異常な常連Sさん

東京に出張するときは、いつも同じホテルに泊まり、夕食は行きつけの小さな居酒屋でとることにしている。かれこれ3年近く通っているので、その店の常連とも顔見知りだ。

しかし私は自分からは積極的に話しかけないので、未だに名前のよくわからない人もいる。

先日、その中の一人と初めて隣の席になり、話し込んだのだが、本物の異常なお方であった。スレスレというよりは完全にアウトといった趣きである。

名前は憶えていないので仮にSさんとする。私とほぼ同年代の男性だ。何からそんな話になったのか覚えていないが、Sさんは、酒を飲んで酔っ払うと、布団で寝るよりも地面で寝た方が気持ちが良いため、よく地面で朝まで寝るのだと言う。

それまでの話の怪しさから「もしかしてホームレス?」と思いながら恐る恐る話を進めると、なんと自宅マンションの入り口の前の通路で寝るという話であった。ホームレスではないと知ってホッとしたが、それはともかく、かなりの異常者だ。

話はそれで終わらない。「自宅の前の通路で寝る」行為によってマンションの住人から何度か警察に通報され、連行されているというのだ。一応話を合わせるため「それだけで連行ですか、ひどいですね」と言うと、「裸だったからかな」と言うではないか。よく聞くと、なんとSさん、すっぽんぽんの全裸で自宅マンション前の通路に朝まで寝る常習犯だったのだ。

これは・・・通報される。

実際のSさんは極めて温厚で紳士的であったから、そんなことをするとはとても信じられない思いであった。

ところがSさんは自らを、スイッチが入ると自分でも制御できないほど狂暴になる性癖の持ち主だという。そういう状態になると、あたりかまわず怒鳴り散らし、その音量で店のガラスもすべて割れるという。当然、警察に連行されるときも怒鳴りっぱなしだ。

最近その発作が起きたのは、まさにその店でのことで、常連の女性客がオスの飼い猫を去勢したと軽々しく語ったことだと言う。Sさんはこれに激怒し「オスの性欲という楽しみを人間の勝手な都合で奪っておいてその言い草はなんだっ!表へ出ろっ!」となったのだという。

・・・よくわからないが、とにかく何でスイッチが入るかわからない残留地雷のようなお方だということだけはよくわかった夜であった。

怒鳴り声で眼鏡を割られたのではたまったものではない。

異常な常連Sさん” への 4 件のコメント

  1. 久しぶりのじょうたさん。
    まってました。
    また、楽しい話を
    お願いします。
    息子は、今日も、卓球地獄を、
    かばんに、いれていました。

    1. おお、なんと感心な息子さんでしょうか。すべての卓球部員に見習ってほしいものです。

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