張本勲という元プロ野球選手のコメンテーターがテレビで水谷が銅メダルをとったときにしたガッツポーズに苦言を呈したという記事を見た。相手に失礼だとのことのようだ。
「スポーツは礼に始まって礼に終わる」というセリフもあったそうだ。
番組の辛口のご意見番として、常に普通の人が言わないような奇をてらった発言を求められる立場と、よく考えないで簡単に反論されそうなことを言う迂闊さがあれを言わしめたのだろうと推測できる。
言ってしまえばそれだけのことだが、これまで数えきれないほどのガッツポーズを見てきた氏が、なぜ水谷のガッツポーズにだけ反応したのかをあえて考察してみると、二つの可能性が考えられる。
ひとつは、これまで話題にならなかった水谷が急に取り上げられたことに対するかすかな嫉妬、苛め、戒めなどが混然一体となったというものだ。水谷は卓球界ではとっくの昔から日本卓球史上最高の選手でカリスマだったのだが、張本氏から見れば急に出てきたように見えたわけだ。「俺への挨拶もなしになんだコイツは!」という、いわば対戦相手にではなく張本氏に対して失礼だったというわけだ(笑)。
もうひとつの可能性は、水谷のあまりに凄まじい気迫と壮絶なプレーに、究極の精神性、聖なるものを見てしまったという可能性だ。氏はそこにギター侍ならぬ「侍」を見てしまい、その結果、つい他のスポーツには要求すべくもない高い精神性を要求してしまったというわけだ。誰だってあんなラリーを見たら姿勢を正したくなる。あれは人間のラリーではなかった。
妄想にもほどがあるが、これはこれで良い話ではないか。こういうことにしておこう。張本氏は水谷の卓球に武士道を見てしまったのだと。