古書『ピンポン使用法』

ヤフーオークションで古い卓球の本を買った。

『ピンポン使用法』という28ページばかりの冊子で、寺田清運動具部という、おそらく運動具店が発行した非売品だ。

発行年が書いていないのだが、巻末に乗っているルール集が大正十年制定とあり、最近の出来事として昭和2年の極東オリンピックの参加(したのか予定なのか不明)と書いてあるので、昭和初期あたりのものと思われる。

面白かったのは、グリップの紹介のところで「美術流」というのがあったことだ。なんでも、東京の美術学校の学生たちの間でポピュラーだったものだという。そういえば絵筆の持ち方に似ていなくもない。

サービスの回転のかけ方が凄い。フリーハンドでボールを押さえつけて出すのだ。そういえば私の祖母はこんな出し方をしていたものだった。昭和50年代だからとっくに禁止されていたはずだが(笑)。

そのくせ、巻末のルール集では「サーブは強球またはカッティングボールを許さず」と書いてあるのだからわけがわからない。

イギリスから日本に卓球が入ったころは、サービスでの攻撃は自由だったのが、日本国内では大正末期から昭和初期にかけて禁止された時期がある(「サービス」の語源が「奉仕」だから昔は攻撃が許されていなかったというのはデタラメだ)。

この頃の卓球本は、文章も写真も他の本のパクリが堂々と行われていたので、内容が継ぎはぎのため、一冊の本の中で矛盾することが出てきているものと思われる(と思ったら、元ネタの本も矛盾していた。単にいい加減だからのようだ)。

グリップや打法や立ち位置、姿勢、作戦などが細かく述べられてるが、回転については

「最後に魔球の図を掲ぐ 読者見て悟らるる所あるべし」

のひとことでかたづけられている。

わわ、わかるかこんな図で!

まだラケットにラバーが貼られていなかった時代の話だが、それにしても物凄い魔球だ。男爵のヒゲみたいに曲がって。

古書『ピンポン使用法』” への 3 件のコメント

  1. すごく曲がる軌道ですね。ラバーなしでどうやってここまで曲がる回転をかけられるのか知りたいですね。ちなみにこの書籍はどんな方が所有しておられたのでしょう?

  2. いやあ,時代を感じる本ですね~.王国のWebで公開されている藤井基男さんの本
    https://world-tt.com/ps_maker/wtt/002_02/page.php?pg=2
    にちょうどこの頃の記述がありますので,併せて読むととても面白いです(面白がるのは伊藤さんや私だけかも).昭和2年の極東大会のことも少し載っています.世界選手権の第1回が1926年(昭和元年=大正15年)ですから,同時代ですね.

    私が中学生の頃(1960年代初め),卓球場に行くとフリーハンドでボールを押さえつけてサービスを出す年配の方がいました.60歳位だったかな~.この方の20歳台の頃の話ですね.

    つい昔話になってしまいました.

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