中国人名の読み

卓球選手には中国人が多いので、その読み方について議論になることがある。卓球とは関係なく、あるときから、日本政府と中国政府の協定で、お互いに自国の読み方で読むことに統一すると決めたので、NHKでは必ず日本語読みをしている。これはそう決まっているからだ。

これに対して卓球専門誌では、必ずしもそれに従わなくて良いらしく、漢字の横に中国読みに近い音を片仮名で表記するのが今の潮流だ。以前はそうではなかったので、私の世代にとって荘則棟はソウソクトウだし、江加良はコウカリョウだ。たしか陳龍燦あたりまでは日本語読みが主流だったと記憶している。原語に近い読みが増えてきたのは、馬文革、王涛あたりからだろうか。今では王励勤はオウレイキンよりはワンリキンと言う人の方が多いだろう。

日本語読みと原語読みのそれぞれの利点を考えてみる。

日本語読みの利点
・初めて見たときに読める(しかしマ・リン、バ・リンなどのように一意に決まるとは限らない)。
・読みを覚えやすい。
・パソコンで変換するときに便利(そんなに必要なことではないが)。
中国語読みの利点
・読みを覚えておくと、英語表記を見たときに誰のことか分かる(卓球ファンはこれが結構必要)
・本人や欧米人と話すときに、誰のことか分かってもらえる(一般人にはほとんど不要)

こんなもんだろうか。卓球に興味のない一般人にはやはり日本語読みするのが妥当だろうし、卓球関係者は振り仮名をみて原語を覚えると便利だから、今のやり方がいいだろう。なにしろ違う言語なので完璧な解決方法はないのだ。

ただ、80年代後半に、「人の名前を別の読み方をするのは失礼だ」という論調があったが、これだけは違うと反論しておきたい。本人に話しかけるときはそうだろうが、それ以外の場合では失礼とは思えない。中国人だって日本人の名前を中国読みしているに決まっているが、それを失礼だと考える日本人はいないだろう。日本という国名でさえ「ニホン」とは発音されないし、それならまず世界中に日本をJapanではなくてニホンと聞こえるように読ませなくては筋が通らない。

今のように、中国人名の漢字に片仮名で原語に近い振り仮名をつけるのはもっともいい方法だと思うが、あくまでその理由は「本人に失礼だから」ではなくて「便利だから」だというのが私が言いたいことだ。

仮に、卓球選手の英語表記を見る機会も選手本人に呼びかける機会も、アメリカ人と卓球選手について話す機会も一生ないとしたら、荘則棟をソウソクトウと呼び続けて何の問題があろう。