悪夢のボディソープ

日本から阿部さん(仮名:名前は困るが顔写真は出してもいいという太っ腹の人である)という人が出張に来た。空港に着くなり、体を洗う石鹸がないというので近くのスーパーに一緒に行った。

普通の石鹸を使えばいいのに、ボディソープを使いたいなどと似合わぬことを言う。それらしい売り場はすぐに見つかった。ボディソープらしい製品がいろいろと並んでいるのだが、その容器には、南国のフルーツやココナッツ、はてはキュウリだのメロンだの、どれもこれも目を疑うような物が描かれている。キュウリの匂いを体から発散させたいという人の気持ちがわからないが、大量に売っているところを見ると、アメリカではこれがポピュラーなのだろう。
「長い人生、こういうものを使ってみるのもアメリカ出張の記念にいいんじゃないですか」という私の無責任な勧めに従い、阿部さんは最終的にココアバター風味のボディソープを買って宿舎に帰ったのだった。

翌朝、阿部さんは重い口を開いた。「あれ、ローションでした・・・」

阿部さんは、宿舎に帰るなりフライトでベトついた体を清めようと風呂に直行したそうである。いつもの手順でまず股間を洗い始めたのだが、洗えど洗えど泡が出ない。それどころかヌメリ具合は増す一方であった。
かくして阿部さんは、股間を取り返しのつかないココアバター風味でべとべと(ナメクジ状態ですな)にしたまま寝たのだという。

太っ腹の阿部さんにとっても、アメリカ出張の記念としては少々限度を超える出来事だったようである。