善意合戦

正月が近づいて思い出すことは、親戚同士がよくお金を押しつけ合う光景だ。

お互いに遠慮だか礼儀だかを重んじて相手にお金を押し付け合うのだが、この光景がなんとも私には不愉快なのだ。一度や二度のやりとりならわかる。しかし延々とこれを続けるのはどういう神経なのか。

どう考えても相手はお金を渡したがっているのだから、それを突き返すのは礼儀どころか相手のことを考えていない自分勝手な所業である。中には、自分の金を延々と返されることに本気で腹を立てて怒り出すヤツまでいたり、帰り際にこっそりと相手の持ち物に金を忍ばせて勝った気になるヤツまでいる始末だ。こういうのは、礼儀が何のためにあるのか、まるで分かっていない人たちがやることなのだ。礼儀を「善意の勝負」だとでも思っている風である。

私は小さい頃からこういう光景を見せられてきて、そのバカバカしさにほとほとうんざりさせられてきた。小学生だったあるときなど、親戚が余りにも目に余る金の押し付け合いをしているのを見てムラムラと腹が立ってきて、そのお金を横から取り上げ「そんなに要らなかったら俺が捨ててやる」と言って遠くに投げたことがあった。当然、父にしたたかにぶっ叩かれて泣く羽目になったが、私の考えは今も少しも変わらない。

その反動もあってか、私はお金を出しても二度ぐらい遠慮をされたら引っ込めるし、もらうときも同じである。その方が相手は心地よいのだし、こちらは金が儲かるのだから一石二鳥だ。とにかくこのような空疎なやりとりは一刻も早くやめてもらいたいものだ。