私もかなりの卓球マニアだと思うが、車のマニアには敵わないと思う。元の職場の後輩に大宮と言う奴がいるのだが、これがすごいのだ。
休日になると、朝5時から洗車場に行って車を磨くのが楽しみなのだという。週に何回どころではない。とにかく車を洗えるときは洗うのだそうだ。その洗車場には同じような車マニアが集っており、埃ひとつないような車を持ってきて、さらにそれを磨いて輝きを競い合っているらしい。「自分なんて全然ですよ」と大宮は謙遜する(謙遜になってないような・・)。彼らは自動の洗車機など細かい傷がつくので絶対に使わないそうである。何種類もの洗剤やスポンジを使ってすべて手磨きをするのだという。2年に1回の車検の時しか車を洗わない私からすれば信じられない話だ(しかも洗ってもらうわけだが)。
なんでも宮城県のどこかに、車磨きのプロがいて、その人のところに日本中、いや世界中から客が来るのだという。その人は、塗装の厚み以内の精度で塗装を削ることで、傷の修復や光沢を取り戻す技術がある達人なのだそうだ。当然、失敗は絶対に許されない作業だ。とても高額なのだが、何ヶ月先まで予約が詰まっているという。大宮は、そこに行ってその人の話を聞いて感動して帰ってきたそうだ。いや、なんとも・・。
大宮はそれだけ凝っているせいか、あるときアパートの駐車場から夜中に車を盗まれたという。普通、そんな目に会う奴などいないわけだが、大宮の車の価値がわかる同好の奴が盗んだのだろう。怖ろしい世界だ。
何年かしていつものように車屋をまわっていた大宮は、盗まれた車のホイールが売られているのを見つけた。どうして自分のホイールだとわかったかというと、そのホイールには彼が自分で傷を修復した跡があって、その形を覚えていたからなのだ。それどころか写真まで撮っていたので、警察を呼んでそれを示し、そのホイールを返してもらったという。それをきっかけにして犯人もつかまったそうだが、盗んだ相手が悪かったとしか言いようがない。
今回、この話をブログに載せるので写真を送るよう頼んだら、「車全体は恥ずかしいので部分写真を送ります」とのことだ。顔写真じゃあるまいし、車の写真が恥ずかしいとは驚くべき感覚である。車をすっかり人間扱いしてるのだ。
一度、今の車を売ろうとしたらしいのだが、廃車にすると聞かされ、「そんな奴に売ることはできない」と、売ることを止めたそうだ。ずっと家に飾っておく気らしい。ちなみに、奥さんは特に車に興味のないノーマルな人なのだが、大宮のような夫といっしょに普通に車に乗っていられるのかどうかが心配である。