ジャパンオープンの分析 水谷/岸川ペア

このブログを通して知り合いになった卓球ファンの方から、今年のジャパンオープンの映像のDVDがこってりと送られてきた。

さっそく1枚めを見てみると、男子ダブルス準決勝、水谷/岸川vs松平/丹羽の試合だった。
そこで、例のダブルスのコース取りを確認するため、その代表として全6ゲームを通したレシーブのコース取りを丹念に記録してみると、なかなか面白いことが分かった。
両ペアとも、右利きと左利きのペアだ。データを取ったのは、レシーブをストレートにしたかクロスにしたかと、それが相手の選手にとってフォアサイドだったかバックサイドだったかだ(両ペアとも右利きと左利きなので組み合わせによって変わるのだ)。センターライン上にレシーブされたボールは、角度がクロスに近いのでクロスとして扱った。

各選手の結果は次のようになった。

【水谷】左利き
クロスにレシーブ 6回
ストレートにレシーブ19回
計25回
相手の選手のフォアサイドにレシーブ7回
相手の選手のバックサイドにレシーブ18回
計25回
圧倒的にストレートにレシーブしていることがわかる。ストレートにレシーブすれば、相手は絶対に右利きの岸川のフォアクロスには打てないからだ。右側に送ったボールを左側から打つことは世界チャンピオンでも不可能である。バカみたいに自明な事実なのだが、スポーツではこういうことが意外に気づかず、なおかつ大切なことなのだ。

【岸川】右利き
クロスにレシーブ 28回
ストレートにレシーブ 3回
計31回
相手の選手のフォアサイドにレシーブ 14回
相手の選手のバックサイドにレシーブ 17回
計31回
お分かりだろうか。岸川は、水谷にもまして、相手にとってフォアだろうがバックだろうがおかまいなく、徹底的にクロスにレシーブしているのだ。もちろんそれは、次のボールを左利きの水谷のフォアクロスに打たせないためである。岸川は、6ゲームを通してたった3回だけストレートにレシーブしているが、その3回とも右利きの松平のバックサイドだった。左利きの丹羽には一度もストレートにレシーブしていない。水谷のフォアクロスをフォアハンドでぶち込まれたんではたまらないからだろう。

つまりこのペアは、少なくともこの試合では、相手のバックだろうがフォアだろうかおかまいなしに、とにかくパートナーのフォアクロスを打たれないことを何よりも重視してコース取りをしていたのだ。そのことによって相手に待たれる不利よりも、フォアクロスを打たれないメリットの方が勝ると判断していたということである。

そしてこれは、レシーブに限らず大きなラリーでも傾向は同じで、特にどちらかのペアが後陣に下げらて長いラリーになったときに、より徹底されていて、それはもう頑固なほどであった。