スマホ版に
戻る

中国リポート

トップニュース中国リポート
 5月3日に山西省・太原市で行われた国家チームの部内対抗戦。夜に行われたメインイベントが、男子の五輪代表チームvs.若手選抜チームの対決だ。王皓・馬琳・王励勤のトップ3に、ダブルスのスペシャリスト・陳杞、若手実力No.1の馬龍、そして成長著しい張継科の若手トリオが挑んだ。結果は以下のとおり。

[国家藍隊 3-2 国家紅隊]
 張継科 8、-5、-10、-4 王励勤○
○陳杞 8、-8、9、14 馬琳
○馬龍/陳杞 8、-9、10、8 王励勤/王皓
 張継科 -8、10、-5、-9 王皓○
○馬龍 -6、6、9、8 馬琳

 トップの王励勤vs.張継科は、張継科が第1ゲーム7-1とスタートダッシュをかけて先取したが、第2ゲーム以降は王励勤が気合いを入れ直した。勝負の要となる第3ゲームをデュースで制した王励勤が先制点を挙げる。
 続く第2試合。先月18日に行われた部内対抗戦で、王皓を破った陳杞が再び大当たり。豊富な運動量でパワードライブを連発し、馬琳に主導権を渡さなかった。第4ゲームは14-14までもつれたが陳杞が競り勝った。
 陳杞はこの勢いに乗り、ダブルスでも第1ゲーム8-1でリードし、第4ゲームも7-10とゲームポイントを奪われてからの5本連取で大逆転。世界戦ザグレブ大会2位の王励勤/王皓ペアを退けた。06年のITTFプロツアーグランドファイナルでは馬龍/ハオ帥のペアが優勝しているが、馬龍/陳杞のダブルスはそれをしのぐ強さがある。中国のエースダブルスに成長していくだろう。
 4・5番では、王皓がバックハンドが強い張継科をも上回る裏面ドライブで勝利を収めたが、ラストでプレッシャーのかかった馬琳が馬龍に完敗。五輪代表チーム、馬琳のまさかの2失点で、またしても若手選抜チームに敗れた。

 すでにインターハイや全国中学校大会などの団体戦では常識中の常識だが、4シングルス1ダブルスの試合方式では、ダブルスが勝利の鍵を握っている。どんな強豪チームでも、ダブルスが弱点だと予想外の苦戦を強いられる。王皓・馬琳・王励勤の3人はどう組んでも世界トップクラスだが、かつての王涛/呂林や孔令輝/劉国梁のような、ダブルスとしての完成度はない。打倒・中国を狙う他のチームとしては、やはりダブルスに突破口を見出すほかなさそうだ。

 中国リポート、ただいま情報の配信がロビング状態になっておりますが、間もなく伝統の前陣速攻が復活いたします。どうかご容赦ください…。

 Photo上・下:五輪代表チームを正面から寄り切った陳杞と馬龍
 5月3日、国家卓球チームは山西省太原市で男女チームの部内対抗戦を開催した。一般に公開され、入場料も発売されたこの試合、100元(約1,500円)~600元(約9,000円)とチケットはかなり高額だったにも関わらず、5,000人を収容する濱河体育館が満員の入りとなった。ちなみにこの濱河体育館、今年1月の女子レスリングW杯で、女王・吉田沙保里選手の連勝が119でストップした会場なのだとか。

 3日午後に女子、そして夜に男子が行われた今回の部内対抗戦。男女とも五輪代表チーム(紅隊)と若手チーム(藍隊)の団体戦となった。五輪代表6人の中では、胡錦濤国家主席とともに6日に来日した王楠だけが出場せず。まず女子の結果は以下のとおり。

[国家紅隊 3-0 国家藍隊]
 ○張怡寧 3-1 丁寧
○李暁霞 3-0 范瑛
○張怡寧/郭躍 3-1 丁寧/饒静文
(※藍隊の「藍」は日本の藍色ではなく「青色」の意)

 若手チームの藍隊に右カット主戦型の范瑛を入れたのは、韓国やカット主戦型の多いヨーロッパを想定してのことか。また、世界ランク5位の郭炎は体調不良のため出場できず。丁寧と饒静文はともに若手の成長株だが、張怡寧・郭躍・王楠 vs. 李暁霞・郭炎・范瑛というベストの対戦から比べると、ややレベルが下がった感は否めない。
 トップ張怡寧は北京首創の後輩である丁寧に3-1で勝利し、2番李暁霞もパワードライブで范瑛を粉砕。ダブルスの張怡寧/郭躍も危なげなく勝利を収めた。張怡寧と郭躍は今年3月のカタールオープンでペアを組んで優勝しており、ペアリングの経験は少なくても、個々のレベルの高さでカバーできているようだ。

 新旧の世界チャンピオン3人を揃え、史上最強の陣容とも思える中国の女子五輪代表チーム。しかし、わずかな弱点もある。ダブルスの柔軟性がないことだ。サウスポー同士の王楠と郭躍はペアリングが悪く、超級リーグやプロツアーでの組み替えの中でも実現した記憶がない。張怡寧・郭躍・王楠の中国女子チームは、張怡寧/王楠のダブルスに郭躍のシングルス2点というオーダーにほぼ固定されてしまうのだ。張怡寧/王楠のダブルスを崩してまで、王楠をシングルス2点起用する理由は考えにくい。
 もちろん、郭躍をシングルス2点起用するオーダーは、それに固定されると同時にベストのオーダーでもある。しかし、それぞれに故障を抱えている3人だけに、誰かひとりが故障や不調に見舞われた場合、思わぬもろさを見せる可能性もある。

Photo上:健在ぶりをアピールした張怡寧
Photo下:久々にその名前が登場した范瑛。チームを応援するためにバルーンを膨らませております…。今年2月の広州大会にて
 5月11・12日の2日間、北京市で「2008中国超級リーグ」の「摘牌大会(ドラフト会議)」が行われる。
 これは主として、ある程度自由にクラブチームを移籍する権利を持った、「自由人」と呼ばれる世界選手権・五輪のチャンピオンを対象としたもの。その他、国家チームの準主力級の選手もドラフトにかけられる。
 今回の「摘牌大会」には、いくつかの改革がある。まず、これまでは選手にはクラブの選択権が与えられていなかったが、今年から選手が移籍を希望するクラブを3つ選択し、その3つのクラブが落札希望額を提示。最も高い金額を提示したクラブが、その選手を獲得するというシステムに変わった。金額が関わってくるので一概には言えないが、部分的な逆指名権が認められたことになる。また、選手の保有権も1年から2年に延長されている。

 今回のドラフト会議では、「自由人」を1人だけ保有しているクラブは、必ず「自由人」の選手をドラフトにかけなければならない。男子で「自由人」を2人以上保有しているクラブはないため、国家チームの主力級選手がすべてドラフト会議に登場してくる。一方、女子は「自由人」を2人以上保有しているクラブが2チームある(張怡寧・郭炎の北京首創、王楠・郭躍の遼寧鞍鋼)。このような場合、クラブはどちらか片方の選手にプロテクトをかけることができ、もう片方の選手をドラフトにかける。各クラブのメンバー構成は、昨シーズンとはがらりと異なってくるだろう。

 また、男子の王皓・馬琳・王励勤・陳杞・馬龍らトップクラスの選手には、140万元(約2068万円)という最低入札価格が設定された。一昨年の摘牌大会で馬琳が501万元(約7500万円)という過去最高額で落札され、昨年は入札価格を抑える動きが見られたが、今回はむしろその逆。札束が飛び交うド派手なドラフトになる可能性もある。各クラブの経済力の差が、如実に戦力差となって現れる一方、クラブ側には他のクラブとの競合をかいくぐりながら、バランスのとれた戦力を確保するビジョンが求められる。

 国家的事業である北京五輪の閉幕後、10月にスタートする「2008中国超級リーグ」。これまでは戦力を平等に分配して選手の強化を図る、いわば部内リーグのような役割を果たしていたが、今回のドラフト会議にはいよいよ商業化への大きな方針転換が感じられる。外国籍選手の加入もフリーになり、名実ともに世界最高峰の国内リーグとなるのか。

Photo上:超級リーグでは優勝請負人と言われる馬琳。男子のドラフトの目玉か
Photo下:女子ではこの李暁霞が最高入札額となりそうだ
 4月28日、スペイン五輪委員会は北京五輪でスペイン選手団が着用する公式スーツ・ユニフォームを首都マドリッドで発表。情熱の国らしい真紅のスーツに身をまとい、この席上に姿を現したのが御年45歳の何志文だ。
 すでに今年1月、世界ランキングによる自動出場枠を獲得し、五輪出場を決めている何志文。五輪を直前に控えた現在でも、練習時間は1日1時間程度だという。それでいて、欧州のトップ選手のパワードライブをいとも簡単にブロックしてしまうのだから、ある意味では驚愕(きょうがく)のセンスの持ち主だ。04年アテネ五輪では決勝トーナメント1回戦でブラシュチック(ポーランド)にゲームオール9本で惜敗しているが、北京五輪ではどこまで勝ち上がるか。観客からも大きな声援を浴びるだろう。

COLUMN- 北京五輪へ外堀を埋めにかかる「李寧」

 今回の公式スーツ・ユニフォーム発表会に先立って、昨年7月にスペイン五輪委員会とオフィシャルサプライヤー契約を結んだのは、中国の「李寧(リィニン)」。これまでに中国リポートでもたびたび取り上げているが、84年ロサンゼルス五輪・体操競技で3枚の金メダルを獲得し、「体操王子」と言われた李寧氏が立ち上げた大手スポーツメーカーだ。

 3年前、アディダスやナイキと北京五輪のオフィシャルパートナーの座を争った李寧だが、05年1月にアディダスが50億円以上と言われる巨額の提示によってパートナーの権利を獲得。中国選手団ががセレモニーで着用する公式ウェアや、大会役員・ボランティアのユニフォームはアディダスが担当する。一方、ナイキもそれに対抗するべく、中国から北京五輪に出場する28競技のうち、22競技の協会とウェアのサプライヤー契約を締結した。
 母国で開催される歴史的な五輪にも関わらず、役員や選手たちは海外の有名ブランドを身にまとう。当時はまだ現在ほどの資金力がなかった李寧は、はやばやと本丸を乗っ取られてしまったのだ。

 そこで李寧は、中国国内では卓球や体操、射撃に飛び込みなど、金メダル獲得が有力視される競技のスター選手とスポンサー契約を結び、五輪ムードに乗じて「アンブッシュ・マーケティング(タダ乗り広告)」を展開。さらに中国中央電視台(CCTV)とも契約を結び、スポーツニュースに登場するキャスターや記者は、李寧のロゴが入ったジャケットやシャツを着用するようになった。これらの広告活動の成果か、中国では李寧を五輪のオフィシャルパートナーと誤認している人がほとんどなのだとか。

 一方で、李寧は他の国の五輪委員会とも、矢継ぎばやにスポンサー契約を締結。上で述べたスペイン五輪委員会に加え、すでにスイスやスウェーデンの五輪委員会とも契約している。その他にもアルゼンチンバスケットボールチーム、ベトナムサッカーチーム、そしてアメリカ卓球チームなど代表チームとの契約も数多い。
 乗っ取られたかに見えた本丸に陽動作戦をかけ、海外の五輪委員会と手を結ぶことで外堀を埋め、巨大スポーツメーカーに対抗している李寧。その株式時価総額では、すでにナイキ・アディダス・プーマに次ぐ世界第4位のスポーツブランドに成長している。

Photo:広州大会会場に設置された李寧のブース
 4月18日、中国人民解放軍・国防大学で、「2008北京国際軍人フレンドシップ卓球大会」が行われた。海外からは、北京に駐在しているアメリカ、韓国、イタリアなど21カ国から武官・副武官をはじめ28人が参戦。昨年度大会は17カ国・23名の参加だったというから、よりインターナショナルかつ盛大(?)なものになっている。一方、中国人民解放軍からは総政治部・総後勤部・総装備部の三総部や、海・空軍、人民武装警察部隊などから多数が参戦した。

 結果は人民解放軍の精鋭たちが上位を独占したが、フレンドシップの冠名どおり、笑顔の絶えない大会になったようだ。身体の直接的なコンタクトがなく、運動量を各自で調節できる卓球は、このような軍人同士のレクリエーション大会には最適だろう。スポーツによっては、エキサイトした軍人たちの怒号が飛び交い…ということになりかねない。
 軍隊のキャンプや戦場でも、卓球は手軽な娯楽として親しまれてきた。それはトップスポーツとしての卓球とはまた異なる、優れた側面のひとつだ。

 ちなみに軍人ということでは、人民解放軍で最年少の将軍である王涛(96年アトランタ五輪銀メダリスト)や、世界ランキング1位の王皓にも参戦の資格があるが、さすがにゲストとして招かれることはなかったようだ。
 中国人民解放軍は中国共産党の軍事部門で、正確には国軍ではなく党軍だが、実質的には国軍として扱われている。軍隊ではあるが、卓球やバスケットボールをはじめとしたスポール選手、映画監督、詩人、音楽家から舞踏家まで、数多くの人材を抱える。日中文化スポーツ交流年だった昨年10月には、中国人民解放軍交響楽団が来日、東京で演奏会を開催している。

Photo:現役軍人である王皓。昨年の「拓展訓練(自己開発訓練)」で勉強中のひとコマ
Photo:…この人は本物の軍人ではありません。同じく昨年の「拓展訓練」より

◇写真提供:月刊『Pingpang世界』(中国)
 4月16日、さまざまなスポーツの訓練基地が並ぶ山東省秦皇島市で、北京五輪を記念して製作される映画『国球女孩(グオチュウニュウハイ)』がクランクインを迎えた。『国球女孩』は直訳すると『卓球少女』。実にストレートなタイトルだ。

 この映画は行政機関である国家広電総局と国家体育総局、制作会社である北京伝奇時光文化伝媒有限公司による協同製作。○○周年などを記念して作られる「献礼片」と言われるアニバーサリーフィルムだ。

 公表されている大まかなストーリーは、それぞれ違う場所で生まれた三人の卓球を愛する少女が、さまざまな困難やライバルに立ち向かいながら国家チームに入り、チームメイトとして、そして親友として祖国のために戦いながら、相次いで「大満貫」を達成するというもの(大満貫=五輪・世界選手権・ワールドカップのタイトルを獲得すること)。「大満貫」を達成したのはこれまでに劉国梁、王楠など数えるほどしかいないのだが、3人も立て続けに達成してよいものか…。タイトルもストレートならば、ストーリーもまたサクセスストーリーの王道だ。

 卓球少女3人のうちのひとりには、清楚なルックスで映画などで売り出し中の19歳・張檬。彼女の恋のお相手には183cmでスタイル抜群の周一圍。そしてなんと国家チームのチームメイト・王暁楠(!)役として、国家チームの現役選手も出演するとのこと。タイトルに「国球」の名を冠するからにはと、ヒロインの張檬らはすでに卓球の猛特訓中だ。『国球女孩』は7月公開。五輪ムードが最高潮に達している時期とあって、意外に人気を集めるかもしれない。

Photo:「王暁楠」とは何ともニヤリとさせられるネーミング。まさか五輪代表のこの人の出演はないだろうが…
 4月18日、国家女子1軍チームvs.国家男子2軍チームの一戦に続いて、午後には男子1軍チームの熱身賽(エキシビション・マッチ)が開催された。五輪代表チーム(国家紅隊)vs.若手チーム(国家藍隊)の対抗戦だ。試合結果は以下のとおり。

[国家藍隊 3-2 国家紅隊]
 馬龍 -10、-5、-4 王励勤○
○陳杞 9、9、-6、9 王皓
 邱貽可/許シン -6、-5、9、-5 王励勤/馬琳○
○張継科 6、5、-10、-9、8 馬琳
○陳杞/馬龍 4 王励勤/馬琳  ※第5試合は1ゲームのみ

 馬琳が張継科に敗れ、2-2となった時点で、決着をつける第5試合(1ゲームのみ)の試合方式を藍隊が選択。藍隊はダブルスを選び、陳杞/馬龍が王励勤/馬琳を一蹴して決着をつけた。男子2軍に敗れた女子チーム同様、五輪代表チームが結果を残すことができなかった。

 トップに出場した王励勤は、先週行われた二度の隊内試合(シングルスとダブルス)でいずれも優勝。国際試合では五分の戦績と言って良い馬龍をストレートで下し、改めて好調ぶりをアピールした。しかし、2番で出場した王皓は1・2ゲームの勝負どころでレシーブが甘くなり、強烈な3球目攻撃を誇る陳杞に主導権を握られて1-3で敗れた。対戦成績では圧倒的に有利な相手だっただけに、王皓にとっては痛恨の敗戦。王励勤が作った流れを帳消しにしてしまった。
 紅隊は4番でも、馬琳が張継科に金星を献上。第3ゲーム6-10とマッチポイントを握られてから6本連取で大逆転したものの、最終ゲームは終始リードを許す展開となった。こうなれば藍隊はダブルスのスペシャリスト・陳杞の存在がものを言う。一気に走った陳杞/馬龍がなんと9-0とリードを奪い、一方的な展開で王励勤/馬琳を下した。

 試合後の記者会見で、男子チームの劉国梁監督は2番で敗れた王皓に対し「試合の様子から見ると、五輪に出るべきなのは王皓じゃないな。陳杞だね」と酷評。「王皓のプレーは最悪だったよ。まったく試合に集中できていなかったし、覇気というものがない。あんな闘志のない目つきをして、どうやって五輪を戦えるって言うんだ??」とその怒りは収まらない。
 北京五輪が刻々と近づく中で、世界ランキング1位に君臨する王皓が見せた悪癖。劉国梁監督ら首脳陣が最も恐れているのは、それまで一度も敗れたことのない柳承敏に吹き飛ばされた、04年アテネ五輪男子シングルス決勝の再現だろう。

Photo上:国家チームの暴れん坊・陳杞が存在感を見せつけた
Photo下:劉国梁のキツいお叱りを受けた王皓。五輪まで気の抜けない日々が続きそうだ…
 4月18日、「2008茅台集団中国卓球チーム・エキシビションマッチ」が北京市の国家体育総局卓球場で行われた。「茅台集団」とは、国賓との祝宴などに供される中国随一の銘酒「茅台酒」で有名な、貴州省にある酒造会社だ。(中国リポート2007/10/25[中国卓球チーム、茅台酒で乾杯!]参照)
 隊内試合とはいえ、観客やテレビカメラを入れて、実戦さながらの緊張感で行われたこのエキシビションマッチ。女子1軍チームの試合形式は異例中の異例。なんと国家男子2軍チームとの対戦となった。07年ザグレブ大会前のエキシビションマッチでも、張怡寧が韓国の金キョン娥・朴美英らを想定して上海男子チームのカットマン・胡冰涛と対戦したことがあるが、団体戦での対戦はここ数年では記憶にない。結果は以下のとおりとなった。

[国家男子二軍隊 3-1 国家女子一軍隊]
○閻安  3-2  王楠
○方博  3-1  郭躍
 宋鴻遠 1-3  李暁霞○
○方博  3-0  王楠

 故障の張怡寧を欠いたとはいえ、なんと世界最強を誇る中国女子チームが男子の2軍チームに一蹴されてしまった。
 トップの王楠は、雰囲気に飲まれた閻安から1ゲームを先取し、第2ゲームも10-7でゲームポイントを握ったが、ここから開き直った閻安に逆転を喫した。2番に出場した郭躍も、方博にドライブの威力と回転量の差を見せつけられて完敗。
 唯一の勝利を奪ったのが、3番に出場した李暁霞。第1ゲームを8本で落としたものの、第2ゲームから男子顔負けの威力ある両ハンドドライブを連発、ジュースとなった第4ゲームも13-13から2本連取して競り勝った。しかし、4番では王楠が方博に第1・2ゲームとも逆転され、第3ゲームは凡ミスを連発して万事休す。

 女子1軍チームから2点を奪った方博は、06年アジアジュニア・カデット団体で上田仁、松平健太に連敗。その後ジュニア代表にも選ばれていない選手だ。トップで王楠を破った閻安も、07年世界ジュニア準々決勝でパイコフ(ロシア)に完敗している。
 男子選手のパワーと強力な3球目攻撃に対し、王楠のようなラリー志向の女子選手が不利になるのは確かだろう。中国女子チームが目指している「プレーの男性化」も、まだ過渡期にあるということなのか。04年世界団体ドーハ大会で張怡寧を破り、王楠をあと一歩まで追いつめた梅村礼(現文化シヤッター)のプレーを思い出さずにはいられない。

Photo上:郭躍、王楠を連破した右シェークドライブ型の方博(06年アジアジュニア)
Photo中:トップで勝利し、チームを勢いに乗せた閻安(07年世界ジュニア)
Photo下:2失点を喫した王楠。しかし落ち込んでいる暇はないだろう(07年プロツアーファイナル)
 次第に開幕の日が近づいてきた北京五輪。卓球競技も各大陸予選がすでに終了し、5月8~11日の世界最終予選(於:ハンガリー・ブダペスト)を残すのみ。五輪代表枠は男女ともに64で、世界最終予選の出場枠は男女とも3。その他の61の代表枠は、国内オリンピック委員会の承認を得ていない選手がいるものの、ほぼ確定している。

  これまでに出場を決めた61人の選手のうち、中国および中国からの帰化選手が何人いるか、男女ともカウントしてみた。チャイニーズタイペイの荘智淵と黄怡樺は台湾出身で扱いが難しい選手だが、中国国家チームや超級リーグで腕を磨いたことを考慮して中国選手の中に加えた。すると、男子では16人、女子ではちょうどその倍の32人の中国系選手がいる。男子では全体の1/4、女子は全体の1/2が中国系選手なのだ。

 男子はともかく、女子の全体の1/2というのはかなり異様な数字だろう。昨年末のITTFプロツアー・グランドファイナルで出場16選手中13人が中国系選手だったのも異様だったが、各国3名までしか出場できない五輪で、ひとつの国の出身者が過半数を占めるというのは他のスポーツでは想像できない。
 加えて、世界最終予選にも男女各6名の中国系選手が出場する。参加資格が認められた女子の帖雅娜と林菱(ともに中国香港)に加え、男子の張ユク(中国香港)、ヤン・ミン(イタリア)、ワン・ツォンイ(ポーランド)、女子のミャオ・ミャオ(ニュージーランド)、バーテル(ドイツ)と強豪が揃う。また、パスポートを取得していなかったため、世界ランキングによる自動出場枠をボージック(ドイツ)に譲ったション・イェンフェイ(スペイン/世界ランキング36位)も出場者リストに入っている。

 現在、国際オリンピック委員会は肥大化した五輪の縮小を進めている。卓球の普及度を考えれば、五輪種目から外される可能性は低いが、「発展性の低い競技」と見なされる危険性は否定できないだろう。

Photo上:左シェーク異質速攻型のション・イェンフェイ。パスポートをギリギリで取得できたのか…?
Photo下:オセアニア予選では思わぬ不調で代表権獲得を逃したミャオ・ミャオ。故郷に錦を飾ることができるか
 先週、帖雅娜らの出場問題に揺れた香港で2008全香港ジュニア選手権が開催された。女子15-17歳のクラスで優勝したのは16歳の管夢圓(香港U-21ランク6位)。87年世界選手権女子シングルス3位の管建華(※1)の娘さんだ。プレースタイルはカット主戦型のお母さんとは違ってシェーク攻撃型。準決勝で優勝候補の呉頴嵐(香港U-21ランク2位)との一戦を3-1で乗り切り、決勝では載欣琳(香港U-21ランク3位)を3-0で一蹴するなど、格上の選手たちを連破して優勝を飾った。また、男子の15-17歳のクラスでは、14歳ながらひとつ上のクラスに参戦した趙頌煕が優勝した。

 本土出身の選手がチームの主力で、地元出身の選手がなかなか育ってこない香港。04年アテネ五輪での李静/高礼澤の銀メダル獲得などで、Doスポーツとしての人気は高いのだが、やはり子どもには学歴を求める親が多く、長時間の練習は敬遠されてしまうようだ。現在のところ、純正・香港選手のホープは3月のアジアカップにも参加した女子の于國詩。本格的な強化練習をはじめたのは19歳からだが、現在世界ランキング133位とランキングを急上昇させている。

 ※1=管建華 グァン・ジェンホア ……1962年生まれ、山西省出身。右シェークカット主戦型。74年に山西省チームに入り、のちに荘則棟のコーチを受けて急成長。87年世界選手権女子シングルス準決勝で何智麗(小山ちれ)と対戦し、チーム首脳陣は管建華の勝利を指示したが、試合は何智麗が勝利した。81年世界選手権優勝の童玲(中国)以降、女子シングルスのタイトルに最も近づいたカット主戦型。

Photo:残念ながら娘さんの写真はありませんが…、87年世界選手権での管建華のプレー