フェッツナーの卓球

「フェッツナーって誰よ」なんて言う奴はまさかいまいな。
若い人ならともかく、40代の卓球ファンでそんなことを言うようだと卓球マニアとしては絶望的と言わざるを得まい。フェッツナーとはなあ、1989年ドルトムント大会で、ロスコフと組んで男子ダブルスの世界チャンピオンになった男なのだ。ドイツ卓球界で世界チャンピオンになったのは、すべての種目を通じてこれだけなのだ(と思ったら1929年と1939年に女子ダブルスで優勝しているようだが、そりゃ古すぎだっ!)。

パートナーのロスコフが長身で世界一速いバックドライブを放ったのに対し、比較的背の低いフェッツナーは前陣での機敏な動きで「スピーディー」というニックネームで親しまれた。

そのフェッツナーの試合も3試合ほど見た。印象に残ったのは、何の前兆もなく軽々しく手首だけで放つバックドライブだ。まるでツッツキをするような姿勢でいきなり打つので、打たれた方はついついトンチンカンな反応になるのだ。フェッツナーを押して次のボールを狙い打つつもりで回り込んでいる最中にボールが来て体に当てたりと、それは見事な不意打ちバックハンドだった。大きくふりかぶって打つバックハンドも大切だが、このような技もまた貴重である。さすが世界を獲った男だ。