当時の様子

26年前の木村との写真を見つけた。私の記憶の中の木村はこの姿しかなかった。今回会うにあたっては、なにしろ26年も経っているのだから誰だかわからないくらいにみすぼらしく小汚いオヤジになっていることを期待していたのだが、バカバカしいほどの変わらなさ具合で残念だった。変わったのは俺だけかよ。

書いているうちに、木村と親しくなったきっかけをもうひとつ思い出した。私は大学1年の6月に自然気胸という病気になって手術のため1ヶ月間入院をしたのだが、そのときやたらと見舞いに来たのが木村だったのだ。病院は大学からもアパートからも遠かったが木村はゆっくりとどこまでもテクテク歩くヤツで、毎日のように来たのだ。当時発売間もないポールマッカートニーの『タッグ・オブ・ウォー』やクイーンの『ホット・スペース』をテープに録音してきてウォークマンと一緒においてってくれた。ただ、初めて見舞いに来たときの私を見た第一声が「あ、顔が死んでる」というもので、それでなくても気落ちしている私はとてもショックを受けた。看護婦さんも「そんなこと言わないの」とたしなめていた。ともかく第一印象はいやなヤツなのだ。なお、連日のように見舞いに来て何をしていたかといえば、ロクな話もぜずにもっぱら隣の空きベットで昼寝をしては看護婦さんに呆れられていたことも付け加えておく。