浅川君から、ダブルスの秘策の提案があった。
今、女子の準々決勝が行われているのだが、なんとサービスのときのサインが会場のスクリーンに映し出されているのだ。レシーバーは相手など見ずに、スクリーンを見れば相手のサーブの種類がわかることになる。
というわけで、レシーバーはぜひとも視線を90度ズラすべきだろう。その間にボールが来ても責任はとれないぞ。
大丈夫か浅川!
新井さんは卓球王国で「チョイモテ!オモシロテクニック」という連載で目も当てられない奇妙な打法を披露しているのだが、本人いわく「全然モテません」とのことだ。実際、その連載で披露される打法の「モテ度」が編集部から5段階で評価されているのだが、星が3つ以上ついたためしがないのだという。根本的に矛盾した企画になっているところがさすがに卓球王国である。
レーティングの話を続けたい。
現状はなかなか登録選手が増えないし、大会も増えていない。
選手からは「大会がないのに選手登録をしても仕方がない」という声がある。
一方で、大会主催者からしてみれば「選手がいないのに大会開けないでしょ」というもっともな考えだ。つまりお互いに環境が整うのを待っている状態なのだ。
普通のやり方なら、日本卓球協会が会員全員をレーティング登録を強制的にさせ、レーティング計算対象の大会を開くということになるだろう。しかし幸か不幸か、日本の卓球界はすでに30万人もの競技者がいて、各地で歴史ある大会が盛んに行われているので、新しい大会を開くことはかなり難しいのだ。そこで、既存の大会の試合結果を使ってレーティングを計算する方針にしたのだ。
既存の大会の結果の参加者の中には当然、レーティングを付けられたくない選手もいるから、全員を強制的に登録させることはできない。また、選手が30万人もいるので第三者が初期値を決めることもほぼ不可能だ。
以上の経緯から、選手登録は希望者が本人の意志で行い、初期値も自己申告する方針にしたのだ。
選手登録は各自が自分について一度だけすればよいことだが、大会主催者が試合結果を入力するのはかなり手間が掛かるので、よっぽど選手からの希望がなければやろうとは思わないだろう。大会主催者は、その地域でレーティング登録選手がどれくらいるかを見て、その大会をレーティング計算対象にするかどうかを決めるのだ。
だからもし、大会がないから選手登録をしないという人がいたら、大会を待たずにぜひともレーティング選手登録をしてほしい。そしてできるだけ多くの知人にも登録を勧めてほしいのだ。これは日本卓球協会が愛好者へのサービスとして行うので、登録料も年会費もない。デメリットは何もないのだ。
登録された選手が対象の大会に出ると、巧妙な計算方法によってその人の実力が数字で表される。システムでは、たとえば渋谷区の中学2年生だけのランキングや分布も見ることができるし、大会会場から携帯でアクセスして相手の選手のレーティングや過去の試合結果を見ることさえできるのだ。レーティングはランキングではないので、いつもすぐに負けるような初、中級者こそが自分の実力の変化を知ることができて、やりがいを増すものだ。
というわけで、ぜひとも選手登録を! http://jtta-rating.jp/
全日本の会場でレーティング選手登録をしている浅川くんから写真が届いた。
なかなか選手が集まらず苦戦しているようだ。しかし、ブースは結構派手に展示をしていて頼もしい限りである。
土日は私もここに行って登録作業を手伝うので、みなさん、登録しに来てください。
しかしよく考えると、このブログを読んでいる人なら、なにも全日本の会場で登録する必要はなく、以下のウエブサイトから登録をすればよいだけのことであった。http://jtta-rating.jp/
卓球映像クリエーターの仁禮さんに、とてもいい話を聞いた。
仁禮さんは、スーパーサーキットの撮影を担当したことが縁で、金擇洙と個人的に親しいという。それで、なんと金擇洙が2003年パリ大会で使ったラケットをもらったのだという。
その後、撮影で柳承敏に会った時にそのラケットを差し出したところ、柳承敏は握った途端に「これ、テクスさんのだ」と言ったという。仁禮さんが張ってあったラバーを剥がすと、そこには金擇洙のサインが現われた。
なんといい話だろうか。実はこれにはある程度タネがある。なんと柳承敏は自分のラケットを常に金擇洙に削ってもらっていたのだという。上下関係が厳しい韓国だからなのか、柳承敏が異常に金擇洙を尊敬していたからなのか、はたまた金擇洙がラケット削りに異常な能力を有していたのかはわからないが、ともかく、そのために削り方でわかったというのが真相である(左利きの劉南奎が一時コーチをクビになったのは、選手のラケットを無理やり左利き用に削ったからだろうか)。
それにしたっていい話ではないか。ちなみに仁禮さんは、そのラケットはあまりにも重くて、試合をすると1ゲームもたないのでほとんど使わないという。こちらはいい話なのかどうかはよくわからない。
先日、卓球王国の編集長かつ社長である今野さんと食事をした。
中国選手はフォア側のラバーは必ず黒だけど日本選手は赤だとか、卓球雑誌の編集長ならではの、深いんだか浅いんだかわからないウンチクを熱弁してもらった。
こんな話はこれまで誰からも聞いたことはないし本人もそうは思っていないが、この人は世界の卓球界を牛耳っている凄い人だと私は思っている。
卓球界には次の5つの側面がある。
①選手 ②指導者 ③メーカー ④協会 ⑤一般ファン
この5つの側面のすべてにおいて、世界中から信頼を得て人脈を持っているのが今野さんなのだ。選手や指導者とは誌面作りや取材の関係で世界中と交流があるし、主要メーカーの社長たちと個人的な親交がある。日本卓球協会の前原専務理事とは旧知の仲だし、国際卓球連盟とはシャララ会長を初めとして息のかかった者が何人もいる。雑誌を通して一般ファンの信頼を勝ち得ていることは言うまでもない。考えてみると、この5つの側面すべてにおいて信頼を勝ち得ている卓球人というのは他にはいないのだ。「タメ口の今野」と言われるほど率直な物言いと独断的自信に満ちた英会話力、卓球を普及させるというブレない信念のもとに、常に公正な態度をとるところが信頼を得ているところだろう。
そして私にとっての付加価値は、なんといっても、今野さんが、かの荻村伊智朗にいじめ抜かれた人だということだ。荻村伊智朗のもとで卓球をしたはいいが「お前は卓球をする資格がない」「そういう態度のヤツは二度と海外への取材には連れて行かない」「お前はフォアよりバックの方が上手いから試合はオールバックでやれ(ペン角型裏ソフトなのに)」などと、ことあるごとに糞みそに言われたという。脈があるからこそ厳しく接したという言い方もあるが、そういうのは大概は体裁をつくろうためのウソで、単に心底気に入らなかっただけだろう(そもそも脈などないし)。先日文庫化された城島充さんによる荻村伊智朗の伝記『ピンポンさん』では、犬に手を噛まれて荻村に怒られた男としてだけ、今野さんが出てくる(273、336ページ)。そういう形ではあっても、私は今野さんの顔に、私がついに会うことができなかった荻村伊智朗のくっきりとした足跡を見るのだ(踏まれた跡だろうな)。
荻村伊智朗にいじめられた成果かどうかはわからないが、今野さんは今では卓球界を動かす男になったのだ。私も、卓球界で仕事を続ける以上はこの人についていけば何か良いことがあるに違いないという熱い下心のもと「今野チルドレンとして一生ついていきます」と言い続けている。田村が「俺にもおすそ分けくれ」と言うので「いや、お前は俺についてくればいいから」と言って適当にごまかしておいた。何をどうついてくるのか知らんが。
本人によれば今野さんは「短気で根に持つタイプ」だという。私は他人の発言は言葉どおりに受け取ることにしているので、その通りなのだろう。
今野さんは、話が面白くて「短気で根に持つタイプ」で、なおかつ卓球界のドンなのだ(繰り返すが、そう言っている人は私の他には知らない)。こう見えて大変な人なのだこのオヤジは。
日本卓球協会が今回の全日本選手権をレーティングの対象にすることを決定した。会場で登録推進活動をするのだが、私もそれを手伝うことになった。
私は土日しか行けないのだが、平日の一部を担当することになった浅川くんという仙台大学の学生を卓球協会から紹介され、自宅に来てもらって打ち合わせを行った。
それで、せっかくの縁なので卓球をすることになった。物事を進めるにあたっては、上下関係をはっきりさせておかなくてはならないのだ。その結果、期待していたのとは正反対の上下関係がはっきりしてしまった。さすがレーティング2150だけのことはある(レーティングの正しい使用例)。
早急に卓球以外の勝負をする必要がありそうである。