東京駅のそば屋

東京駅でそば屋に入った。店に入るなりマークが「この店には安全上の問題がある」と言って壁の方を指差した。すると、非難口がテーブルで完全に塞がれている。さすがマーク、安全衛生担当だ。

二人とも掻き揚げ丼とそばを頼んだ。ここでわさびの食べ方について教えてやった。わさびを食べるときは息を吸うときは鼻から、吐くときは口からにしなければならない。この逆をやると大変だ。口から吸うと、口内のわさびの蒸気が気管に入ってむせるし、鼻から吐くとわさびの蒸気が鼻を通るのでツーンとなるのだ。顔の配管図を描いてそれを説明をしていると、隣のテーブルの若者がわさびで涙を流していたので「日本人でもそれを知らないとああなる」と説明してやった。

マークは「知らなかった」とは言ったが、それほど感心したようでもなかった。心の琴線には触れなかったらしい。結局日本出張中、私がマークの心を動かすことができたのは、屋台だけだったようだ。