月別アーカイブ: 6月 2017

審判のファインプレー

ジャパンオープンの男子ダブルス準決勝で、信じがたい審判のファインプレーがあった。

馬龍/許シン vs 樊振東/林高遠

の3ゲーム目の4-2の場面でそれは起こった。

プレー領域にハエが紛れ込み、馬龍がこれをラケットで何度か払おうとしたのだが、当然のことながら、そんなことでハエを追い払えるはずもない。

と、そのとき、副審を務めていた今野啓がすっくと立ちあがり、近づいたと思ったら、なんと

一発でハエを掴んでしまったのだ。

これには馬龍は笑い、許シンは固まったという。

知らない人が見たら、ハエ掴みの達人かと思うだろが、実は啓さんは過去にハエを手づかみした経験は一度もないという(誰でもそうだと思うが)。

国際大会での審判という重責ゆえに、火事場の馬鹿息子、いや、馬鹿力で実力以上を出したのだろう。

「ハエを手づかみにした達人的審判」として、今野啓の顔は馬龍と許シンの海馬にしっかりと刻み込まれたことであろう。

羨ましいことだ。

東京五輪で混合ダブルス追加!

東京五輪で混合ダブルスが正式種目として採用されることが、あたかも朗報のように報道されていた。

それで「中国は目の色を変えるかも?」なんて言ってる。吉村と石川が金メダルを獲ったからチャンスだと言わんばかりだ。

ううむ。どこまで事情を知って言っているのかわからないが、なんとも微妙な気持ちだ。

吉村/石川ペアが混合ダブルスで金メダルを獲った理由は、もちろんこのペアが強いからだ。しかし、もうひとつテレビが語らない要因がある。

混合ダブルスには中国ペアが出ていないからだ(方博がドイツ選手と組んだけだ)。中国は混合ダブルスが弱いわけではない。弱いどころか、女子が強いために混合ダブルスも恐ろしく強いのだ。

かつて、エントリー数が多いときは混合ダブルスと女子ダブルスの両方ともベスト4がすべて中国だったし、へたするとベスト8のうち6ペアまでが中国で、残りの2ペアは元中国選手というのが普通に見られた。

それが2009年横浜大会から、中国はダブルスから主力選手を外したり、国際ペアを組ませたり、出るペアを極端に減らしたりして(1ペアだけとか)、あからさまに他の国にメダルを譲ろうという「外交」を始めたのだ。

東京五輪で混合ダブルスが正式種目になったとき、中国が「目の色を変える」とすればそれは、通常の意味である「必死になる」ということではなくて「獲りに行く方針にする」というだけのことなのだ。そうならないことをアテにして「東京五輪は混合ダブルスの連覇が期待できます!」と言っているわけだから、なんとも失笑させられる。

もちろんそれでも連覇できる可能性はあるが、ものすごく厳しい戦いになるだろう。

だって、中国が本気出したら「馬龍/丁寧」「樊振東/劉詩雯」「許昕/陳夢」など、陳夢どころか悪夢のようなペアがぞろぞろ出てくるんだから、どうするんだこんなもん。

中国がその気になれば、実はもっとも金メダルが絶望的な種目が混合ダブルスなのだ。

「チョレイ!」の語源

張本の掛け声が取りざたされているが、不思議なのは誰もその語源について推測さえ言わないことだ。

現在、全国レベルの男子卓球界で「チョレイ!」「ジョレイ!」「ショレイ!」「ジョライ!」などが流行しているわけだが、普通に考えればこれは「ショー」「シャー」になんとなく「レイ」「ライ」などをつけたものだろう。あえていえば「ショー、オラー」とでもいう感じだろうか。

そしてもちろん「ショー」「シャー」の語源は「よっしゃ」であり、つまりは「よし」にその端を発している。もちろん愛ちゃんの「サー」も同源でありいわば従妹である。

卓球が日本に伝来して100年以上経つわけだが、純然たる日本語の「よし」が、選手本人さえわからない形に装いを変えて今に生き続けているわけだから、感動的ではないか。

ちなみに、ヨーロッパ卓球界では「シャー」「ショー」「ヨー」が掛け声の定番だが、これはかつて日本が世界制覇をしたころに、日本で卓球修行をした選手が真似をしたのが広がったものだ。

かつて実況中にこれを聞いたアナウンサーが「人間が気合が入ったときに出る声は世界共通なんですねえ」と言ったものだったが、そういうことではなくて卓球界共通なのだ。

私がテレビの前で歯ぎしりしたことは言うまでもない。

ドイツの英雄はどいつだ

丹羽がオフチャロフに勝ったことがテレビで報じられているが、いずれもオフチャロフを「ドイツの英雄」と言っている。

いつからオフチャロフがドイツの英雄になったのだろうか。

ボルはどうする。

英雄を使ってしまったらボル様を何と言う気だ。

今から心配だ。

丹羽の個性

丹羽がついにやった。オフチャロフロフを破ってベスト8に入ったのだ。

監督に声を出せと言われても出さなかった丹羽が、最後にガッツポーズをしたようだが、あくまで丹羽らしくやってほしい。やる気がないのかと批判されてもまったく気にせず蛙の面に小便というのが丹羽の真骨頂なのだ。

それほどの心臓だからこそオフチャロフのドライブをオールフォアでカウンター(成立するのかそんな戦術!)できるのだ。

今後も声を出せとかガッツポーズをしろとか寝言を言われると思うが、そんなものはガン無視してやってほしい。丹羽が声を出したらそれは超絶カウンターができなくなったときであり、終わりのときなのだ。

テレビ東京のネット配信では、解説者が「丹羽の卓球は6次元卓球だ」と面白いことを言っていた。何が6次元かと言うと、前後左右上下で6次元だそうだ。

これはまいった。左右を2次元分に数えてしまうとは、凄まじい個性である。コロンブスの卵的発想といおうか瓢箪から駒といおうか、馬耳東風といおうか、とにかく驚愕させられた。

ライジングカウンタードライブの許容誤差

テレビを見ていたら、平野が丁寧のドライブを前陣でカウンターする様子を横方向から映した画像が流れた。

コマ送りをしてみると、ラケットの角度、ボールの軌跡、スイングの方向がうまいぐあいにわかるような画像だったので、測定してみた。

すると、ラケットの角度はボールの軌道に対して43.5度、スイング方向は46度だった。つまり、飛んでくるボールに対して約45度の方向にほとんど面の方向にスイングしているのだ。

これはとんでもなく困難なことだ。

どういうことか。この映像はスロー再生だったし露出時間もわからないのでスイングの速さは正確にはわからないが、これまでの他の測定からだいたい時速30km程度だと思われる。これは秒速8.3mだ。ということは、0.01秒間に8cmの速さでボールの軌道を45度の角度で横切る打ち方をしていることになる。

ラケットの幅は約15cmだから、約0.02秒の誤差しか許されない正確さでスイングしなくてはラケットに当たらないということなのだ。当たるといっても、端に当たったのでは入らないのだから、実際にはその半分程度の誤差しか許されないだろう。

なぜ普通に真っ直ぐ当てないで、こんな空振りスレスレの打ち方をするかといえば、回転をかけたいからだ。激しい前進回転がボールの軌道を丸め、ネットを越した後に台に入ることに役立つからだ。遅いボールなら回転などかけなくても重力で落ちてくれるので台に入るが、なにしろ丁寧の反応時間を破るほどのスピードのボールを打たねばならないのだから、回転をかけなかったらボールは真っ直ぐに飛んでいって台に入ってくれない。

速いボールを台に入れるために激しい前進回転がどうしても必要なのだ。

どこにくるかわからない相手のボールのコースと回転量を判断してラケットの角度を出して0.02秒の誤差で振り抜く。そんなこと人間にできるのだろうか。

できるから平野はやっているわけだ。そして、ひとりができてそれが可能であることを示すと、他の選手もどんどんできるようになるのがスポーツの常だ。

まったく凄い世界だ。

ちなみに、面の方向とスイングの方向が2.5度違っているわけだが、その影響も考慮して許容誤差時間を真面目に計算すると、0.020秒となった。なお、ボールの速さは時速30km、ラケットの幅は152mmとした。

説明は省略するが、暇な人は眺めて見てほしい。

そのうち、きちんとスーパースローカメラで真横から撮影して正確な測定をしてみたいものだ。ああ面白い。

平野、52年ぶりの中国越えならず

48年ぶりではない。52年ぶりなのだ。もしも平野が丁寧に勝って優勝すれば。

それは、日本選手が「中国選手を破って」優勝するのが52年ぶりと言う意味だ。

たしかに日本人の優勝は48年ぶりだが、48年前に小和田敏子がミュンヘンで優勝した1969年は実は中国は文化大革命のため世界選手権に参加していない。その前の1967年ストックホルム大会も同様だ。

日本選手が世界選手権で中国選手を倒して優勝したのは、1965年リュブリアナ大会の深津尚子が決勝であの林慧卿を3-2でぶっ倒したのが最後なのだ。ゆえに52年ぶりとなる。ちなみにリュブリアナで深津が倒した林慧卿と鄭敏之は、それから6年後の1971年名古屋大会の女子シングルスで決勝を争っている(林慧卿の勝ち)。文化大革命によるブランクがあってもこの実力なのだ。深津の偉大さがわかろうというものだ。もっとも1971年名古屋大会の団体では小和田、大関、大場の3人で上記両名を屠って優勝しているわけだが。

それにしても丁寧は徹底していた。女子では世界で平野が最高であろうライジングカウンターバックドライブ(男子ではボルが世界一だろう)を、バックサイドから打たせなかった。徹底的にミドルにボールを集めた。平野がそれをやろうとすると、ミドルからのバッククロスはわずかにコースが短いためオーバーミスとなったし、入っても鋭角さが足りないため得点にならなかった。

また、丁寧のドライブの回転量が平野の想定をわずかに上回り、オーバーミスにつながった。

よって、丁寧の平野対策は、

・絶対に平野のバックサイドにドライブを打たないこと

・ドライブの回転量を増すこと

の2点だったと思われる。

もともとアジア選手権でも逆転で最終ゲームのギリギリで勝ったわけだから、今回、平野が勝っても負けても何も不思議なことはないわけだが、それにしても惜しかった。事実上の決勝戦だっただろう。

今後の平野の強化方針は、男子とやって回転量の多いボールを打つことと、ミドルに来たボールを「はいそうですか」とフォアハンドで打ち抜けるよう球威を増すことだろう(打法、用具を問わずだ)。まあ、当たり前のことではあるが。

惜しい解説

·同じく『直撃LIVE グッディ!』で、非常に惜しい解説があった。

ネット際に高く上がった水谷のロビングを張本が打ちこんで得点した場面だ。

解説では「張本が打ちこんでくると思って警戒して構えていた水谷に対して、張本は空いているコースに打ちこんで得点した」というのだ。

ところが実は張本がやったのはもっと高度なことなのだ。

張本は、一度ストップ、つまりネット際に落とすかのようなフェイントをかけているのだ。それが上の写真の場面だ。ラケットが完全に静止している。

これを見て前に突っ込んできた水谷に対して、そのままラケットを引かずに押し込むようにして打ちこんだからこそ、水谷は逆を突かれて反応できなかったのだ。

つまり張本がやったことは、スマッシュをするふりをしてストップするふりをして実はスマッシュをするという二段回のフェイントなのだ。こんなことまで身につけている恐るべき13歳だ。

こんなに解説しがいのある場面をなんともったいないことだろうか。

野球やサッカーのように観戦する文化が根付いていれば誰かが気がついたはずだが、卓球は急にバブルのように取り上げられているので、卓球を見る眼が追いついていないのだ。それにしてももったいない。

正しく解説すれば卓球ぐらい見て面白いスポーツもないのに。

言い過ぎか。

張本のチキータ

張本が水谷に勝ったことがいろいろな番組で取り上げられている。水谷の気持ちを思うといたたまれないが、水谷のコメントは王者の風格があったし、ともかく男子の卓球が取り上げられることは、卓球ファンとしては嬉しい限りだ。

数年前までのことを思えば本当に夢のようだ。

中には、卓球の技術的な解説をしようと頑張る番組もあって微笑ましいが、残念ながらまともな解説はほとんど見られない。

昨日のフジテレビの『直撃LIVE グッディ!』という番組では、張本のチキータと水谷のチキータの差を解説していたのだが、なんとも面白い放送だった。

張本と水谷のチキータの映像を並べて比べて画面に赤丸を表示して、その打点の違いに注目してほしいなどと言っている。「張本のチキータの方がネットの近くで打つ」というのだ。

ところがだ。その赤丸の位置は水谷の方がネットに近いではないか(笑)。

打球点も写真からはどちがネットに近いかは判断しがたい。

そもそも、テニスやバドミントンじゃあるまいし、卓球は台に弾んでからしか打てないのだし、チキータはその性質上、頂点付近でしか打ち得ないので、実質的に打球点は相手のボールで決まるのだ(バウンド直後にチキータ打てる奴がいたら連れてこい!)。

そして、そして、そもそもこの映像で張本がやっているのは、チキータではなく、普通のバックハンドなのだ!

以上、二重三重の間違いが凝縮された、非の打ちどころのない間違った解説であった。

卓球は確かに難しいが、これは・・・誰かに聞けばよかったのではないだろうか。

いや、そもそも打点の違いなどという発想がマニアックな卓球人の発想だから、恐らくこれは、卓球人から聞いた話を参考に、映像から該当しそうな部分を見つけて解説したものだろう。

したがって、聞かなかったのではなく「中途半端に聞いた」のが敗因とみた。