なあボルよ。そんなにあくせくしても仕方がないと思わないか？もっとどっしりと構えてだな。おい、ボル、こら。

岸川、凄い。岸川、岸川、岸川！

キシ凄いっ！

なあボル。おい、ボル。ポール・マッカートニーこら。

行けーっ、ボルのことは俺に任せろ！その間に行け～！

ボルよ。ワンパターンで飽きないかね。ちょっと面白いことをしてみな。たとえばそうだな、ラケットを折ってみるとかさ。な。

途中まで競っていたのに後半早い。

ボル、どうせいつものやつをやっているんだろう。
岸川のドライブのあがりっぱなを前陣でカウンタードライブかい？しかも両ハンドでサイド切ってな。

あるいはブツ切りのYG下回転サーブでネットにかけさせているんだろう？

床に倒れこみながら回り込みドライブだろう？

わかっている。たまには変えてみないかね。ちょっと新しい打ち方に挑戦するとかさ。ちょっとでいいんだ。リードしてるんだろう？

ゴールデンタイムに放送されるだけでも嬉しいのに、日本とドイツとこの死闘。夢にまで見た卓球のテレビ放送だ。ああ、嬉しい。

本当に嬉しい。岸川、お前の無念さはわかっている。ドイツに早くから渡って水谷に追い越され、広州ではベンチを温め、成果を出せないという批判を恐れながら黙々と努力を重ねてきた。このオリンピックにも予選落ち寸前のところからギリギリで這い上がってきた。

相手はあのティモ・ボルだ。何を恐れることがあろう。全力でぶつかってくれ。

恐ろしい。卓球は恐ろしい。なんて恐ろしいんだ。

韓陽、ありがとう。本当にありがとう。素晴らしい。素晴らしいよ。俺はもう泣きたい。

これで日本２－２ドイツ

ラストは世界６位のティモ・ボル対世界６３位の岸川

失うものはなにもない。

勝った