テイと作業をしながらいろいろな話をした。テイはカレッジにいたときにバスケットをしており、コーチをしたこともあるほどの技量の持ち主だという。
私はかねてから黒人と話すときに人種差別を過剰に意識してしまって、文字の色を表すのにブラックと言うのでさえ口ごもってしまうようなところがあり、どうにもモヤモヤしたものがあった。もちろんこれは彼らの前でブラックと言うことが悪いような気がするためだが、そう思う方が失礼であることは言うまでもない。黒人を尊重し、黒人のプライドを認めるためには、黒いものは黒いと堂々と言えなくてはならないし、ときには黒人という言葉も普通に会話できなくてはならない。
どうせこちらはイエローなんだから、そのあたりのことを思い切って話してわだかまりを解消してみようと思い立った。
テイがバスケットの話をしたので、「偏見かもしれないが、黒人は全員がバスケットが上手なような気がする。バスケットできない人っているのか?」と言うとテイは「それは偏見じゃなくてステレオタイプっていうんだよ」と笑った。黒人の28%はバスケットボールはできないし、22%はリズム感が悪くて踊れないという。「そのパーセントはどこから来た?」というと「勘だ」と笑った。
それで、日本人は白人から見ればイエローモンキーだと話すと、それは聞いたことがないという。どうも日本人が思うほどイエローモンキーという言葉はポピュラーではないようだ。さらにテイは声をひそめて「モンキーは俺たちだ。白人は俺たちのことを陰でモンキーっていっているんだ」と言った。なるほど、確かにサルの皮膚は黒い。してみると、イエローモンキーという東洋人への侮蔑には、黒人をモンキーと表現する前提があったのかもしれない。テイは続ける。「モンキーならまだいい。本当はアライグマ(raccoon)と言われているんだ」と言った。私が「今やそのアライグマが大統領になってしまったわけだな」というと「それだよ!いい落ちだ!」と笑った。
打ち解けすぎて「今度友人たちに紹介する」と言われた。ちょっと踏み込みすぎたか。