子供たちの学校の勉強が大変である。このあたりには日本人学校などないのだが、普通の授業の他に、英語を話せない生徒に英語を教える補習をしてくれる私立学校(小学校~中学校)があるので、赴任者の子供たちは強制ではないが結果的に全員そこに通っている。英語の補習といっても、先生は日本語を知っているわけではないので、かなり苦しいが子供たちは1年ぐらいするとわかるようになるようである。
その学校は、学校名に「クリスチャン」とついているぐらいなので、普通の学校よりもキリスト教に関して厳格な学校だと思われる。教科書の訳や宿題を手伝っているのだが、かなり衝撃的である。
たとえば、地理や理科で地形や生物の構造を説明するのだが、いちいち「神様がそう造られた」と枕詞のように説明が入るのである。地理の教科書では、バベルの塔の西側と東側に住んでいた人たちが世界の各地に別れて別の人種になったというぐあいだ。理科の教科書は題名からして「God’s World」だ。ほとんどのことは科学的に説明されるのだが、かなり根源的な部分だけに神様が出てくるようになっていて、信仰と科学が微妙に調和するようになっている。神様の話が出てくると子供たちが「これ、本当なの?」と聞いてくる。私が「デタラメだ」と言うと「退学になるからそんなことを言うのはやめて」と妻が怒る。しかたがないので最近はうつろな目で「本当だ」と言うことにしている。
聖書の授業というのがある。日本で言うと道徳だろうか。その宿題がキツイ。聖書に出てくるだれそれの三人の息子の性格について述べて、それを自分の日常生活に結びつけて意見を書けというのである。もっとも性格と言っても、普通の性格のことではなくて、神様への忠誠心のことである。神の前ではそれ以外の「性格」など無意味なのだ。日本に帰ってからまったく役に立たないことがわかっていることだけに、教えるのがつらい。文法の教科書ともなると、文法さえ合っていれば話は何でもよいとばかりに、クジラに飲み込まれた信者の話やらバンバン出てきてしまう。真に迫っている挿絵が念入りで面白い。
算数の教科書もふるっている。応用問題の例が面白いのだ。「マイクは夏のキャンプに行くために一本5セントで仕入れたペンを売りました・・」とあれば、その次の問題は「ナンシーはパーティーに行くために20冊のノートを仕入れ・・」というように異様に商売の問題が多いのである。うーむ、アメリカらしい。