キラ星の如く

先日、NHKで和食関係の番組を見ていたらとても興味深い場面に出くわした。

登場した料理人が、尊敬する人たちのことを「キラ星のような人たち」と表現をした。これは誤用である。世の中にキラ星などというものはない。キラとは綺羅、つまり綺麗な衣装のことなのだ。綺麗な衣装をまとった人たちが星のように大勢いる様が「綺羅、星の如し」である。この誤用はもはや誤用とは言えないほどに定着しているので、料理人が間違えるのは仕方がない。

面白かったのは、料理人がこの誤用をしたちょっと後に、ナレーターがまったく正しい用法で「綺羅、星の如し」と言ったことだ。これは「スタッフはちゃんとわかってるよ」というNHKの表明であるに違いない。さすがに料理人に「それ、誤用なので言い直してください」とは言えないし、かといって放置すれば、うるさい視聴者(私はやりません)から「間違った日本語を放送するな!」と苦情が来るかもしれない。これを巧妙に回避するために文脈上不要なのに、わざわざこの台詞を使ったのだ。

いろいろと気をつかっているなあとニヤリとさせられた。

キラ星の如く” への 2 件のコメント

  1. 本文とは全く関係ないですが、「先生できました」の題名決定の経緯を知って、伊藤さんの非凡な才能に改めて驚きコメントさせていただきました。
    これから伊藤さんを「コピーライター・いとうしげさと」さんと呼ばせていただきます。

  2. いやいやいや。そんなに良い例とも思わずに「たとえばこんな感じ」というつもりで送ったのが思わぬ高評価を得たのでちょっと気恥ずかしいです。本のタイトル以外にもいろいろ提案しては今野さんに「センスない」「条太さんに評価されるとかえって不安になる」などと酷評されていたので意外な気がします。

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