アイスコーヒー

アメリカ全体がどうかは知らないが、私が住んでいる町には基本的にアイスコーヒーというものはない。アイスティーならどこにでもあるが、コーヒーを冷やして飲む習慣がないのである。レストランで「アイスコーヒー」と言うと、冗談を言っていると思われて笑われたりするのだ。日本でいえば、「冷えた味噌汁をくれ」といったようなものだろう。それで「わかった。じゃ、コーヒーと氷をくれ」と言うとものすごく喜んで笑って用意してくれた。もちろん、もともと薄いコーヒーがもっと薄くなってしかもぬるくなってとても飲めなかった。

基本的にはそうなのだが、ある店のメニューにアイスコーヒーと書いてあったので頼んでみると、なんと店員どうしが作り方を相談し始めたではないか。「ただ氷を入れればいいんだろ」などと言っているのがジェスチャーからわかる。頼まれたことがないので作り方を知らないのだ。嫌な予感どおり、普通に作ったコーヒーに大量の氷を入れられて、目もあてられない薄くなったぬるいコーヒーを出された。

そんなこの町でも実はアイスコーヒーを飲む方法がある。缶コーヒーである。日本では喫茶店として有名な「スターバックス」の缶コーヒー(阿部さんはよくオートバックスと言い間違える)が、スーパーに唯一置いてあるのだ。買う人が少ないため、一缶2ドルとかなり高いのだが、これしかないので仕方がない。同じくスターバックスの瓶コーヒーもあって、コーヒー牛乳のような味で結構おいしい。

ちなみに、日本人が緑茶を冷やして飲むようになったのは、80年代に伊藤園がPETボトルや缶入りの緑茶を出してからのことである。それ以前には、冷えた緑茶を飲むなどありえなかった。しかし、用具マニアの友人「杉崎君」だけは当時から冷えた緑茶が大好きで、出されたお茶が冷えるのを待って飲んでいた。ときどき、そうとは知らない人に片付けられてしまい「せっかく冷やしていたのに」と怒って家人を困惑させたりしていた。

さて、ここまでは、普通の店を前提とした話である。実は車を40分走らせた隣町で、韓国人が経営している雑貨屋に行けば、なにやら怪しい商品がいろいろと買えるのである。写真のように、得体の知れない缶コーヒーが並んでいるのだが、どれもこれも薄くてまるであずきの茹で汁のような味である。ジョージア、UCCと書いてあるが、本当だろうか。この店の怪しさについては後で書くとしよう。