ビートルズ5

これまで発表してきたビートルズごっこの写真は、実はある程度、技術が発達してマシなものを選んでいたのであるが、ここまでくるのにはかなりの時間がかかっているのである。たとえば8/21にアップした『レット・イット・ビー』は2回めのものであり、1回めのやつはあまりにひどいので出すのがためらわれたのであるが、これも面白かろうと思い、今回出すことにした。

この当時もっていたカメラは感度が悪く、室内ではフラッシュを焚かないと映らない代物であった。私はどうしてもポールの顔の左半分に影をつけたかったのだが、フラッシュを焚いたのでは影ができない。そのため、ポール役のやっちゃん(ポールに似ていると以前から目をつけていた、5つぐらい歳下の近所の子供だ)の顔の左半分に墨を塗ったのであるが、影というよりは顔半分を打撲した人のようになってしまった。せっかくバックに茶色のちゃぶ台を立てているのに、フラッシュのせいで青くなってしまっているのも悔しかった。

また、いつも無理やり撮影役をやらせていた私の3歳下の弟には、このときは人数の都合からリンゴ役をやらせた。ここでも問題はリンゴの目と鼻の茶色の影である。これが重要だと考えた私は、これを再現しようとして弟のその部分に歯磨き粉を混ぜた茶色の絵の具を塗ったのだが(絵の具に歯磨き粉を混ぜると弾かないので何にでも塗れると本で読み、いつもプラモデルに塗っていたのだ)、なんだかトカゲのようなわけのわからない顔になってしまった。嫌々やっている弟の表情が、図らずもリンゴの表情にぴったりである。

どいつもこいつも家にあったばあさんのカツラを適当に何個かのせて撮影したのだが、私のジョン・レノンの長い金髪だけは似たものがなく、しかたがないので画用紙に色を塗って短冊状に切って頭にのせるしかなかった。この中途半端さ加減が恥ずかしく残念である。なお、当時は今のように小さいメガネは売っていなかったので、ジョン・レノンになろうとして丸メガネをかけると、どうしても中華料理屋の親父みたいな顔になってしまうのだった。この後、メガネ屋で偶然みつけた子供用の丸メガネに大人用のツルをつけてもらって、小さい丸メガネを入手したものである。

そういうわけで、この中でやる気満々なのは私と、ジョージ役の繁則だけなのであった(意図を理解し尽した表情からもそれがわかると思う)。後年、高性能の一眼レフを卓球部の後輩から借りて、フラッシュなしで顔の影を嬉々として撮影したのが、以前アップした写真なのである。なんともレベルの低い話だが、バカバカしさの面白さという点ではこちらの方が上であろう。目的はビートルズになることだったはずだが。