小室から興味深い話を聞いた。
小室の家には仏壇があるのだが、震災後間もなく自宅に行くと、仏壇は隣の部屋の床に倒れていたという。二階まで浸水したのだからこれは怪しむことではない。
ところが何日か後に行ってみると、その仏壇がきちんと床の間に立ててあったという。被災者を捜索している自衛隊か警察の人たちが、わざわざ移動してくれたのだ。仏壇が上下逆さまに置かれていたことから、その人たちは宗教にはさしたる興味はなかったものと思われる。連日、沢山の遺体を目にしている彼らにしてみれば、床に転がっている仏壇をのをそのままにして置くことはしのびなかったのだろう。
そのときの彼らの心情を察すると胸にこみ上げてくるものがある。