ときどき、とてつもなく大きな声を出してくしゃみをする人がいる。親戚にひとりいてとても印象深かったが、その後、学校や会社で見かけ、世の中にはある確率でそういう人がいることがわかった。アメリカに来てからは、今一緒の部屋で仕事をしているアメリカ人がそうだ。
アメリカ人はくしゃみをするといちいちexcuse meと言って謝り、周りの人はGod bless you(神のご加護を)と言っていたわり、くしゃみをした人がthank youという。この一連のやりとりが実にめんどくさくて、私はやらないようにしている。
ともあれ、アメリカ人はくしゃみをしただけで周りの人に謝るのだが、さすがに上記の大声でくしゃみをする人は全然excuse meとは言わないし、周りの人も笑うだけであきれている。なにしろ静かな部屋で突然、ほぼ絶叫状態でくしゃみをするのでみんな一様に驚くのだ。驚かされるので内心は腹が立っているに違いない。私も実は不愉快に思っている。
以前、日本にいたときの上司がこのレベルの絶叫くしゃみをする人だった。あるとき、装置に問題があってメーカーの人を呼んで深夜までかかって装置を直していたことがある。夜11時頃になるとまわりは誰もいなくなって私とその上司とメーカーの技術者の3人だけになり、装置の発する機械音だけが静かに鳴っていた。と、その上司がくしゃみをしそうな顔になった。わたしは「まずい」と思ったがときは遅く、「ハエーックショーーイ」と怒鳴り散らすようなくしゃみをした。装置の摘みを回していたメーカーの人は腰を抜かさんばかりに驚いて全身をちぢ込ませて床にしゃがみこんでしまった。心臓が弱い人ならショックで死んでも不思議はなさそうな状況だった。
どうも本人は、自分のくしゃみがどれだけ異常なのかわかっていないようである。「くしゃみをする瞬間、鼓膜が開いたりして聴覚が麻痺して自分では聞こえないようになっているのではないか」という仮説を同僚と話し合ったものだ。
同じ上司があるとき、社外に電話をかけ始めた。なかなか相手が出ないらしく、ダイヤルしたまましばらく受話器を耳に当てて待っている。そのうちに例のくしゃみをしてしまい、直後に「失礼。○○の△△と申しますが・・」と続けたのだ。電話に出た途端にバカくしゃみを聞かされた相手はどう思っただろうか。
なお、女性でこのようなくしゃみをする人はひとりも知らない。遺伝子のためなのか自分で矯正するためなのかは興味深いところだ。