病院でジョージ・ハリソン

「ジョージ・ハリソン」という名前を書いてしげしげと見つめたら不思議な感覚にとりつかれた。「誰だ?これは」という感じだ。自分の名前や字を何度も見たり書いたりしているとそのうち違和感に取りつかれる、いわゆる「ゲシュタルト崩壊」だ。http://ja.wikipedia.org/wiki/ゲシュタルト崩壊

ジョージ・ハリソンとは、中学2年生のときから慣れ親しんできたビートルズのメンバーの名前である。先日、骨折のため病院に行ったら、待合室においてあった雑誌にどうみても若き日のジョージ・ハリソンと当時の恋人であるパティ・ボイドの写真が載っていた。しかしよく見ると、それはジョージの息子のダニエル・ハリソンだった。あまりにそっくりなので、意識的に似せて撮影しているのだろう。特集のタイトルも、ジョージの名曲「ヒア・カムス・ザ・サン」のSunをSonに変えるというニヤリとさせられる洒落になっている。ジョージは生前、ダニエルに「君は僕よりもジョージ・ハリソンそっくりだね」と言っていたという。何を言ってるんだか。骨折の情けなさを紛らわす小さな楽しみだった。

今週、日本から出張に来ているNさんが高校時代にリンゴ・スターに会った話を聞いた。当時かれは札幌に住んでいたのだが、リンゴがCM撮影のために来日していて、札幌に来たのだという。もちろん極秘にである。ところがあるクラスメートの父親がその撮影の関係者だかで、リンゴが来ることをNさんに漏らしたのだ。Nさんは「絶対に押しかけたりしないからホテルを教えてくれ」と言って教えてもらい、即、別の友人と学校をサボって会いに行ったのだという。Nさんの有無をいわせぬ行動力は高校時代からのものだったようだ。リンゴは気前よく会ってくれて、もって行った手作りのアクセサリーを受け取ってもらったそうだ。うらやましい話だ。

ミュージシャンに会ったのでは、旅行に行ったワルシャワのホテルで、私の前にチェックインしていたのが、トーキング・ヘッズのデビッド・バーンだったことがある。あのデビッド・バーンの後ろに私は並んだのだ! こっちは向こうを良く知っているので、どうしても親しげにチラチラと顔を見て何度も目が合ってしまい、気まずかった。

トーキング・ヘッズは好きだったが、話しかけたりサインをもらったりするほど好きだったわけではないので、相手が有名人だからといってにわかファンになるのはみっともないと思い、結局なにもしなかった。それに、彼から見れば自分は何者でもなく、記憶に全然残らない存在であるのが虚しいという気持ちもあった。相手がジョン・レノンやポール・マッカートニーならそれでもかまわないが、それ以外ではそういうのは嫌だったのだ。やっぱりサインくらいもらっておけばよかったかな。