ヒゲ

いくらトリミングが好きだと言っても、まさか髪の毛をいろんな形にトリミングするわけにはいかない。仕事上もさしつかえがあるしそんなに髪もない。そこで目をつけたのがヒゲである。ヒゲなら、世の中にはいろんな形があるし幸いにも剛毛なので、電気かみそりの際剃り刃で剃るのはことのほか楽しいのだ。

まず、単純に何週間かヒゲを剃らないで伸ばし放題にする。学生時代によくやったのは、写真左のゴルゴ13のように、鼻の下をきれいに剃り、もみ上げからアゴにかけてくっきりと縁取りをするのである。なにやら異様な迫力になってとても面白いし「お前、本気でやっているのか」と言われてウケたものである。それに飽きてくると、今度はアゴを剃ってしまって、もみ上げだけえらのところまで長く残して「嫌な感じ」にする。これでまた大ウケである。最後にそれも剃って普通の人にもどるわけである。そのほかにも鼻の下を三角形にして真ん中を縦に割ったり、黒人みたいに2ミリぐらいの幅に細くしてみたり、いろいろと試した。

今回ドーサンに来たときは、まず一ヶ月ぐらいただ伸ばし、考えた末、鼻の下をチョビヒゲにしてみることにした。あごヒゲも残しておけば印象が拡散されて、見た人は一概に「ふざけている」とも断言できないだろうから仕事上もギリギリセーフだろう。チョビヒゲは、チャップリン、ヒトラー、加藤茶など錚々たる人物がはやしてきた由緒あるひげであるが、なにしろそいつらはコメディアンか悪人であるから、現代では好んでやる者はない。しかし彼らがやる前は、それがかっこいい時代があったはずである(そうでなくてどうしてそういうヒゲが歴史に残るだろうか)。どんなヒゲが可笑しくてどんなヒゲがかっこいいかなんて所詮は流行であり、時代と文化を超えた普遍性などないのだ。そんなことを考えながら、とにかく面白いので鼻の下をチョビヒゲにしてみたが、残念なことに意外に似合っているようで、あまり気づく人はいなかった。日本では普通だと思われたのかもしれない。

そうこうしているうちに家族が来てしまい(二ヶ月遅れで来たのだ)、全員の激しい反対に合ってすべて剃ってしまった。剃る前にチョビヒゲの間にスリットを入れてみた。さすがにこれで会社には行っていない。