震災関連のテレビ番組を見ると、せっかく政府からお金をもらっても何もすることがないからパチンコに使ってしまったなんて話を福島の人たちがしていた。そういえば私の近所でも、津波の後で一番早く営業を再開したのはパチンコ屋だった。それでなくても震災で家やお金や仕事を失くした人たちが、わざわざパチンコをしてさらに金を失くすのだからなんとも哀れな話だ。
ギャンブルで一番儲ける方法はとても簡単だ。やらないことだ。ギャンブルをやれば期待値はマイナスなのだから、期待値がゼロ、つまりやらないのが一番儲かるのだ。私はギャンブルをやっている人たちがいかに大枚を失っているかを想像し、自分はその分だけ彼らより相対的に儲かっていると思うことで喜んでいる。パチンコで毎日何千円も失っている人たちに比べれば私は何もせずにその分だけまるまる儲かっているのだ。その差額たるや、ガソリンの値段の上下やスーパーの安売りなどの差どころではない。
とはいえ、実はわたしもパチンコをする人たちの気持はよーくわかる。大学3年までは私もときどきやっては損をしてそれこそ止められなくなっていたのだ。あるとき、卓球部の後輩から「必ず儲かる打ち方」を教わり、それで立て続けに何十万円か儲けて、パチンコと関わったことによる収支がプラスになったことを確認し、そのまま永遠に勝ち逃げするべく二度とやらないことにしたのだ。
ちなみのその打ち方とは、回転している役物の穴が下に来たときだけ3発打って次の機会まで数秒待ってはまた3発だけ打つというただそれだけだ。こうすると、その穴に入るまでに使う球が通常の数分の1に抑えられるため、それによってその機種が想定している出球率をはるかに越えてしまうために、ほとんどどの台に座っても必ず儲かってしまうのだ。この打ち方はインチキではないが、誰でも儲かってしまうという点でずるいといえばずるい。こういう攻略を許してしまったこの機種の設計ミスにつけ込んだ打ち方なのだ。当然、この機種がなくなるのは時間の問題だから、卓球する間も惜しんでパチンコをしたものだった。「必ず勝つと分かっていたら面白くないんじゃないか」という人がいそうだが、とんでもない。楽しくて楽しくて胸が高鳴り、まさに人生の勝利者のような気持ちがしたものだった。今でもときどきそのときの夢を見るほどだ。ああいうボロ儲けをすると、普通のフェアな条件でのパチンコなどバカバカしくて二度とする気にはならない。
あれがなければ、私は負けを取り返そうと今でもパチンコやスロットマシンをやっていたかもしれない。運がよかったと思う。震災で仕事や家を失ってさらにパチンコで金を失っている人にはかける言葉もない。結局は多額の寄付や賠償金がパチンコ屋に流れているということなのだ。パチンコ屋がどこよりも早く復興したのもうなづける。