以前、「明晰夢」というものについて書いた。これは夢だと自覚しながら見る夢のことだ。私は最近そういう夢が結構あるのだが、中でも、これは夢だと自覚しながら、ものすごく鮮明に物が見える夢がある。もう、覚醒時と完全に同じ、今こうしてパソコンの画面を見ているのと同じくらいにはっきりとものが見える夢があるのだ。人間に物が見えるということが、つくづく脳によるしざわであり、網膜に映っている物をそのまま見えているわけではないと思い知らされる。
その中でも最近、特に強烈な体験をした。ドルトムントから自宅に帰った晩、時差ボケのためにとても眠いのを我慢して起きていて、やっと寝る時間になったので床に入った。すると、あまりに眠いためかまだ眠っていないのにまぶたを閉じた途端に目の前にとてもはっきりした人形が何やら踊るように動くのが見えたのだ。私は主観的にはその人形にちゃんと焦点を合わせ見ているのだ。「うわ、まだ寝てないのに夢かよ」と思い、面白いので薄目を開けて見た。すると、視界の下半分に現実の景色が見え、上半分に引き続き夢だか幻覚だかが見えるではないか。もちろんこんなことは初めてだ。なんと人間の感覚とは面白いのだろうか。
そんなわけで、どんなに異常な光景を見たとしても、それが合理的に説明がつかないものならば、それは錯覚だと思うという決意を新たにした。