オークションでの攻防

卓球の古本をネットのオークションで買っているが、私以外に入札する人がいないことは以前書いた。実は最近は事情がかわり、強力なライバルが現れたのだ。

昨年10月頃、いつものようにヤフオクで「卓球」をキーワードにして古本を検索したところ、ある人が一気に数冊の卓球本、それも昭和初期のものを出していた。私がもっていない古本など、年に2,3冊しか見つからないのに、一気に数冊なのだから興奮して入札した。ところが翌日になると全部同じ奴に高値更新されているではないか。こんなことはほとんどなかったので心底驚いた。それで5000円ぐらいに上げるとまたすぐに更新された。これは、ただ事ではない!こんな奴と張り合っていたら、何万円かかるかわからない。1000円そこそこで超貴重な本を買えていた平和な時代が終わったことに愕然とした。

そのときに出品されていた数冊の中に、途方もなく貴重な本が含まれていた。第1回全日本チャンピオンの鈴木貞雄が出した『卓球術』(大正13年発行)である。これまで参考文献としては挙げられていたが一度も見たことがなく(参考文献にならないじゃないかよ)、本当に夢にまで見た本だ。もちろん、相手はこの本にも入札している。そこで私は他の本を捨ててもいいからこれだけは絶対に落札しようと、ある作戦を考えた。5000円ぐらいまでは高値更新をして、早々にあきらめる姿勢を見せて「この程度の奴」と思わせて油断させる作戦である。私が死んだふりをしていると、他の本が次々とそこそこの値段(6000円ぐらい)でその相手に落札されていった。それとてのどから手が出るほどほしい本なのだが仕方がない。そして『卓球術』の終了時間ぎりぎりの深夜5分前に、いっきに数万円を入れてやった。相手はすっかり油断していたらしく、それほど高い値を入れておらず、結局、1万円程度で落札したのであった。相手は泣いて悔しがったことだろう。私も二度とこういう戦いはしたくないものである。もしこのブログを見ていたら「現代卓球」サイトからメールください。裏取引しましょう。

ここに謹んでその『卓球術』を披露する。一本指し、二本掛けなど、世にも恐ろしいグリップが紹介されている。なお、この本を入手したことで、『卓球術』が『How to Play Ping Pong』と同一のものであることが分かり、卓球史を塗り替えることができたのも収穫である(まったく何にも影響しない史実だが)。

写真右の『ピンポンの秘訣』は戦術のため犠牲にした稀少本である。買わないことを決めた時点で、これが見納めとばかり出品されていた写真を保存しておいたのだ。

今野さんから頼まれるまではブログを書くなど想像もできなかったが、こうして書いてみると、まるでブログに書くためにネタを集める生活をしてきたかのようである。不思議だ。