カードペン

私は大変物忘れがひどく、消しゴムやペンを無数になくしてしまう。仕事をしているとペンをあちこちにおいて回るし、逆に他人のものをいつの間にかもってきて自分の机に何本も集まってしまうこともある。消しゴムなど最後まで使ったためしがないし、ボールペンもその天寿をまっとうしたことがない。おそらく3ヶ月も同じものを使っていないと思う。ときどき、握るところの塗装がすっかり剥がれて10年以上も使い込んでいる人がいたりして、私にはまったく考えられないことである。

それほど物持ちの悪い私が、なんと20年もなくさずに使っているペンがある。それが『カードペン』である。これは20年前に、新日本スポーツ連盟の卓球の試合に出たときの参加賞としてもらったものである(そういえば桔梗苦羅舞として出たので、村上力さん、戸田と出たんだった)。もらったときには「こんなものをカードにして何の意味があるんだバカバカしい、さすがこんなところで只で配られるわけだ」と思ったことをはっきり覚えているのだが、ほどなくその便利さを思い知ることになる。さすがに物忘れが激しい私も財布だけはなくさない(20年以上前に一度だけパチンコ屋でなくしたことがあるだけだ)。だから、このカードペンを財布にさえ入れておけば、財布をなくさないかぎり絶対になくならないのだ。しかも私は日常、財布を常にズボンのポケットに入れているので、いつでもペンが取り出せるのだ。急に電話番号をメモしたいとき、試合のオーダーを書くときなど、役に立ったことが数え切れない。

このペン、二列になっていて、片方がボールペン、片方がシャープペンであるが、残念なことにボールペンが無くなってしまっている。会社に入った年の運動会で、上司が急にペンが必要になり、私がすかさず提供したのだが、持っていかれてそのままなくされてしまったのだ。このエピソードだけを見ても、いかにこのペンが役に立っていたかがわかるだろう。片方のペンがなくなったことでフレームに力が集中し、一箇所が折れてしまったのだが、接着剤で補修して使い続けている。

これほど使ってみるまでその便利さがわからない商品もあるまい。おそらく作った人もその便利さはわかっていないのではないか。cmのメモリなどついている情けなさである。商品説明さえちゃんとやれば絶対に売れると思う。ただしなにしろなくさないので買換え需要がないだろう。しかしこれは一生ものなので、装飾を含めて最高級の品質にすればよい。書き味、デザインともに高級にすれば、1万円近くでも売れるだろう。

どうしても新品のカードペンがほしい私はいろいろとメーカーにあたってみて、かつてゼブラ株式会社がこれを作っていたことを突き止めた。それで、上記のような要望を切々とメールで訴えたのだが、「昭和61年から発売していて平成7年で生産中止した」との返事であった。アピールが足りなかったのだと思う。なんとももったいないことだ。

アメリカに来てからこちらのネットオークションで一個だけ中古のカードペンが見つかって購入した。コカコーラのデザインなので、おそらく景品だろう。品質も悪く書き味が最低である。こういうものは品質が悪ければ売れないのだ。カードペンは、世界中で同じ扱いを受けているのだ。それでもついこの前も空港で話し込んだ人の電話番号をメモするのに役立った。

いつの日か最高級の品質のカードペンを手に入れるのが夢である。