サムソノフの偉大さ

サムソノフがいかに偉大であり、なおかつ悲運の選手かを示そう。

1990年代末から2000年代初頭にかけて、サムソノフの強さは際立っており、かなりの期間、世界ランク1位に君臨していた。しかしそのブロッキングスタイルと、穏やかな性格のために爆発力がなく、世界選手権とオリンピックの金メダルだけはことごとく逃していた。

サムソノフがどれだけ強かったかを示すひとつの記録がある。

1997年世界選手権マンチェスター大会の記録だ。001サムソノフが倒した相手の名前を見てほしい。

6回戦 馬琳

7回戦 王励勤

準々決勝 丁松

準決勝 孔令輝

冗談としか思えないメンツだ。無茶苦茶である。念のために言っておくと、孔令輝は95年世界チャンピオンかつ00年シドニー五輪金メダリスト、馬琳は08年北京五輪の金メダリスト、王励勤はその孔令輝と馬琳と世界選手権の決勝を3度に渡って争いことごとく蹴散らし3度の世界チャンピオンとなった鉄人だ。

そんな奴らをゴボウ抜きしたあげくに

決勝 ワルドナー 3-0 サムソノフ

ときた。しかもこの大会の団体戦でサムソノフはワルドナーを2-0でこましている。なんたる不運。

何が不運って、この大会のワルドナーの強さは異常で、決勝までの全試合、1ゲームも落とさずに優勝したのだ。はっきり言ってこれは人間業ではない。こんな人間ではない生き物さえいなければサムソノフはとっくに世界チャンピオンだったのだ。これが不運と言わずにいられようか。

そして迎えた2000年シドニー五輪。34歳となり力が落ちつつあるワルドナーと、24歳となりいよいよ絶頂期を迎えつつあるサムソノフは準々決勝で相まみえた。

若き天才と神の子ワルドナーの戦いだ。

ワルドナー 20-22, 18-21, 21-14, 21-17, 21-19 サムソノフ

ひーっ。

あまりの死闘に、勝利後のワルドナーは雄たけびを上げることすらできず、その場にしゃがみ込んだほどだ。

001

ふふふふふふふ、不運。不運だぞサムソノフ。

そして2016年リオ五輪。水谷と銅メダルを争って敗れたサムソノフは40歳となっていた。

ブラディミル・サムソノフ。

NHKは知らなくとも、卓球人はこの名前を忘れてはならない。

サムソノフの偉大さ” への 31 件のコメント

    1. そいえばそうですねえ。あれは可愛そうでしたね。ま、弱いと言われればそれまでですが。

  1. スエーデンの面々は当然ですが、何故ヨーロッパの選手は皆選手生命が長いんでしょうか?
    後釜が育ってないと言えばそれまでですが…
    サムソノフも、出るだけでなく、第一線でメダル争いをしてるくらい強いんですからね〜

  2. 以前プリモラッツが無冠の帝王と言われていましたが,
    今ではサムソノフにふさわしい言葉になってしまいました.
    北京のパーソン戦,エッジかサイドかもめてノーカウントになったやつですね.

  3. サムソノフに世界タイトルはない…と思ったら、ワールドカップは制してますね。
    『奇跡のレッスン』でプリモラッツやロスコフまでチェックしているスタッフがここだけ見落とすとは考えにくいので、尺か構成上の都合(番組でのサムソノフはやられ役なので)で切られたと考えるのが自然でしょうか。
    とはいえ、紹介すれば“元世界王者”に水谷は勝ったことになるわけで、ちょっと勿体なかったような気もします。

    惜しい試合といえば、ロンドン五輪で張継科に勝ちかけた試合を思い出します。

    1. うむむ、確かに。そういえばそうですね。サムソノフに気づかないはずはないですね。
      しかし、それがマリオの教え子だとは知らなかったのでしょうね。

  4. 僕の記憶では、この時1回戦か2回戦で、日本の誇る全日本チャンプの岩崎君が、3セット合わせて20本位しか取れなくてサムソノフに負けてるんですよね。誰か、僕の記憶が正しいか、調べて頂けませんか?

    1. 英国の獅子さん,KOです.

      5回戦で(スーパーシードが出たのは4回戦から)
      サムソノフ(21-6,21-6, 21-9)岩崎
      でした.
      さすがよくご記憶ですね.
      おっしゃるとおり,岩崎は当時の全日本チャンピオンで,
      準々決勝から山本恒安,松下浩二,渋谷浩,とカット3枚ぶち抜いて
      優勝したのでした.
      この全日本は最終日会場で観戦したのでよく覚えています.
      この頃は年末に綾瀬の東京武道館で行われていました.

    2. 記憶あります。
      確か6、8、5とかで全く歯が立たなかったようです。
      それよりも王涛と松下が衝撃ですね….。
      8、3、18って大人と子供ですね。

  5. 凄いなサムソノフ!迂闊にも、サムソノフを見くびっていた自分を反省したい!水谷がサムソノフを倒した意味も、実は重かったのかっ!

  6. すばらしい投稿です。すばらしい。マンチェスターで当時無敵とも思われた孔令輝のツッツキをことごとく狙い撃ちしてぶち抜いた試合は、鳥肌たちながらテレビにかじりついて見ました。

    1. そうですか!マンチェスターのサムソノフ対孔令輝は見ていませんので羨ましいです。

      1. ニコビデオに動画があります.
        Google で「サムソノフvs孔令輝 1997」と検索してみてください.
        ちょっとだけ見ましたが,いつもよりサムソノフが積極的に見えます.

          1. KOです.
            今更ですが,サムソノフ対孔令輝の url は
            ttp://www.nicovideo.jp/watch/sm5442314
            ttp://www.nicovideo.jp/watch/sm5457692
            ttp://www.nicovideo.jp/watch/sm5487528
            ttp://www.nicovideo.jp/watch/sm5559590
            です.

  7. サムソノフといえば、”出たて”の頃は
    ワルドナーの後を襲う欧州の天才児、と
    言われたマリオの秘蔵っ子。
    その全盛期、斜陽のワルドナーに
    頂点を阻まれ続けると
    誰が予想したでしょうか・・・

    安定長寿のブロッキングスタイル、
    それでいて
    当代一級のチョッパー・丁松を
    ブチ抜く力も持ち合わせていた。

    とはいえ”集中した”ワルドナーは
    その上を行くブロックのみならず
    変幻自在のサービス、レシーブ、
    カーブ・シュート自在のドライブ、
    要所で両ハンドのミート打ちと
    まさに人外の存在でした。
    サムソノフの最大の不運は
    往々にして現れる
    ”遊びモードのワルドナー”に
    タイミングがあわなかったことかと。
    この点、ボルにも通じるものが・・・

    水谷のメダルという快挙の裏に
    こういう凄玉がいたんだぞ、と
    一般の方々に説明するのに
    いつもの労力を費やすわけですね、
    我々卓球マニアは(苦笑

  8. こういった、超ウルトラ・スーパー・ジャイアント・キングコング級の卓球オタクの方達と、オフ会をやってみたいものですね。さぞかし、至福の時を過ごせそうな気がします。卓球王国さん、全日本の時辺りに、企画してくれませんかね(笑)。

    1. >英国の獅子さん

      いいですねぇ、王国オフ会☆
      選手部門とマニア部門に分けて。
      ほら、野球選手と野球オタクって
      だいぶ違いますし(汗

      マニア部門は試合の代わりに
      条太さんによる
      「卓球オタク検定」で競っても。

      「’03年ヨーロッパ選手権で
       2冠を獲得した
       ベラルーシの選手を『2人』挙げよ」

      みたいな・・・(悪のり

      1. 卓球オタク検定、賛成!

        でも、どうせ、KOさんが優勝でしょうね?(笑)
        昔、仲村渠さんのブログに「伊藤茂雄vs今野裕二郎?の2年連続の果し合いのようなスマッシュの打ち合いによるセットオールジュースの熱戦」って書き込んだら、「1年目はセットオールのジュースだったけど、2年目はセットオールのテンハンだった」と訂正されましたから(笑)。

        1. KOです.
          いや,最近年のせいで記憶力が衰えて来たので...(^^;)

          さっそくつっこみですが,伊藤【繁雄】さんですね.
          長島茂雄と混ざっちゃいましたか.
          伊藤-今野はどちらの試合も会場で見ましたので,
          たまたまよく覚えていたのです.
          卓球レポートに「満足そうな顔で引き揚げる伊藤繁雄」という
          写真が載っていたと思います.

      2. KOです.
        オフ会は条太さんにお世話頂く一手かな.

        >「’03年ヨーロッパ選手権で
        > 2冠を獲得した
        > ベラルーシの選手を『2人』挙げよ」

        え,そんなことがあったの?,と思ってしまいました.
        サムソノフはともかくとして,シェチニンか.
        「そういえばそういう選手いたな」,ですね.
        ITTF のデータベース見ると,ITTF の試合で唯一の個人戦優勝がこのときのダブルス(陳衛星と),
        団体唯一の優勝がこのときのベラルーシチーム,
        これはわからない.
        切りまくって余り打たないカットマンでしたかね.

        あらためて,伊藤さんのあげているサムソノフの勝ち上がりはすごいですね.
        中国選手4連破!(小野誠治がピョンヤンで中国選手を4連破したのを思い出しました).
        ワルドナーはヨーロッパ選手とばかり当たっていたのですね.

        1. うむむ、流石のKOさんも
          一発ではシェチニン出ませんか(汗
          しかしいざお分かりになると出てくる
          データの山にはお手上げです。

          この大会、シェチニンは単もベスト8、
          バカ当たりだったのですね。
          クラシックなブチ切り屋、
          陳衛星とは対照的でした。

          サムソノフ絡みの問題を
          無理矢理作ったわけですが
          条太さんならこのくらい
          バンバンできそう(苦笑・・・

          強いて前段のプリモラッツ、
          ロスコフ絡みなら

          「’94年ヨーロッパ選手権、
           準々決勝惜敗も
           絶好調・プリモラッツの肩を破壊し
           またも準決勝敗退に追い込んだ
           ブチ切りカットマンの出身国は?」

          「ロスコフが少年期に憧れた
           左シェーク・バックドライブの名手で
           ’87年世界選手権団体では
           4-4のラストで
           惜しくも敗れた先駆者は誰?」
           
          みたいな・・・(だからサムソノフを語れと

          1. > 条太さんならこのくらい
            > バンバンできそう(苦笑・・

            いえいえ、私などとっくに置いてかれてますよ(笑)。

  9. あらら、ブログ主でいらっしゃる
    条太さんを置いてきぼりとは
    悪のりがやはり過ぎましたか(反省・・・

    「長身で知られるサムソノフ。
     クレアンガとの20cm差
     凸凹ダブルスでも活躍したが
     それを上回る身長差で
     欧州男子複を制したペアは?」

    ・・・このくらいで如何でしょう?(汗

    1. 左中ペン表さんの問題は難しすぎてわかりません.
      そもそも,ヨーロッパ選手権で誰が優勝したかもよく覚えていないし.
      カンニングなしで考えてみると・・・

      「’94年ヨーロッパ選手権、
       準々決勝惜敗も
       絶好調・プリモラッツの肩を破壊し
       またも準決勝敗退に追い込んだ
       ブチ切りカットマンの出身国は?」

      この頃ヨーロッパで強かったカットマンは陳新華だが・・・?

      「ロスコフが少年期に憧れた
       左シェーク・バックドライブの名手で
       ’87年世界選手権団体では
       4-4のラストで
       惜しくも敗れた先駆者は誰?」

      時代的に言うならアペルグレン?
      リンドも候補かな.
      グルッバも居合い抜きバックハンドの名手だけれど,
      右利きなので違うな.
      世界選手権団体の話はさすがに調べないとわかりません.

      「長身で知られるサムソノフ。
       クレアンガとの20cm差
       凸凹ダブルスでも活躍したが
       それを上回る身長差で
       欧州男子複を制したペアは?」

      私の知る限り,一流選手で一番長身はカリニッチです.
      2メートル以上あったと思います.
      左ペンのショートマン
      1983年東京大会でシュルベック・カリニッチが優勝したのは覚えています.
      欧州男子複は調べないとわかりませんが,
      シュルベック・カリニッチは優勝しているのかな?

      そういえば,大昔のジョニー・リーチも写真見る限りずいぶん長身でした.
      さすがに実物は見ていません.

      このあたりでご勘弁ください.

  10. KOさんほどの剛の者を
    煩わせてしまい・・・m(_ _)m(平謝

    >「’94年ヨーロッパ選手権、
     準々決勝惜敗も
     絶好調・プリモラッツの肩を破壊し
     またも準決勝敗退に追い込んだ
     ブチ切りカットマンの出身国は?」

    これは、当のカットマンは
    ギリシャのチオカですが
    クレアンガと同様の移民選手なので
    正解は「ルーマニア」。
    チオカも「壊し屋」系でしたからね。
    ひっかけ問題のつもりでしたσ(^_^;)

    >「ロスコフが少年期に憧れた
     左シェーク・バックドライブの名手で
     ’87年世界選手権団体では
     4-4のラストで
     惜しくも敗れた先駆者は誰?」

    これは「リンド」です。
    挙がっているので正解ですね☆
    高校部室にあった
    卓レポバックナンバーから・・・

    西ドイツ(!)vsスウェーデンは
    奇しくもルーマニア出身の職人・
    ベームが3点取って
    中国戦を見据えていた
    スウェーデンに冷や汗をかかせ、
    「9番リンド、ロスコップ(!)を
      ゲームオールで下す」と。

    >「長身で知られるサムソノフ。
     クレアンガとの20cm差
     凸凹ダブルスでも活躍したが
     それを上回る身長差で
     欧州男子複を制したペアは?」

    これも「カリニッチ」が挙がっているので
    ほぼ正解です☆ 
    仰る通り極端な長身で左ペン、
    何処にでも届く鉄壁ショート、
    そしてダブルスの名手でもありました。

    ’82・’84年に優勝した
    シュルベクとのペアも
    身長差はありましたが
    ハッキリ「上回る」と言えるのは
    カリニッチもクレアンガと組んで
    ’94年に優勝しているから・・・
    30cmはあったでしょうね。

    やはり作問センスの不足、
    痛感です(;>_<)(脂汗
    大会成績に基づくようなのは
    駄目なようですね。

    KOさんならビシビシ正答される
    良問の制作は
    やはり条太さんの腕を
    煩わせたほうがm(_ _”)m・・・(切

    1. KO です.

      チオカか,なるほど.
      陳新華はなんでもぶつ切りというタイプではなかったように思ったので
      嫌な予感はしましたが(^^:).

      カリニッチとクレアンガのペア.
      大きい左前陣止めマンと小さい右ブンブン丸ですか.
      こんなペアは夢想だにしませんでした.

      というのは世代が離れているような印象があるからです
      (国というか協会も違いますが)
      シュルベックは1960年代後半(つまり 50 年くらい前)から活躍しました.
      最初の頃はステパンチッチと組んでいましたが,
      後ではカリニッチと組んでいました.
      どちらのペアも世界選手権で優勝しています.
      この頃はヨーロッパに強いペアが多かったですね.
      ヨハンソン・ベンクソン,ヨニエル・クランパ,など.
      さて,カリニッチは 50 年前の現役選手のシュルベックと
      今の現役のクレアンガ(もう引退した?)とダブルス組んだことになります.
      日本で言えば,長谷川信彦ともダブルス組んだし,
      今の現役選手ともダブルス組んだ,というようなものです.
      それで,「えっ!?」と思ってしまいました.
      シュルベックもクレアンガも選手寿命が長かったのでこういうことが起きるのですね.

      上で出てきた選手はチオカとクランパを除いて
      全員生でプレー見ました(^^).
      長谷川,ステパンチッチ,ヨハンソンは故人になりましたね.

      だんだん元の話からそれて来ちゃいましたね.
      伊藤さん,どうもすみません.
      でも,とても楽しかったです(^^).

      それでは皆様よいお年をお迎えください.

      1. 大晦日ギリギリまでのマニアック談義、私も堪能させていただきました。
        来年もよろしくお願いします。
        皆様のご健康をお祈り申し上げます。

  11. 迎春:あけましておめでとうございます。

    自分の愚問で年が暮れては・・・
    とドキドキでしたσ(^_^;)
    KOさんの律儀なアンサー、
    条太さんの〆の挨拶に救われました☆

    シュルベク&ステパンチチ、
    シュルベク&カリニッチ、
    カリニッチ&クレアンガ、
    サムソノフ&ロスコフを挟んで
    クレアンガ&サムソノフ・・・と
    うまいこと繋がりましたかね(苦笑

    仰る通り、カリニッチも含め
    キャリアのとても長い選手たち。
    殊にシュルベクは御年47歳で
    クロアチア代表としてカムバック、
    世界選手権では
    若干14歳のフィリモンと
    対戦していますから
    一人でどれだけ繋ぐのかとσ(^◇^;)

    それにしても、生観戦歴を伺うと
    書籍と台にしか向かっていなかった
    自分との差は歴然ですね・・・
    その辺り、マニア道では
    条太さんやKOさんには
    一生及ばないところです(汗

    条太さんはじめ、皆様には昨年中
    たいへんお世話になりました。
    本年も皆様にとって
    良き年となることを
    お祈りするとともに
    改めまして、宜しくお願い致します☆

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