年別アーカイブ: 2017

昔の後輩

今日は、私の送別会に参加できなかった後輩Tくんの自宅に招かれた。後輩といっても10年以上前に他の職場に異動していった後輩だが、その異動の理由が今日明かされた。

Tくんは酒で数々の痛い目にあってきたという。あるとき、職場のK部長と先輩と酒を飲みながら麻雀をしたという。おそらく泊りの社員旅行か何かだと思われる。

一緒に麻雀をした先輩は普段はとても強いのに、その日に限ってやたらと弱く、部長に振り込むのだという。今思えば接待麻雀をしていたわけだ。しかしTくんはまったく遠慮せずにバンバン部長の牌で上がりまくり「Kさん、下手ですねー」とバカにしまくったという。するとそのK部長、本気で怒ってまったく口を利かなくなり、翌週月曜の朝に呼び出され「お前、飛ばしてやるからな」と言われたという。

そして何週間か後、本当に異動させられたのだが、さすがに麻雀が理由ではなく、それらしい仕事上の理由を説明されたという。

Tくんもまさか本当に麻雀が理由なわけはないだろうとずっと思っていたが、つい最近、当時の別の上司から「あれは本当に麻雀が原因だったんだ」と教えられたそうだ。

もっとも、Tくんはその異動先で今の奥さんを見つけたわけだから、人生何が幸いするかわからない。

Tくんは似たような失敗を他にもしていて、あるとき、他の職場の課長が受付嬢たちと合コンをしているのをたまたま目撃した。Tくんはその課長と口も利いたこともない間柄だったが、翌日「見ましたよー」と電子メールを送ったところ「あなたにそんなことを言われる筋合いはありません!」と本気で怒られ、なんと職場の上司にまで怒りの電話があったという。

これはしらふでメールを送ったわけだから、どうも酒に関係なくこの男は人を怒らせることが得意なようである。

私はといえば、入社して間もないTくんに「俺はこの会社にいるべきではない、卓球の仕事をしたいんだ」と力説し、卓球のビデオを強制的に見せていたという。私は全然覚えていないが、ともかく、そう言いながら28年も務め、やっとその日が来たわけだ。

うーん、いろいろと感慨深い。

古書『ピンポン使用法』

ヤフーオークションで古い卓球の本を買った。

『ピンポン使用法』という28ページばかりの冊子で、寺田清運動具部という、おそらく運動具店が発行した非売品だ。

発行年が書いていないのだが、巻末に乗っているルール集が大正十年制定とあり、最近の出来事として昭和2年の極東オリンピックの参加(したのか予定なのか不明)と書いてあるので、昭和初期あたりのものと思われる。

面白かったのは、グリップの紹介のところで「美術流」というのがあったことだ。なんでも、東京の美術学校の学生たちの間でポピュラーだったものだという。そういえば絵筆の持ち方に似ていなくもない。

サービスの回転のかけ方が凄い。フリーハンドでボールを押さえつけて出すのだ。そういえば私の祖母はこんな出し方をしていたものだった。昭和50年代だからとっくに禁止されていたはずだが(笑)。

そのくせ、巻末のルール集では「サーブは強球またはカッティングボールを許さず」と書いてあるのだからわけがわからない。

イギリスから日本に卓球が入ったころは、サービスでの攻撃は自由だったのが、日本国内では大正末期から昭和初期にかけて禁止された時期がある(「サービス」の語源が「奉仕」だから昔は攻撃が許されていなかったというのはデタラメだ)。

この頃の卓球本は、文章も写真も他の本のパクリが堂々と行われていたので、内容が継ぎはぎのため、一冊の本の中で矛盾することが出てきているものと思われる(と思ったら、元ネタの本も矛盾していた。単にいい加減だからのようだ)。

グリップや打法や立ち位置、姿勢、作戦などが細かく述べられてるが、回転については

「最後に魔球の図を掲ぐ 読者見て悟らるる所あるべし」

のひとことでかたづけられている。

わわ、わかるかこんな図で!

まだラケットにラバーが貼られていなかった時代の話だが、それにしても物凄い魔球だ。男爵のヒゲみたいに曲がって。

卓球に専念!

今月末で28年間務めた会社を辞めることにした。

卓球コラムニストなどと名乗ってはいたものの、実際には卓球とは関係のない会社員だったのだ。月に1回の雑誌のコラムだけで食べて行けるわけがない。

「卓球コラムニスト」などという職業はそもそも存在していないのだっ!

これまで会社勤めをしながら連載したり取材したりDVDを作ったりしていたわけだから誰かに「凄い!」と褒められそうなものだが、実際には「仕事に身が入っていないんじゃないか」「そんなに休める会社ってどんな会社よ」とか親族や知人から懸念だか疑念だかを呈される日々であった。

そういう日々に別れを告げ、いよいよ卓球関係に絞って活動をすることにしたので、これまでになく精力的にやっていこうと思う次第だ。何をするのかさっぱりわからないが、少なくとも精力は注ぐつもりだ。

送別会ではなんとも楽しいTシャツを送ってもらった。これを着て全日本の取材をするかどうかは・・・微妙だ。白い字があるために選手から「ボールが消える」とクレームが来るのが心配だ。

異常な常連Sさん

東京に出張するときは、いつも同じホテルに泊まり、夕食は行きつけの小さな居酒屋でとることにしている。かれこれ3年近く通っているので、その店の常連とも顔見知りだ。

しかし私は自分からは積極的に話しかけないので、未だに名前のよくわからない人もいる。

先日、その中の一人と初めて隣の席になり、話し込んだのだが、本物の異常なお方であった。スレスレというよりは完全にアウトといった趣きである。

名前は憶えていないので仮にSさんとする。私とほぼ同年代の男性だ。何からそんな話になったのか覚えていないが、Sさんは、酒を飲んで酔っ払うと、布団で寝るよりも地面で寝た方が気持ちが良いため、よく地面で朝まで寝るのだと言う。

それまでの話の怪しさから「もしかしてホームレス?」と思いながら恐る恐る話を進めると、なんと自宅マンションの入り口の前の通路で寝るという話であった。ホームレスではないと知ってホッとしたが、それはともかく、かなりの異常者だ。

話はそれで終わらない。「自宅の前の通路で寝る」行為によってマンションの住人から何度か警察に通報され、連行されているというのだ。一応話を合わせるため「それだけで連行ですか、ひどいですね」と言うと、「裸だったからかな」と言うではないか。よく聞くと、なんとSさん、すっぽんぽんの全裸で自宅マンション前の通路に朝まで寝る常習犯だったのだ。

これは・・・通報される。

実際のSさんは極めて温厚で紳士的であったから、そんなことをするとはとても信じられない思いであった。

ところがSさんは自らを、スイッチが入ると自分でも制御できないほど狂暴になる性癖の持ち主だという。そういう状態になると、あたりかまわず怒鳴り散らし、その音量で店のガラスもすべて割れるという。当然、警察に連行されるときも怒鳴りっぱなしだ。

最近その発作が起きたのは、まさにその店でのことで、常連の女性客がオスの飼い猫を去勢したと軽々しく語ったことだと言う。Sさんはこれに激怒し「オスの性欲という楽しみを人間の勝手な都合で奪っておいてその言い草はなんだっ!表へ出ろっ!」となったのだという。

・・・よくわからないが、とにかく何でスイッチが入るかわからない残留地雷のようなお方だということだけはよくわかった夜であった。

怒鳴り声で眼鏡を割られたのではたまったものではない。

チキータをどう説明するか

それでは一般の視聴者にチキータをどう説明したらよいだろうか。

その前に、何をチキータとするか確認しておく。

チキータはもともとは、台上のボールに対する横回転を入れたバックハンドドライブのことだったが、最近は横が入っていなくてもチキータと呼ばれている。

私はそれでよいと思う。なぜなら、卓球の戦術・技術におけるチキータの革新性は、横回転にあるのではなく、台上のボールに強烈な前進回転をかけて速く安定したボールを打つことにあるためだ。

よって、台上バックハンドドライブのことをチキータとする前提で、これを一般の人にどう説明するかだ。

簡単に言えば「台上の低いボールに対して、台の上でラケットをくるっと回転させて下から上に振り上げてボールに当てる打ち方をしたとき」がチキータだ。

格好としては肘を肩と同じくらいに上げるのが特徴だ。

振り上げるときにどれくらい薄く当てるかの度合によって、フリックと区別がつきにくいと思うが、これは仕方がない。一般の方がフリックとチキータを見間違えても誰も責められない。スマッシュとドライブが区別がつかないのと同じだ。

一般の方への説明は以上として、あらためてチキータの革新性を整理してみた。

①相手の低いボールに対して速いボールを入れるためには前進回転をかけて弧を描かせることが必要。ネットがあるので、真っ直ぐ飛んだら絶対に入らないわけだから。

②前進回転をかけるためには、ラケットを下から上に振り上げながらボールを打つ必要がある。相手のボールが下回転の場合には特に上に振る必要がある。

③相手のボールが台上で2バウンドしてしまうほど短い場合には、台が邪魔になるので、ラケットを台の表面までしか下げられない。

④したがって、台の表面から打球点の間の鉛直距離にして16cmほどの空間でラケットを上方に加速してボールに当てなくてはならない。ラケットの幅だけで11cmほど(45度にかぶせた場合の鉛直方向の幅)あるので、ボールをラケットの中央に当てる前提だと、10cmほどしか鉛直方向の加速距離がない。

⑤その10cmの加速距離で必要なスイング速度を出す方法として開発されたのが、チキータ。バックハンドでスイングの回転半径を小さくし、回転角度を180度以上もとることでそれが可能となった。

どんなもんだろうか。

 

チキータがわかりにくい理由

一般の方々から「卓球のテレビを見ていてもチキータがわかりにくい」とよく聞く。

わかりにくいのも当然だ。なにしろテレビで「チキータ」として紹介される動画のうち、およそ半分がチキータじゃないのだから。

普通のバックハンドがチキータとして紹介されているので、視聴者が「これのどこが特別なんだろう?」と思うのはむしろ目が確かなのだ。だってそれ、普通のバックハンドなんだから(笑)。

要する、テレビ制作者がチキータをわからない場合、視聴者がその道連れにされているのだ。本来ならわかる目を持つ視聴者さえも「わからない」状態になっているのだからもう絶対にわからない。絶望的にわからない。わかったらそれこそ勘違いなのだ。

例えれば(例える必要もないが)、野球のピッチャーのボールをカーブもストレートもシュートも気分次第でときどき「今のは素晴らしいカーブですね」と解説され、それを聞いた視聴者が「カーブってどういうボールのことなんだろう?いやー野球は難しいなあ」と思っている状況なのだ。

なんたる悲劇だろうか。

審判のファインプレー

ジャパンオープンの男子ダブルス準決勝で、信じがたい審判のファインプレーがあった。

馬龍/許シン vs 樊振東/林高遠

の3ゲーム目の4-2の場面でそれは起こった。

プレー領域にハエが紛れ込み、馬龍がこれをラケットで何度か払おうとしたのだが、当然のことながら、そんなことでハエを追い払えるはずもない。

と、そのとき、副審を務めていた今野啓がすっくと立ちあがり、近づいたと思ったら、なんと

一発でハエを掴んでしまったのだ。

これには馬龍は笑い、許シンは固まったという。

知らない人が見たら、ハエ掴みの達人かと思うだろが、実は啓さんは過去にハエを手づかみした経験は一度もないという(誰でもそうだと思うが)。

国際大会での審判という重責ゆえに、火事場の馬鹿息子、いや、馬鹿力で実力以上を出したのだろう。

「ハエを手づかみにした達人的審判」として、今野啓の顔は馬龍と許シンの海馬にしっかりと刻み込まれたことであろう。

羨ましいことだ。

東京五輪で混合ダブルス追加!

東京五輪で混合ダブルスが正式種目として採用されることが、あたかも朗報のように報道されていた。

それで「中国は目の色を変えるかも?」なんて言ってる。吉村と石川が金メダルを獲ったからチャンスだと言わんばかりだ。

ううむ。どこまで事情を知って言っているのかわからないが、なんとも微妙な気持ちだ。

吉村/石川ペアが混合ダブルスで金メダルを獲った理由は、もちろんこのペアが強いからだ。しかし、もうひとつテレビが語らない要因がある。

混合ダブルスには中国ペアが出ていないからだ(方博がドイツ選手と組んだけだ)。中国は混合ダブルスが弱いわけではない。弱いどころか、女子が強いために混合ダブルスも恐ろしく強いのだ。

かつて、エントリー数が多いときは混合ダブルスと女子ダブルスの両方ともベスト4がすべて中国だったし、へたするとベスト8のうち6ペアまでが中国で、残りの2ペアは元中国選手というのが普通に見られた。

それが2009年横浜大会から、中国はダブルスから主力選手を外したり、国際ペアを組ませたり、出るペアを極端に減らしたりして(1ペアだけとか)、あからさまに他の国にメダルを譲ろうという「外交」を始めたのだ。

東京五輪で混合ダブルスが正式種目になったとき、中国が「目の色を変える」とすればそれは、通常の意味である「必死になる」ということではなくて「獲りに行く方針にする」というだけのことなのだ。そうならないことをアテにして「東京五輪は混合ダブルスの連覇が期待できます!」と言っているわけだから、なんとも失笑させられる。

もちろんそれでも連覇できる可能性はあるが、ものすごく厳しい戦いになるだろう。

だって、中国が本気出したら「馬龍/丁寧」「樊振東/劉詩雯」「許昕/陳夢」など、陳夢どころか悪夢のようなペアがぞろぞろ出てくるんだから、どうするんだこんなもん。

中国がその気になれば、実はもっとも金メダルが絶望的な種目が混合ダブルスなのだ。

「チョレイ!」の語源

張本の掛け声が取りざたされているが、不思議なのは誰もその語源について推測さえ言わないことだ。

現在、全国レベルの男子卓球界で「チョレイ!」「ジョレイ!」「ショレイ!」「ジョライ!」などが流行しているわけだが、普通に考えればこれは「ショー」「シャー」になんとなく「レイ」「ライ」などをつけたものだろう。あえていえば「ショー、オラー」とでもいう感じだろうか。

そしてもちろん「ショー」「シャー」の語源は「よっしゃ」であり、つまりは「よし」にその端を発している。もちろん愛ちゃんの「サー」も同源でありいわば従妹である。

卓球が日本に伝来して100年以上経つわけだが、純然たる日本語の「よし」が、選手本人さえわからない形に装いを変えて今に生き続けているわけだから、感動的ではないか。

ちなみに、ヨーロッパ卓球界では「シャー」「ショー」「ヨー」が掛け声の定番だが、これはかつて日本が世界制覇をしたころに、日本で卓球修行をした選手が真似をしたのが広がったものだ。

かつて実況中にこれを聞いたアナウンサーが「人間が気合が入ったときに出る声は世界共通なんですねえ」と言ったものだったが、そういうことではなくて卓球界共通なのだ。

私がテレビの前で歯ぎしりしたことは言うまでもない。

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