家のこと

家を選ぶにあたって、20軒ぐらいの家を見ただろうか。アメリカの家は微妙に日本の家と違って面白かった。

まずアメリカ人はふつう家では靴を脱がないので、玄関に靴を脱ぐところはない。写真のようにいきなりリビングなので、日本人としてはどうも落ちつかないのだ。業者もすぐに靴で上がりこもうとするので「脱いでください」とお願いをして困惑されてしまう。脱いでもらって室内用のスリッパを貸したりするとそのまま外を歩かれたりしてどうにも困るのである。

台所にはガスはなくすべて電気製であるが、面白いのが調理台である。まっ平らになっているので、てっきり電磁調理器かと思うとそうではなくて、下に電気コンロが入っているだけなのである。料理台の上には換気扇があるのだが、なんとこの換気扇、吸い込んだ空気が電子レンジの上から吹きだして人の頭にかかるようになっているのである。フィルターが入っているとはいえ信じられない感覚である。これはオプションで外に出す工事をしてもらえる場合もあるのだが、多くはこのままなので、アメリカ人は平気なのだろう。

さて、風呂である。アメリカにはバスタブが無いことが多いと聞いていたが、意外にもほとんどの家にはバスタブがあった。ところが追い焚きというものがない(穴が見えているのはジェットバスの泡の出口である)。夏はともかく、湯がすぐに冷めるような冬は家族5人入るのは難しそうである。バスタブがある部屋は普通の床なので、日本の風呂みたいに湯をあふれさせることはできない。体を洗うのは別のシャワー室であり、バスタブはそっと入るためだけにあるようである。ある人の話だと、バスタブは女性が体に石鹸のいい匂いをつけるために入るもので、体についた石鹸をそのまま流さないでタオルで拭くだけにして上がるのだそうである。なるほど、映画で歌など歌いながら風呂に入って足を上げている女性の姿はそれだろうか。ある日本人は「俺はいつもバスタブに入っている」と言ったら「なんだ、女じゃあるまいし」とアメリカ人に言われたというから(そのときは意味がわからなかったそうだが)、先の話にも説得力が出てくる。真相を確かめるべくグレッグに聞いてみたところ、「男でも女でもバスタブに入るやつもいるし入らない奴もいる。香水を流す奴も流さない奴もいる」とのこと。ただしグレッグはバスタブを使わないが奥さんは使うそうであるから、グレッグは断言したくないだけであって、そういう傾向はあるのだろう。