リンダとリンダ遠藤さん

妻は英会話に私以上に苦労しているようである。小学校の先生(50才ぐらいの女性)が教え子の結婚式に出ると言っているのを本人の結婚式だと思い込んで勝手に驚いてみたり、スーパーマーケットで酒を買おうとして生年月日を聞かれて住所を答えてしまったことに家に帰ってから気がついたりと、なかなか忙しい。自分で言いたいことは無理やり言えるのだが、なにしろ聞けないのだ。店員が値段を言う。店員は数字しか言わないとわかっている、その限定された状況でさえ、その数字が聞き取れないのだ。難しいものである。

その中でも傑作なのがリンダ・遠藤さん事件である。お向かいのリンダさんと話していると、妻の状況を見かねたリンダさんが、知り合いにリンダ・遠藤さんという日本人がいるから紹介してやると言ったそうである。それなら英語も日本語も話せるので、さぞ効率のよい英語習得ができるだろうと妻は楽しみにしていたのである。ところがその後、その話をするとどうにも話が食い違い、何かがおかしい。そして最終的に判明したのは、リンダさんが知っている人とはリンダ・遠藤さんではなくて、リンダ・アンダーソンというアメリカ人であり、彼女が日本人を知っているという話だったのである。その日本人は我々がすでに知っている私と同じ会社の人であった。

考えてみれば、一般のアメリカ人が「遠藤さん」などと「さん」をつけるわけがなかったのである。それにしてもまた「リンダ」だ。山本リンダっていうのもいたが。