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孔令輝の雄叫び

フルゲームでワルドナーを下し、叫ぶ角刈りの孔令輝。(同じく卓球王国刊『TABLE TENNIS FACINATION』より)。

こちらも立っていられない感じですな。

「100年に一人の天才」と言われるワルドナーの卓球を見ることができた我々は本当に幸運だった。だって100年に一人なんだから、我々が生きているうちにはたぶんもう現れないのだ、こういう人は。

ワルドナーの神業7 対孔令輝戦

そして決勝の対孔令輝(世界ランク1位)戦。

孔のネットインしたボールを例によって床すれすれで拾ったワルドナーだったが、そのボールは孔の台にバウンド後に激しく曲がり、ほとんどネットと平行に軌道を変えた。バウンドするまではこのボールに届くと思っていた孔、届かずにミス(ラケットには触ったがまともに当たらなかったと思われる)。

返すだけで精一杯のボールに横回転をかけるワルドナーの天才。

ワルドナーの神業5 対劉国梁

続く準決勝のアトランタ五輪金メダルで世界ランク3位の劉国梁戦でもワルドナーの神業が炸裂。

劉国梁がワルドナーのフォアミドルにスマッシュを打って、それをワルドナーがブロックをしたシーン。これも激しくサイド切りのカーブブロック。ラケット半分だけとどかない劉国梁。こんなに曲がらなければ届いたものを。普通、こんなコースにブロックしようと思うか?しかも劉国梁のスマッシュをだ!

しかもこの写真をよく見て欲しい。左の写真を見ると、ワルドナーは劉国梁のコースをバックと読み、バックのブロックの角度を出しているのが分かる。そして次の中央の写真で体を回転させてスペースを作りフォアミドルのボールに対応しているわけだが、実はこの間、わずか6コマしかないのだ。1コマは30分の1秒だから、これは0.2秒の動作なのだ。0.2秒の間に、ひざを使って上半身を回転させてラケット角度を出して、ボールに横回転をかけ、しかもフォアサイドを切ったコースにボールをコントロールしているのだ。もちろん物理的には可能なことだからこそやっているわけだが、「物理的には可能」と言うのがやっとのような机上の空論みたいなことをオリンピックの準決勝でやるのが凄い。

大変なものだ。

死闘の後

サムソノフを3-2で下した瞬間の様子(卓球王国刊『TABLE TENNIS FACINATION』より)。

あまりに激しい戦いに、喜びの雄叫びも上げられず、座り込むワルドナー。こんなに感動した写真はない。

ワルドナーの神業4

相手がネットをしたボールを台の下で拾い、ネットの外側を通してほとんど台に弾まないスーパーショットはときどき一流選手の試合で見られるが、サムソノフのそういうボールをワルドナーがあろうことかそのまま普通にドライブで打ち抜いてしまったシーンがこれ。こういうプレーはこの一本以外には見たことがない。

あり得ないボールの低さに、ワルドナーがとっさに右ひざを床につけて対応していることがわかる。急にこんなことができるなんて・・。

ワルドナーの神業3

前でのカーブは難しいが、後からとなると比較的簡単だ。そういう打点でワルドナーがやるとなると、こんな具合になる。サムソノフ、ラケット半分だけ届かず。

なんちゅうボールだ一体。

ワルドナーの神業2

ワルドナーのプレーを見ていたら興奮が止まらなくなってきた。テレビの画面に1コマづつボールの軌道をマジックで描いて解説だ(透明テープ貼った上からね)!

2000年シドニー五輪準々決勝、世界ランク2位のサムソノフ戦。長身でブロックの天才であり、ノータッチすることはほとんどないはずのサフソノフに対し、ワルドナーは信じがたいコースと軌道で何本もノータッチを取った。カーブドライブというのは、ある程度のレベルならそう難しくはないことだが、この写真のように高い打点でやるとなると話は別だ。いったい手首をどう使えばこんな打点でカーブを打てるのだろうか。しかもコートの中央からフォアのサイドラインを切るコース。あり得ない難しさだ。

一番右の写真は、サムソノフのラケットがボールにもっとも近づいた瞬間だが、ラケット2つほどの距離だけボールに足りず、ノータッチになっている。これだけボールが曲がらなかったら届いていたということだ。逆に言うと、これだけのボールを打ってやっと点をとれるのがサフソノフという相手なのだ。それにしてもこんなに曲がられたんじゃ、追っても追っても逃げられるという感じだっただろう。一度でいいからサムソノフの視点でワルドナーのボールを見たいものだ。どう見えるんだろうか。

左の写真を見た限りでは、まさかこの体勢から手も届かないボールを打たれることがあり得ようとはさしものサムソノフも考えまい。サムソノフに非はない。ワルドナーが異常なのだ。

境界問題

髪を短くしたのをきっかけに、髪とヒゲの境界について明確にすべく、しばらくヒゲを剃るのをやめてみることにした。いっさいの人為的な手を加えず公平に育てた場合、髪とヒゲがそれぞれどのように自己主張を始め分化していくのかを、しばし観察してみたい。ヒゲの薄い編集部の友くんには不可能な技だ。

カメラ位置

DVDを見ていると、ラリーが素晴らしければ素晴らしいほど、カメラ位置の悪さにがっかりさせられる。テレビ局の撮影はいつもカメラ位置が高すぎるのだ。そのため、両方の選手を画面に入れようとするとどうしてもズームアウトせざるをえず、結果的に恐ろしく小さい画面になってしまう。ボールはろくに見えないし、遠近感がないので迫力はないしボールの高さ方向の情報が失われるのでドライブやカット独特の軌道がさっぱりわからない。なによりもすべてが小さく映っているのが残念でならない。

これまでもNHKやテレビ東京にカメラ位置を低くするよう提案してきたが、相変わらずである。低い位置にカメラがないわけではなく、スローのリプレーでは使ったりしているのだから、そちらをメインに使えばよいだけなのにどうしてそうできないのかまったく不思議だ。

決勝などの重要な試合に限ってこの最悪のカメラ位置になるのだから残念なことである。

写真左は昨年の横浜大会男子シングルス8決定の陳杞対水谷、写真右は決勝の王皓対王励勤。選手もボールの大きさも面積にして4倍も違う。加えて右の画面では画面上でボールの移動距離が長いので、ボールは目で極めて追いづらい。迫力がないのにボールは目で追いづらいのだ。一方、左の画面は、迫力満点でボールは恐ろしく速く感じられるが、実際の画面上のボールの移動距離は小さいので(画面手前から奥への移動なので)実は目で追うことは容易である。映っている大きさも大きい。

このように、何をとっても低いカメラ位置の方がいいのだ。なお、このカメラ位置は、似た球技であるテニスやバドミントンではほとんど不可能である。これらの競技は卓球にくらべてコートが大きいので、競技領域を画面に入れるためには、コートからかなり離れなくてはならない。これを低いカメラ位置でやるためには、コート後方のフロアに広大な空間を作るしかない。物理的には可能だか、現実的にそんな会場セッティングは無理だろう。だからテニスもバドミントンも高くて遠い位置から撮影するしかなく、いずれものっぺりとした遠近感のない画面になっているのだ。

低いカメラ位置はコートが小さい卓球競技の特権だとさえ言える。それが活かさず、テニスやバドミントンと同じのっぺりとした画面で撮影しているのがなんとももったいないことだ。