その後、マイクは、りんごをかじった悪友の席に行って、本人のいない間に紙袋の中にドーナッツをがぶりとかじってやったそうだ。
人のものをかじるということで思い出すのは杉浦くんのことだ。杉浦君は、基本的にはとても真面目で誠実で、全面的に信頼できる人物だ。その真面目な杉浦くんの前で、私は安心してハチャメチャをやったり言ったりして、楽しんでいたわけだったが、どうしたわけか、杉浦くんはときどき、妙にハメをはずすことがある。
学生時代に、男女4,5人でスキーに行ったときのことだ。昼食のレストランで、ある女性が注文したラーメンが来たのだが、手前にいた杉浦くんは店員から受け取りざまにそのラーメンの汁をズズッとすすってから「ハイおまちどう」と女性に手渡したのだ。当然、その女性は「信じられなーい、なんてことすんのよ」とむくれた。杉浦くんとその女性は、親しいには親しい間柄だったが、そんな親しさはない。真面目な杉浦くんが、加減がわからずにハメをはずした楽しい思い出だ。