最近の若者

「最近の若者は」という話を聞くことがあるが、私はそういうことを言ったことも思ったこともない。

私が学生の頃、新人類などという言葉が流行り、私も言われたことがある。些細な流行や習慣の違いを取り上げて、なんとまあバカバカしいことを言うんだろうと思ったものだった。自分も年をとったらそんなことを言いたくなるんだろうかと思ったが、別にそんなことはなかった。世代の違いよりもひとりひとりの違いの方がずっと大きいとしか思えない。あとはちょっとした生活習慣が違うだけだ。「最近の若者は」と言う人たちはおおかた、自分の昔を美化した妄想と若者を比較しているんだろうと思う。

私が世代論を嫌いなのには実は理由がある。学生運動だ。大学や会社で、学生運動をした世代の人たちから「今の学生は意識が低い。俺たちのころは・・」と散々愚劣な話を聞かされたためだ。その人がどういう人なのかは、普段を見て分かっているわけだから、今さら昔の崇高な話をされたところで、メチャクチャなフォームのオヤジに「昔は強かった」と言われるのと同じようなもので、その程度は知れている。今でも地下活動で政府転覆を狙っているとか、政治家になって社会を変えようとしているというならともかく、ただの流行でデモをしていただけの人の自慢話などバカバカしくて聞いていられない。

そして大抵の場合、私はこういう話を感心して聞かなくてはならない立場なので困るのだ。

昔、若者と言われた世代も年をとれば、今度は昔の大人と同じように若者に「俺たちの頃は」という寝言のような話をする。60年代の学生もそういわれたし、昭和初期、大正時代、明治維新、江戸時代の武士ですら、その前の世代からはくそみそに言われてきたのだ。これは人類の有史以来そうなのであって、この点においてこそ、どの世代もまったく違いなどありはしないのだ。