躍した沼野(旧姓:大森)あゆ美さん。長女・薫さんは広島・進徳女子高3年、次女・朱里さんは埼玉・正智深谷高2年、そして三女・有希さんは山梨・日本航空高1年。それぞれ強豪校の一員として腕を磨き、ここ豊田の地に集まった。

 静岡・ファミリースポーツ少年団で卓球を始めた三人の娘さんが、インターハイで顔を揃えるのは今年が最初で最後。「一生に一回のことだし、他の誰にも味わえないことだから、自分の中でもワクワクしていました」(沼野さん)。

 沼野さんは小さい頃から父・健良さんに厳しく鍛えられ、地元で迎えた浜松インターハイでは勝つことがすべてだったという。「高校時代までは、実は卓球は嫌いでした。社会人になって、卓球ってこんなに楽しいのかと思ったんです。だから娘たちには、卓球を嫌いになってほしくなかった。進路も自分たちで選ばせました」

 旦那さんの正博さんも駒澤大卒で、マスターズなどの全国大会でお馴染みの名選手。「今大会、個人戦に出られたのは三女だけですけど、こうやって全国大会で集まれるというのは中々ないこと。本当に幸せだなと思いますね。たくさんの方のご指導とご協力のおかげです」。

 「高校時代は苦しいことも多いけど、『卓球をやってきて良かったな』と思ってほしい。スポーツをやっていないと味わえないものがありますから」とあゆ美さんは言う。少しの寂しさを残して、二度と来ない沼野家のインターハイは終わろうとしている。それでも卓球と紡ぐストーリーは、これからもずっと続いていくだろう。
  • 沼野正博さんとあゆ美さん、三人の娘さんとインターハイで集合

  • 3つの強豪校のTシャツ