ステーキ対焼肉

ドーサンにはとても美味しいステーキ屋がある。ある人によれば、ニューヨークでもこんなに美味い店はないというぐらいである。しかも高くても30ドルぐらいのものだから、日本で同じものを食べることに比べれば値段も安い。

たしかに慣れると美味いのだが、最初の頃は、なんだかもったいないような気がした。私は韓国の焼肉が最高の肉料理だと思っているので、ステーキのような分厚い肉を見ると「これを薄く切ったらどれほどの焼肉ができるだろう」と考えてしまうのだ。そこで、2回目の出張に来るときに、贅沢の限りを尽くした焼肉のタレを3種類買い込んで来たのである。それは確か「しょうが味」「にんにく味」「味噌味」の3つだったと思う。何が「贅沢の限り」かといえば、これを一気に3つも買ったところが贅沢なのである。2つまではありがちだと思うが、3つというのはなかなかできることではない。

それで、ドーサンについてすぐにステーキ屋に入り、分厚いステーキを韓国焼肉風に薄くスライスした。店員がいなくなったところでカバンから焼肉のタレを3瓶取り出し、これを順番にかけて食ってみたのである。と、どうしたことだろう。まずいことはないが、それほど美味くない。出されたステーキの塩コショウの方が美味いのだ。やはりステーキにはステーキ屋の味付けが一番なようである。プロの仕事にケチをつけるものではないなあと思った。以来、ステーキに焼肉のタレをかけたいという欲望はすっかりなくなり、おとなしく出されたステーキを美味しくいただいている。