病院の待合室で鹿狩りの雑誌を見た。
こちらでは女性や子供も銃を持って鹿狩りに行くのが楽しい娯楽となっている。
車椅子になってまで鹿狩りに行かなくてもよさそうなものだが、楽しいんだから仕方がない。
雑誌には、PIGZILLAやHOGZILLAなどという単語が見られたが、これは日本の怪獣映画ゴジラが元だと思われる。同然、辞書になど載っていない現代用語だ。
先週は工場の現場に入っていろいろと製造工程を見る機会が多かった。工程を見ながら製造責任者のマイクと神様の話をした。普段、ふざけたジョークを連発する皮肉屋のマイクなら、そうそう神様を信じているわけではないだろうと思ったからだが、甘かった。
まずマイクは、死後の世界はデビッドと同じく1000%信じているという。「どうしてお前は信じられないんだ」というので、「証拠がないからだ」と答えると、「聖書に書いてあるのが証拠だ」とのこと。キリスト教信者のいつもの理屈だ。
するとマイク、「もしかしてお前、進化論も信じてるのか」ときた。「イエス」と答えると、その場にいた製造メンバーを含めた4人が「しょうがないなコイツ」という感じで顔を見合わせて「ハハハ」と笑った。もはや私は完全に哀れな異教徒である。
マイクに言わせると、ビッグバンなどなく、この世は今から4000年前に神様が一度に創ったのだという。科学者が言う、何億年前の証拠も含めて神様が一度に創ったというのだ。どうして神様はわざわざそんな証拠まで創ったのだろうかなどと聞く必要はない。答えはとっくに知っている。「不信心者を試すため」なのだ。これまで何度も繰り返してきた問答だ。もちろん私はこういう議論の危険性をよく知っているので、反論など一切しない。ただ、感心したような顔をして聞き入るだけだ。
これまで何人かの同僚と神様の話をしたが、信じてないという人は一人も見つかっていない。アンケートによれば、アメリカ人の50%ぐらいの人は信じていないはずだから、おそらくこれは南部だからなのだろう。「学校では進化論を教えているし、テレビでも進化論を前提とした番組をやることが多いが、どうしてなんだろう」とわざと聞いてみるとマイクは「科学者たちはいつも声高に主張するからそういう趨勢になるだけのことで、真実を知っている我々はそういうのは聞き流して沈黙しているんだ」とのことだ。
また、興味深かったのは、デビッドもマイクも、自分は信じているが他の人に対しては「うわべだけのクリスチャンが多く、本当に信じていてクリスチャンと呼べるのは半分以下だろう」と言うことだ。彼らの間では信心深いことがモラルになっているので、自分を取り繕うために信じているふりをすることもあるのだ。となると、デビッドもマイクも含め、本当に信じているかどうかわからないということだ。カッコつけるために私の前では信じているふりをしている可能性があるのだ。
ともかくも、なんともありがたい話であった。