2002年に出張にきたとき、現地社員のデルレイ(今では同僚だが)という男に誘われて、一緒に出張にきていた部下の三浦と川釣りをしにとなりの州であるフロリダ州に行った。ドーサンはアラバマ州の端なので、車で30分も走ればフロリダ州なのだ。遊んでばかりいるように誤解されそうだが、そうでもない。これくらいの息抜きでもないとやっていられないのだ。
川に行く途中で釣りえさを買ったのだが、面白いことに、その店がとても小さくて狭く、日本の釣り場近くにある釣り餌屋とそっくりなのである。日本との違いばかりが目立つ中で、釣り餌屋だけがひと目でそれとわかるのがなんともおかしかった。そこでデルレイが買ったのが、釣り餌用のコオロギである。イラストのように円筒形の金網に100匹ぐらい入っていて、逆さにして振ると上の口から一匹づつ出てくるようになっている。国が違えば釣り餌も違うのだなあと感心した。
デルレイは、トラックを川辺にバックでつけて、牽引していたボートを切り離して川に浮かべた。川といっても幅が100m以上もあるような川である。コオロギに針を通すのは嫌だったが、すぐに慣れた。デルレイは魚群探知機を見ながら、落ち着きなく頻繁に場所を変えたが、結局私は1匹しか釣れず、デルレイは10匹、三浦はゼロだった。
釣りよりも驚いたのは、川辺にワニがいたことだ。何匹ものワニが、眼と鼻を水面から出しているのだ。デルレイに危険じゃないのかと聞くと、川辺に犬なんか連れて行くと引き込まれることがあるが安全だという。どういう意味だ。彼によると、もっと危険なのはサメだが、この次はサメ釣りに行こうという。胸まである長靴で下半身を覆い、サメを釣るのだそうだ。それこそ危険じゃないのかと聞くと、動物は夜は餌を食べないので夜にやれば安全だという。どこにそんな話があるのか知らんが、はじめて聞く理屈だ。そのあたりではサメに食われて死ぬ人が年に2,3人はいるがその程度なので大丈夫だという。意味がわからない。
私と三浦がショックを受けているとデルレイは喜んで、次の日、鹿がワニに引き込まれているニュース映像をメールで送ってきた。どこまで本気なんだコイツ。なお、ここでもビビカムが大活躍である。