さらにストップの話

それではストップをしやすいように台にぴったりくっついていればいいかと言えば、そうではない。台に近すぎるとドライブをするだけの時間とスペースが足りなくなるので、もしも長いボールがきたときにドライブをできなくなるのだ。できたとしても後ろに下がりながらでは威力が落ちる。これでは本末転倒だ。

長いボールというのは「ドライブができる」と同時に「ドライブをしなくてはならない」ボールでもある。なぜなら、長く来たボールはストップをすることができないため、どのように打とうとも必ず台から出るボールを相手に送ることになるからだ(台の端から低くネットを越えるように打って、なおかつ台上で2バウンドさせることは物理的に不可能である)。当然それは相手からドライブで攻め込こまれることを意味する。

つまり、長いボールは、ドライブをできるチャンスであると当時に、そのチャンスを逃したら次は必ず相手にチャンスが移ってしまうボールでもあるのだ。だから長いボールは必ず攻撃しなくてはならない。選択の余地はない。したがって選手は長いボールをドライブできるだけの十分な距離をとって構えていなくてはならない。

それだけ台から離れて構えていながら、台から出ないと判断したら大急ぎで前に出て、可能な限り前で打球しなくてはならない。そこで重要になるのは、相手のボールが台から出るか出ないかの判断の早さだ。

ストップは、ボールが台に弾んだ直後にラケットが静止に近い状態で当てなくてはならないので、実際にはボールが弾むはるか前にストップを決断する必要がある。具体的にはボールがネットを越える前ぐらいには判断していなくてはならない。

よって、すぐれた卓球選手は、相手のボールがネットを越える前に、そのボールが自分のコートで2バウンドするかしないかを判断しているわけだ。

簡単そうなサービス直後の台上のちょこちょことしたボールのやりとりの裏では、このような攻防が繰り広げられているのだ。そしてこの領域の能力において、水谷を上回る人間はおそらく世界にはひとりもいないだろう。

さらにストップの話” への 7 件のコメント

  1. おっしゃっていること、よーく判ります。
    僕は、あのポイントで、あいちゃんにはスマップ使って欲しかったですっ。

    1. はい、何しろストップは、ドライブ、台上バックドライブといった現代卓球の粋と密接に関係しているので、止まらなくなりました。

  2. 連日のブログ更新楽しく読ませてもらってます!

    カメラのアングルの話なのですが、NHKのデイリーハイライトで卓球の報道がされる際、低めの良いアングルからの映像が毎回流れていたように思います。
    欲を言えばぜひあのアングルで試合が見たかったですね。

    1. そうですね。しかし通常床のカメラは必ず激しくボールを追っているので見るに堪えない映像ばかりなのです。そういう役割分担のようです。
      もっとも、撮影しているのはNHKかどうかわかりません。どこかの国の映像を独占放送しているのかもしれません。

  3. いつも楽しくブログ拝見してます。 ひとつ質問させてさせて下さい。台の端から低くネットを越えてなおかつ台上で2バウンドはさせるのはどうしても物理的に不可能でしょうか?ボールのスピードにもよるかと思いますが、ラバーでボールのエネルギー吸収してやれないでしょうかね? すみません試合では使えないつまらない質問で。

    1. ご質問ありがとうございます。
      絶対に不可能かどうかは実は計算していませんので言えませんが、たとえばとんでもなく強い下回転をかければ可能だと思います。
      回転をかけなくても可能だとしても、確率(許容される打ち出し速度)が低いことは想像ができると思います。
      物理的に確率が低いので実用的ではないということが言いたかったことです。

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